ラーメン二郎にまなぶ経営学
ジロリアン・経営学者 牧田幸裕 著
某二郎系店で「小」を頼んだにも関わらず、そのボリュームに衝撃を受けた自分の衰えにビクついて早2年ほど・・再び挑戦したくなる本に出会う。
二郎を経営学の視点で切り取ると、ああなるほど納得ということばかりだ。
そもそも、なんで二郎は大きな広告費をかけずに行列ができるのか、ずっと気になっていた。自分なりの気づきをここにまとめます。
その一:ラーメン自体が分散型事業モデルの業界であるからだ
資本の大きさやスケールメリットがものを言う業界ではなく、差別化できるかどうかでチャンスが決まるのだ。
例えばハンバーガー業界では1位のマクドナルドのみで2/3ほどのシェアがあり、スケールメリットや価格、プロモーションが勝負を決める。
一方、市場規模はほぼ同じラーメン業界でも業界上位の幸楽苑、日高屋、リンガーハットのシェアを全て足しても10%ほどである。つまり、スケールメリットが効く業界ではない。尖った個性が受け入れられれば、小資金でもチャンスがある業界ということだ。
人々はハンバーガーには差別化を求めないが、ラーメンには差別化を求めるのだ。スープのダシ、麺の太さ硬さなど、様々な要素から構成されるラーメンという食べ物自体の特徴がここに現れるのではないか。
その二:二郎はターゲットとなる顧客と、その顧客に対して効かせるエッジが明確になっている。
元々は、「体育会系の学生にお腹いっぱいになってもらいたい」という信念から二郎が誕生している。麺の太さ、ギトギトこってりのスープ、ピラミッドのようなモヤシや塊のチャーシューには、そうしたストーリーが詰まっている。
ここを曲げないので、特定の顧客に深く強く刺さる。
みんな、いろいろなことを言うけど、それをいちいち真に受けて全部聞いてはいけない。
でも、コアとなる顧客が求めていることには耳を傾け、それに応えなくてはいけない。
本書では名店の特徴をこのように記している。
広告ではなく、口コミから派生してファンを広げていっている。佐藤尚之さんが述べていた「ファンベース」をまさに体現していると思った。
その三:二郎は突っ込みどころ満載のラーメンだからこそ、コミュニティマーケティングが成功した。
「その二」で述べた、大切な顧客に全力で応え続けた結果、二郎は「突っ込みどころ満載」のラーメンになった。確かに「ラーメンを食べました、美味しかったです」では話題にはならない。コミュニティの活性化には突っ込みどころが必要なのだ。
「体育会系の学生にお腹いっぱいになってもらいたい」を出発点にした結果、小でも300gを超える量の超極太麺、75キログラムもの腕肉を出汁に使う、立方体のチャーシュー、見た目がもう普通に考えてやばい。「ジロリアンってこんなの食べれるの?マジで?」と思う。
顧客の声に答え、顧客にとって「ベストな尖り」を追求しているからこそ、二郎には不況などお構いなしの行列が明日もできるのだろう と思った。