社会で生きる熱量を与えてくれたのは、牛だった
突然ですが、私は牛が大好きです。いち動物としても大好きですが、私の心に大きなパワーを残してくれた存在として、感謝・尊敬しています。
そんなストーリーを自己紹介として語ります。
🐄🐄🐄
大学に入り、牧場バイトを開始した。理由は、昔から動物が好きだったから。だけじゃない。当時なかなか友達が出来なくて、いつも一人でいることが多かった私は、みんながやっているような居酒屋やスーパーのバイトを始める気にもなれなくて、”圧倒的個性”というものを求めていた。そこでたまたま発見した牧場バイトのお知らせに、アポも取らず牧場へ突撃し、見事バイト枠を獲得した。
人よりも、動物の方が好きだった。実家では犬を飼っていて、目と目が合う瞬間、心が通じ合う瞬間にいつも心が癒されていた。人よりも、他意無く安心して目を合わせられる動物の方が、よっぽど暖かくて大好きだった。そして私は、晴れて牛のつぶらな眼と対峙する機会を獲得した。
初めて触れる大きな身体は、びっくりするくらい熱かった。
ひらいた手のひらをザラザラした身体にそっと重ねると、ゆったりした息遣い、呼吸に合わせて上下する横腹、何やってんの?と言わんばかりの面倒くさそうな態度…牛とはこんなにも大きくて、穏やかなのだと初めて知った。
糞を掃除するためにお尻をつついて場所移動をお願いしても、新入りの私のツンツンなんてなんのその。チラッと一瞥しただけで、あとは素知らぬふりをする。
急いで水を飲みに来たかと思ったら、勢い余ってむせ返る。
おいおい、牛とはこんなにも個性豊かで愉快な生き物だったのかね。そう思う頃には、私は完全に牛たちの魅力にドハマりしていた。
そうして心満たされるバイト生活を送る中、年次も上がり、気が付けば畜産学を専攻していた。様々な講義を受け、家畜という生き物のこと、人と家畜の関係とその歴史のこと、これからの畜産のこと、色んな角度から学び考えた。私たちは長い歴史の中で動物と出会い、生きるために命を頂き、お乳を頂き、動物たちに働いて貰ってきた。何千年という歴史の中で、私たちはそうしてこれまで生きてきたし、これからも動物の皆さんに助けて頂きながら、生きていく選択を取っていくことは間違いない。
歴史を知った時改めて感じたのは、動物たちへの感謝の気持ちと、「いただきます」という言葉の大切さ。命を頂くことは、その命の上に立ち生きるということ。そこに抱くべきは罪や罪悪感ではなく、「ありがとうございます。頂いた命からめいっぱいエネルギーを頂いて、今日という日を精いっぱい生きさせて頂きます。」という感謝の気持ち…。
どんな時も、命を頂く動物たちへの感謝の想いは、絶対に持ち続けたいと思った。
同時に、今を生きる動物たちが、もっとのびのびとめいっぱい生を享受して欲しいとも思った。
そして、のびのびとめいっぱい生を享受している牛たちに出会った
彼らに出会ったのは、インターンで訪れたとある牧場。
ご家族で数頭の肉牛を飼い、竹林や耕作放棄地に柵を貼って放牧されている小規模経営。日々のお世話にとても苦労されていたけど、牛たちへの想いを語られるその姿はとても素敵で愛が籠っていた。
午後の餌やりに同行した時、トラックから降りたのは背丈ほどもある草がボーボーに生えた場所。そこでご主人が大きな声で牛を呼ぶ。
あっ、気が付けば、目の前には数頭の牛たちが現れていた。
圧倒的な熱量を感じた。
とてつもない、エネルギー体。これが、生。生きている、ということ。びりびりと肌で感じて眩暈がした。その命の奥にある、とてつもないエネルギーが痛いほどすさまじくて、命を肌で感じられたことに感動し、心奪われた。
そんな風に、生きたいと思った。
そして他の動物たちにも、そんな風に生きてほしいと思った。
わたしたちは何を選択するのか
結局、人より動物が好きなわたしがたどり着いたのは、動物たちの幸せを最大限大切にしつつ、人としてめいっぱい生きるという選択。
大学を卒業してめいっぱい働いて、エネルギーが無くなって、色んな意見や生き方に触れて。色々考えてやっぱり戻ってくるのは、動物たちがのびのびと生を享受して生きる未来を作っていきたいということ。そしてその未来は、日々の選択で確実に叶うと確信している。
1か月に1回、10回の買い物で1回、選択を見直して、動物や環境に配慮した製品、地産地消の製品を買うだけで、市場のニーズは大きく変わる。需要が増えることが、生産者の支援になる。生産者を支援する基盤が整えば、新規参入者も安心して入って来れる。そしてますます市場が大きくなる。
そんなわたしたちの小さな選択の積み重ねが、かつて訪問した小さな牧場のような経営を支える力になって欲しいと思っている。そうすれば、あの日出会った牛たちのように、生をめいっぱい享受する存在がもっともっと増えてくれるから…。
残念ながらその方はすでに経営を辞められたけど、あの日出会った牛たちの圧倒的な生のエネルギーは決して忘れない。生きてそのエネルギーを見せてくれてありがとう。命というものすごい熱量をありがとう。もっともっと、そうやって生きる命が増えてほしい、人と、自然と、家畜が幸せに調和できる未来を作りたい。あの時受け取ったエネルギーは、こうして私の中で確実に生きている。そう、私のなかで、わたしとして…。
人から目を背けた私に、社会で生きる熱意を与えてくれたのは、牛だった。だから私は、牛が好き。
🐄中の人🐄⇒babystep_moe 社会で必死に生きてます
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