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天地雷鳴師の業務日誌①
本日、天地雷鳴師になった。
天地雷鳴士はたくさんいて、その最高責任者になった。
どうやって決めるかというと、誰が一番美しい稲妻を作り出せたかどうかで決める。いまのところ全世界で50人くらいいる。
1年に1回、披露会があってそれに参加する。
それでも審査員というものが、今のところ人類というオーディエンスだけなので、これまで話題性だけで決めていたが、反応がわかりづらいこともあり実質、実は、じゃんけんで決めている。
現実はそんなもので、大概多くの事が知られていないだけで、じゃんけんなどの適当さでなんとなく決まっていく。
こういうところは、運を天に任せるんだね。
その天候を、作り出しているのが、我々なんだけれども。
それで、どうやって稲妻をつくるか?だが。
専用の装置がある。そこに、こんなんどうよ?こんな感じ最高じゃない?みたいなのをインプットさせる。ここらへんアバウトなのは、最高機密のことだから本来絶対口外禁止で詳しく書いたらアウトである。
だがしかし。それも昨日までの話で、今回この俺がじゃんけんに勝ち続けた最強の運の持ち主として、天地雷鳴士の最高責任者になったのだから、もう関係ない。
関係ないというか、これまでの時代、これを言わないでいたことの方が逆に不思議で、もう現代ではインターネットが普及して、全世界の天候を同時把握できるようになったんだから、そろそろ俺らの職業と職務をわかってもらえる段階に来てるんじゃないかな?と、トップ天地雷鳴師として変な正義感と責任感が芽生えてしまったわけだ。
それでも、ひとつだけ課題があって。
実は、その専用の装置にインプットされる情報は、天地雷鳴士たちの無意識の記憶までデータ吸収されてしまう。
なんていうか、その、日頃の無意識の気持ちが見えない透明な軟骨みたいに情報を支えている、というか。
例えば、この前、ある天地雷鳴士が財布を落として、その金が財布から抜かれてて、カードも使用されてた。紛失届けをすぐ警察に出したんだけど、見つかったのはカラッポになったくたびれた財布だけだった。
違う天地雷鳴士は、ずっと好きだったすごい可愛い娘に告白して、オッケーもらったのに、半年でフラれて。でもその娘、色々問題ありだったみたいで、フラれたのにまだその天地雷鳴士の家に居候してるらしい。出てって欲しいと交渉してるけど、うまくいかないし泣かれるとキツいものがあるってぼやいてた。
もう一人の天地雷鳴士は、ハローワークと介護施設の中間に実家があって。その実家はわりと有名な老舗の自営業をしているから、そこの跡取りは長男が継ぐはずだったんだけど。価値観の違いから嫁さんが出てってしまい、長男は離婚後ココロの病になってしまったらしい。見かねた次男のそいつが今は実家に帰省中とのこと。
まぁ、普段はみんなそんな形で日常生活を送っているわけだが、そういった中で起こる日常の無意識の気持ちが、専用の装置にのってしまうわけだ。
そうすると、それを専用の装置は忠実に再現しようとするんだよ。無意識が作用してしまう。これが、とても…なんとも…。
その再現パターンの解析チームと対応部署が専用の装置の改善に日夜励んでは、いるんだけれど。天地雷鳴士たちはほんの少し、自分の無意識が再現された自分の稲妻や天候に羞恥心を感じるハメになっていたりするんだね。
だから、この俺は今年1年、最高責任者の天地雷鳴師として。
他の世界中にいる天地雷鳴士の仲間が、気持ちよく仕事ができるように、なんとか改善方法を考えていきたいと思っている。
相変わらず、じゃんけんで台風発生とか決めるけど、そこらへんは多めにみて欲しい。
運を天に任せるのも、大事だと思うから。
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