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【徒然草考:第八十三段】多くは皆、虚言なり

徒然草を読み解きつつ人生のたしなみを学びなおす「徒然草考」。
第八十三段をお届けします。


第八十三段:多くは皆、虚言なり

原文
※古文体が苦手な方は読み飛ばして現代語訳におすすみください。

世に語り伝ふる事、まことはあいなきにや、多くは皆虚言なり。
あるにも過ぎて人は物を言ひなすに、まして、年月過ぎ、境ひも隔たりぬれば、言ひたきまゝに語りなして、筆にも書き止めぬれば、やがて定まりぬ。道々の物の上手のいみじき事など、かたくななる人の、その道知らぬは、そゞろに、神の如くに言へども、道知れる人は、さらに、信も起さず。音に聞くと見る時とは、何事も変るものなり。
かつあらはるゝをも顧みず、口に任せて言ひ散すは、やがて、浮きたることと聞ゆ。
また、我もまことしからずは思ひながら、人の言ひしまゝに、鼻のほどおごめきて言ふは、その人の虚言にはあらず。げにげにしく所々うちおぼめき、よく知らぬよしして、さりながら、つまづま合はせて語る虚言は、恐しき事なり。
我がため面目あるやうに言はれぬる虚言は、人いたくあらがはず。
皆人の興ずる虚言は、ひとり、「さもなかりしものを」と言はんも詮なくて聞きゐたる程に、証人にさへなされて、いとゞ定まりぬべし。
とにもかくにも、虚言多き世なり。
たゞ、常にある、珍らしからぬ事のまゝに心得えたらん、万違がふべからず。
下ざまの人の物語は、耳驚く事のみあり。
よき人は怪しき事を語らず。
かくは言へど、仏神の奇特、権者の伝記、さのみ信ぜざるべきにもあらず。これは、世俗の虚言をねんごろに信じたるもをこがましく、「よもあらじ」など言ふも詮なければ、大方は、まことしくあひしらひて、偏へに信ぜず、また、疑ひ嘲るべからずとなり。

  • 虚言:嘘、偽り。

  • 道々の物の上手:それぞれの専門家の巨匠。

  • 浮きたること: 浮ついた話、根拠のない話。

  • 鼻のほどおごめきて: さも自分が知っているかのように。

  • つまづま合はせて: ほんの少しだけ本当のことを混ぜて。

  • 権者:菩薩が人の姿に化けて下界に現れる姿。

現代語訳
※著者の個人的な解釈による現代語訳です。

世の中に広まっている情報は、本当かどうか疑わしいものがたくさんあります。
例えば、有名な画家の素晴らしい作品を、絵画について詳しく知らない人が、神様のように崇め立てることがあります。
しかし、プロの画家なら、その作品に対して冷静な評価をするでしょう。
噂話というのは、まるで雪だるまのようにどんどん大きくなって、いつの間にか本当のことのように信じられてしまうものです。
自分でも心の中では「これは本当かな?」と疑問に思っているのに、他の人の話をさも自分が知っているかのように話す人もいます。
これは、わざと嘘をついているわけではありませんが、本当のことと嘘を混ぜ合わせて、よく知らないふりをして話す嘘はとても危険です。
例えば、自分のことを良く見せたいがために、過去の失敗を隠したり、成功を誇張したりするような嘘は、多くの人が経験しているはずです。
皆が面白がって聞きたがるような噂話は、誰も「そんなはずはない」と言わずに信じてしまううちに、まるで自分がその場にいたかのように、本当のこととして定着してしまうのです。
とにかく、世の中は嘘であふれています。
噂話を鵜呑みにせず、冷静に判断することが大切です。
賢い人は、ありえないような話を信じません。とはいえ、宗教や歴史上の偉人についても、すべてを疑う必要はありません。
大切なのは、様々な情報に対して、真偽を慎重に見極めることです。
一方的に信じ込まず、かといって、疑い過ぎるのも良ろしくないのです。

虚言対策あれこれ

第八十三段は、情報の真偽を見極める力の大切さを説いています。
鎌倉時代もデマだらけであった様子が伺えます。
そして、現代の私たちにとってもタイムリーな考察ですね。
SNSやネット記事などなど、手軽に情報が入ってきますが、その情報がすべて正しいとは限りません。
むしろ、意図的に歪められた情報だらけです。
今、情報の真偽を見極めることは、かつてないほど難しくなっているのでしょう。

なぜ、簡単に虚言を信じてしまうのか
私たちがついつい虚言に反応してしまう要因について考えてみました。

  • 恐怖、不安、怒りといった感情に訴えかける情報は、つい反応してしまいます。
    特に恐怖心を煽るような情報は人の判断力を鈍らせます。

  • 損得勘定を刺激されると、つい反応してしまいます。

  • 自分の考えや価値観と一致する都合の良い情報を選んでしまいます。

  • 専門家や有名人が言っていることは、無条件に鵜呑みにしてしまうことがあります。

  • 深く考えずに、手っ取り早くに得られる、タイパ・コスパの良い情報に飛びついてしまいます。

  • アルゴリズムによる洗脳?に振り回されているような気もします。

  • 人間は物語に影響されやすい生き物です。
    特に、自分の人生と重ね合わせることができるような、共感できる物語は、事実か否かを問わず、強く心に響きます。

  • バンドワゴン効果(多数の人が支持している意見に、自分も同調してしまうという心理)に影響されて嘘に振り回されることもありまです。
    特に、不確実な状況下では、他人の意見に頼りがちになります。

  • 現実逃避や楽観的な未来への期待といった、希望に満ちた情報は、人々に受け入れられやすいです。

  • 社会的圧力も影響要因のひとつ。
    周りの人から孤立したくないという気持ちから、自分の意見を押し殺し、多数派に同調してしまうことで騙されるという事例もあります。

まだまだ、たくさん出てきそうそうですね。
この辺りにして次に進みます。

情報の真偽を見極めるために

それでは、情報の真偽を見極めるにはどうしたら良いのでしょうか。
検索してみると次のようなアドバイスが出てきます。

  • 一つの情報源だけに頼らず、複数の情報源から情報を集め、比較検討します。

  • 誰が、どのような意図でこの情報を発信しているのかを考えます。

  • 情報の根拠が信頼できるものであるかどうかを確認します。

  • 情報を鵜呑みにせず、論理的に思考し、批判的に考える力を養います。

  • メディアがどのように情報を作り出し、発信しているのかを理解することで、メディアの情報に対する批判的な視点を持つことができます。

  • フェイクニュースの特徴や、その拡散の仕組みを学びます。

  • 事実確認サイトを活用することで、情報の真偽を効率的に調べることができます。

  • 信頼できる人やコミュニティで、その情報について議論することで、多角的な視点を得ることができ、異なる意見に触れることで、自分の考えを深めることができます。

  • 感情に左右されずに、冷静に判断できるように心がけるようにします。

こちらもまだまだ、たくさん出てきそうそうです。

では、私はどうしているか。
私の虚言対策をご紹介いたします。

私の虚言対策
「リサーチ&テストを習慣化」です。
とにかく自分で調べる。
そして自分で小さく試す。
これに尽きます。

まず、リサーチ。
一次情報を対象に、検索エンジンとAIエージェントを併用して調べています。
子供に「ググれカス(笑)」と言われたことをきっかけに始めました。
おかげさまでどんなことでも、面倒くさがらずに調べられる体質になりました。
検索エンジンとAIエージェントを併用すると、把握する情報の隔たりに気付けるんですね。
また、テーマによっては書籍や新聞も活用しています。
お金がかかりますけどね。

リサーチの後はテストです。
なんでも自分で小さく試す(やってみる)ことを心掛けています。
「百聞は一見に如かず」とはよく言ったものです。
特に私は自分で経験してみないと本当の意味で理解できないタイプなので、許容リスクの範囲内でテストするようにしています。
・・・そして、ときどき家族に叱られています(笑)

とは言え、取り返しのつかない事態を招く恐れがある課題に対しては、この虚言対策はおすすめしません。
何と言っても、取り返しがつきませんから・・・。
重たい課題は家族親族で相談ですかね。
最後は自分ですが、やはり血縁は信用できます。

あなたはどんな虚言対策をされていらっしゃいますか?

終わりに

お付き合いいただきありがとうございました。
徒然草を題材に、あれこれ考えてみることは実におもしろいですね。
徒然草を読んであれこれ考えてみたいという方におすすめの書籍をご紹介させていただきます。

電子書籍版の徒然草はこちら

オーディオブック版の徒然草はこちら

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
こちらの情報がお役に立ちましたらうれしいです。

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