アルコール依存性の女 手の震え

一人寂しい私を姉が気遣って、正月家に招いてくれた。
メイクをして出かけるのはあの面接以来だった。いつも通り、アイラインを引こうとしたとき手がガタガタ震えた。一度落ち着いてから試したが震えは止まらない。アイラインは諦めてマスカラだけを塗ろう。
震える。手の振動でコーム部分が目の玉に直撃しそうになったけど、なんとかマスカラを塗ることはできた。

この震え、もしかして…。認めたくなかったが、認めるしかなかった。

姉や甥、姪が明るく出迎えてくれたが、心は晴れなかった。
姉は器用でまめな性格なので、お節料理を手作りしていた。食卓に並んだ数々の料理を前に私は緊張していた。「あけおめ!乾杯!」
姉、義兄とグラスを傾けたとき私の手は確実に震えていたし、それを隠そうと必死だった。
料理を取る手も震えた。

結局、手の震えが気になって料理も会話も楽しめなかった。
その日、姉の家に泊まったのだが翌朝すごい寝汗をかいた。目覚めの悪い朝だった。

今日はきっと大丈夫。
そう考え直してメイクを始めたが、手が震えて思い通りの化粧はできなかった。

明日から仕事が始まるのに、この状態ではさすがにまずい。
病院に行きたい。とりあえず内科でいい。精神安定剤さえ出してくれれば、なんとかなる。
しかし正月三ヶ日に開いている病院は皆無で途方に暮れた。

あぁ、あの人に頼ればどうにかなるかも。
電話をかけた。

※前回とタイトルを入れ替えました

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