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【徒然草考:第三十三段】伝統を守るということ

徒然草を読み解きつつ人生のたしなみを学びなおす「徒然草考」。
第三十三段をお届けします。


第三十三段:古(いにしえ)の納品検査のワンシーン

原文
※古文体が苦手な方は読み飛ばして現代語訳におすすみください。

今の内裏作り出されて、有職の人々に見せられけるに、いづくも難なしとて、既に遷幸の日近く成りけるに、玄輝門院の御覧じて、「閑院殿の櫛形の穴は、丸く、縁もなくてぞありし」と仰せられける、いみじかりけり。これは、葉の入りて、木にて縁をしたりければ、あやまりにて、なほされにけり。

  • 今の内裏:二条富小路内裏のこと。

  • 有職:公家の儀式作法に詳しい者。

  • 遷幸:二条内裏にいた花園天皇が新しい内裏に引っ越すこと。

  • 玄輝門院:藤原愔子。後深草天皇の后で伏見天皇の母。

  • 閑院殿:臨時に設けた皇居。

  • 櫛形の穴:清涼殿の鬼の間の東南の隅から昼御座 (ひのおまし) の西南の隅の壁にかけて、柱を中にして設けた半月形の窓。 天皇が殿上の間を見るためにつくったもの。

  • 葉の入りて:木の葉のように尖っている様子。

現代語訳
※著者の個人的な解釈による現代語訳です。

新しい宮殿が完成し、宮廷の儀式作法に詳しい者に見てもらったところ、「どこにも問題はございません」というお墨付きを得た。
そして、新しい宮殿に引っ越す日が近づいていた。
そんなある日、伏見天皇のお母上が、新築の宮殿を見て「昔の宮殿にあった櫛形の穴(覗き穴)は、半月刑で縁もありませんでしたよ」と、昔の記憶を語り出した。
新宮殿の櫛形の窓は、枠が入って、木の葉のような三角形に作られていた。
状況は一変し、大変なことになってしまった。
そして、これは間違いであると裁定され、櫛形の穴は作り直しとなった。

伝統を守るこだわり

徒然草の第三十三段は、宮廷の伝統を守るこだわりをあらわす1シーンを切り取ったものです。
帝のお母上の何気ない一言が、伝統的な美意識へのこだわりにつながって、覗き窓の細部ですら妥協せず、少しでも違っていたら修正するということになりました。
宮廷の判断基準は「伝統や慣習に基づいた変わらないもの」がとても重要とされていたのですね。

さて、自分に伝統を守るこだわりはあるのか?

この話を自分事に受け止めてみて、今の自分にとって「変えずに守り続けるべきものとは何なのか?」について考えてみました。
言い方を変えると「次の世代に変えずに受け継いでいきたいものは何なのか?」という問いになります。
まぁ、自分の身分の場合、秒で「そんなもん無いです」で済むのですが、これを聞いた家族は何と言うだろうかと思いを巡らせると、すぐに答えは出そうにありません。
たとえば、実家はどうするの?とか、
お墓はどうするの?とか、
家族みんなそれぞれに想いがあるのでしょう。
何だか、下世話な話になってきてしまいました。

これからの人生の宿題

徒然草の第三十三段では、兼好法師から、これからの人生の宿題について考えるきっかけをいただいたような気がします。

ちなみに、あなたにとって、変えずに守り続けるべきものとは何ですか?

終わりに

お付き合いいただきありがとうございました。
徒然草からはいろんな気付きがもらえて、ひとり静かに思いを巡らすことができます。
徒然草を読んであれこれ考えてみたいという方におすすめの書籍をご紹介させていただきます。

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オーディオブック版の徒然草はこちら

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
こちらの情報がお役に立ちましたらうれしいです。

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