母の死に泣いた息子の話
福祉用具屋は「まだ元気だよ」からのお付き合い
福祉用具屋というお仕事は、要支援1という初っ端から始まります。本人は元気、杖も不要。強いて言えばソファからの立ち上がりがちょっとしんどいかな?そんなレベルです。
家族さんはいない場合もありますがいても現役世代があと数年残っており定年まで働いていたり、夫の稼ぎで専業主婦。そんな方もおります。
親子喧嘩も仲裁
1年2年と経過するともう家族の準レギュラーみたいなものです。私はそう思っています。子供の愚痴を言えばそれを聞き、反対に頑固になった親について愚痴を聞いたり。結婚のなれそめや家を建てるときの苦労話、お隣さんの家のどこに金庫があるかなんて話だってします。
住宅改修をするとなると家のどこに手すりを置くかという話になります。
転倒しないよう多めにつけてほしい子供。頼ってしまうからと意地を張るけど本当は弱っていることを知られたくない本人様
他人から見れば弱っているのは明らかだけど少しでも強がりたい人の心理がかわいい。
お互いがよく喧嘩しています。どちらも相手を想っての発言なのでとても微笑ましいですし、いずれくるサヨナラを私は何人も見ているのでちょっと切なくなったり涙ぐんだりします。
そんな言い合いを私と施工する職人さん、そしてケアマネさんは苦笑いしています。こういう喧嘩がヒートアップしたとき、本人と家族と仲良くなっていると会話の引き出しも増え、うまくまとめることができるわけです。
やっぱり転倒、骨折
高齢者の転倒は怖いです。簡単に骨が折れるし、入院になるとみるみる体力が低下します。自宅で過ごしていて大丈夫だった病気が悪化したりもします。
骨折して入院だとまだ息子さんとかも憎まれ口を言う余裕があるのですが。
病気が悪化してそのまま死亡
退院してもしなくても、病気が悪化してそのまま亡くなられることはよくあります。介護ベッドや手すりは自宅でのお葬式の準備の為に即応が求められます。
先日の息子さんはずっと文句言ってたから「ばーさん俺の言うとおりにすればよかったのに」くらい軽口を言われるかと思っていたんですが
「どうせ転倒してどうせ死ぬんだったら手すりも好きにさせてあげて、デイも好きにさせてあげて、食べたがってた餅も買ってあげればよかったな」
なんてホロホロと涙を流していたんです。
60も過ぎた会社ではきっとそこそこ偉いであろうオジサンがですよ。自分の親を思うがゆえの厳しい対応を後悔していました。
私にできることは仏様への挨拶と迅速な福祉用具引き上げですが、やはり残された人が泣いているのを見ると辛くなります。「ほかの家族さんずっとひどいとこありますよ。息子様は相対的にも素敵な介護をしていたと思います。」って言いたくなります。
利用者さんが亡くなるたびに心臓へのダメージが大きいので時々この業界向いてないと思うことがあります。
でもすでに100人を超えた利用者さんの為にも今日もがんばらねば…
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