先生の助けになれば
本記事では、道徳授業デザインシートを紹介します。シートを活用して、ねらいの設定や教材の選定、発問の精査、活動の選択など、授業計画のポイントを明確にします。つまり、デザインシートを活用することで、授業の質を高めることができます。道徳授業の指導者や教育関係者にとって必読の内容です。
市の教育委員会で指導主事をしている尾花桃代と申します。現在は、道徳教育の研究をしながら、市内の学校で指導・助言をしています。
私は中学校の教員で、専門教科は国語です。
なぜ、道徳教育の研究なのかというと、いろいろなタイミングと縁で今の私があります。
今考えてみると、初任者として着任した学校の校長先生が心の教育を大切にしていたことが大きいように思います。学校のあちこちに心に訴えかけるような詩や言葉があふれていました。
当時、道徳は「道徳の時間」として授業が行われていました。その校長先生は、自ら初任者の私の授業を熱心に指導してくれました。今考えると、大変忙しい中、時間を作って授業を参観し、いつも穏やかに話をしてくれました。
時は流れ、異動した学校で、道徳担当になりました。本当にたまたま。
その当時は、月1回の研修に参加しても、10名いるかいないか。年齢層も(かなり)高めで、私はだいぶ浮いている存在でした。その研修会で部長を決めることになり…「若手にやってもらう方がいいわね!」と半ば強引に断れない状況に陥り、「あ、はい…」とつい言ってしまいました。
でも、その経験はとても勉強になりました。関係校や講師とのやりとり等、仕事は多く失敗も多かったですが、自分が「物事を知らない」ということを知ることができました。
そこから、自分自身ももっと子供とともに真剣に考える道徳授業を行いたいと思うようになりました。研究を重ねるうちに、道徳関係の研修にもお声掛けいただき、参加することで全国の先生方と関わりができ、大きな刺激になりました。
ある日の授業で、家族をテーマにした授業を行いました。中学校3年生の進路の選択をするタイミングだったため、家族の方に本人にあてた励ましの手紙をお願いしていました。授業の最後でその手紙を読んだ一人一人の顔は様々でした。
嬉しそうににこにこしている子。恥ずかしそうにこそこそ読んでいる子。
大切そうに眺めてなかなかあけられない子。
その中で、ある男の子の様子が気になりました。いつもはわりと無口なタイプでしたが、もくもくと努力するような芯の強さがあり、こちららが声をかけるとにこっと笑う子でした。
その子が、じっと手紙を見つめながら、全く動かないのです。
「あれ?大丈夫かな」と近寄ってみても、彼は微動だにしません。ふと見ると、彼の瞳からは、大粒の涙がポタポタと落ちていました。ただただ、机の上に、涙が落ちていくのです。それを手で拭うこともなく、隠すこともなく、ただただ涙が落ちていくのです。
後から聞いた話では、進路を巡って、家族との関係がうまくいってなかったようでした。その涙に、彼の思いを見たような気がしました。
そのころから、子供たちの心に触れる教育をする責任は大きいと感じると同時に、こんなに魅力のあるものはないと感じるようになりました。
その後、1年間現場を離れて、大学で道徳教育の研究をし、さらに教職大学院で学びました。そこでの教授との出逢いで、人生が変わるほど視野が広がり、人とのつながりもできました。そして、研究の大切さを知り、学ぶことの楽しさを教えてもらいました。
未来を生きる子供たちのために、本気で教育と向き合いたいと感じています。
前置きが長くなりましたが、「道徳って難しい!」と感じている先生方に、楽しく前向きに道徳授業に向き合ってもらいたいと思っています。子供と一緒に未来を見つめながら、生き方を考えるなんてこんな素敵な時間はないと思うのです。
そこで、私は「道徳授業デザインシート」(写真参照)というシートを作りました。
そもそもは、自分が道徳の授業を作るのに、必要な流れやポイントを確認しながら、1枚のシートで授業を作りたいと思ったのがきっかけです。
デザインシート
案を作ってから、大学の先生方に何度も見ていただいて、今の形になっています。その後、「考えるツール&議論するツールでつくる小学校(中学校)道徳の新授業プラン」(明治図書出版・諸富祥彦・土田雄一・松田憲子編著)に掲載していただき、徐々に活用が広まり、「使いやすい!手軽でいい!」という多くの意見をいただいて、現在、「道徳教育」(明治図書出版)の雑誌に実践例の連載を書かせていただいています。
※シートの小学校版と中学校版の違いは時間軸の違いです。(45分・50分)
私自身は、教材研究や授業づくりの方法は様々でいいと思っています。その選択肢の一つとなり、自分に合うなという先生方にこのシートが届くといいなと思います。
シートだとノートに貼ったり、ファイルしたり、タブレットに読み込んで書いたりとなりますが、私自身はノートが好きなので、この度、なんと!ノートを作ってみました!年間35時間分書き込めるようになってます。
親愛なるグラフィックデザイナーの友達の力を借りて、マットな質感のおしゃれなノートになりました。無料配布とはいきませんが、もし、使ってみたい方がいればお分けしますので、お問い合わせいただければと思います。
(※momoyo.obana@gmail.comまで)
また、Thinking Sheetを35時間分にした生徒用ノートも作ってみました。こちらも興味があればぜひ。
先生方が授業づくりを楽しめますように。
そして、先生方の助けになりますように。
尾花桃代
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