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『息が詰まるようなこの場所で』
■著者
外山薫
■発行日
2023/1/30
■概要
湾岸タワマンを舞台に、様々な登場人物の視点から
「東京」でのリアルな暮らし・世の中の羨望とは裏腹に
それぞれの知られざる苦悩と葛藤が描かれた長編小説。
情景がリアルに浮かんできて、サクサクと読み進められた。
読み物として非常に面白かった。
■テーマ
「幸せ」とは
そもそも正解なんてない。
自分なりの幸せは自分にしか分からないし見つけられない。
■印象に残ったセリフ
「子供には子供らしく健康的に育って欲しいと願いながらも、良かれと思って過酷な受験戦争に送り出し、偏差値という無機質な数字で一喜一憂してしまう。東京というすべてが狂った異常な街で、息が詰まるようなこの場所で、私たちは何を追い求めて消耗しているのだろうか。」
遊びたい盛りの小学生を机に向かわせる行為自体が親による洗脳
「ここで頑張れば将来の可能性が広がるから」 といくら言われたところで、十一歳や十二歳の少年が将来の可能性なんてものを理解できているはずがない。
東京における進路とは、幼少期から積み上げてきた積み木の高さで決まるものであり、子供の地頭だけではなく親の資本力の勝負でもある。
高望みすることもなく、失望することもなく、「こんなもんだ」と言い聞かせながら紡がれる、予定調和な暮らし。そうした選択肢を受け入れることができなかった私の居場所は、もうここにはない。
「頑張って東京に出てきて、毎日嫌な思いしながら働いて、三十五年ローンで家を買っても、東京って上には上がいるじゃないですか。それも無限に。仕事でも先が見える中、自分が何者でもないという現実をつきつけられて、それでも惨めな自分を認めたくなくて、自分のアイデンティティをマンションや街に投影して承認欲求を満たす人の気持ち、わからなくもないですね。少しだけ」