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オタク娘が、シドニーでファッション専攻して大学を卒業した話

お子さんがゲームやアニメにハマっているというご家庭は少なくないでしょう。
将来が心配になりますよね。勉強しないで、こんなことばかりして、と。
かくいううちも、学校には行ったり行かなかったりのカスタネット登校で、ゲームざんまい。
そんな娘がいかにして目的を見つけて、前向きに海外の大学を卒業するまでに至ったかのお話です。

そのころの娘は、夏コミ、冬コミ(コミケというイベント)に始発電車で乗り込み、攻略法(どう会場を回れば売り切れそうな狙い目のものをゲットできるか)を熱く語る。
その熱い目と情熱は、俗に「薄い本」と呼ばれる同人誌に注がれる。
もちろん腐女子だ。

そんな娘は、どんな大学、専攻に行きたいんだろ?

軽く聞いてみた。

答えは・・・・母の予想をはるかナナメ上をいくものだった。

「ファッション」

え!?ファッション?
あのキラキラ一軍女子たちが着飾るファッション?
オタクでほとんど外出しないキミに必要ある?(失礼!) 
第一ふだん着ている服だって、ほとんどが通販じゃん。ごめん、これは母の財力の問題か。
(以上、心の声。さすがに本人に言う勇気はない)

のちに大学の授業で有名ブランド名が出てきたとき、何一つ知らなかったのを周囲にあきれられたとか。それほど、ファッションとはドドンとへだたりがあった娘。何を考えていたのか、ナゾすぎる。

「なんでファッションなの?」責めてるんじゃないよ。単純に疑問だから。

「コミケで売り子した時に、自分で作ったワンピ着て行ったら、ホメられたんだよね」

そっかー。
てことは(娘の希望を)厳密に言うなら、オタクファッションなのね。

それならと、現地シドニーの大学訪問をする珍道中に向かうことになったのが、高校2年の夏。
その時の話は、また別の記事で書くとして。

話を少し過去に戻します。

無償の留学奨学金をゲット!


高校2年生の1年間を、娘はオーストラリアのケアンズに留学していました。

そう言うと、「頭いいのね~」とか、「お金あるのね~」とか反応される。
まったく謙遜ではなく、違う、違う、そうじゃなぁい♪なんですよ。

渡航の飛行機代も学費もホームステイ代も、丸一年分すべてタダ!
「よっぽど優秀なんでしょ?」
いえ、下から数えた方が早い成績で。

どうやってー!?

説明しよう。
ちょうど娘が高1で、次世代リーダー育成道場という都の留学制度が始まった。財政的に厳しく、留学する生徒が年々減っていたことから東京都がスタートさせたもの。

その応募システムが各校から特別推薦1名、一般推薦は何名でもというしくみ。その特別推薦は1/2くらいの確率で合格するから、めっちゃ有利なわけだ。

優秀な高校では、もちろん応募が殺到した。
親も情報通が多いし、学校もしっかり通達したのでしょう。
一方、娘の通っていた底辺・・いや平均よりやや下の高校では、入学時に先生が「1日30分勉強する習慣をつけましょう」なんて言ってたくらいの甘さ。

応募者は・・・・

娘を含め2名のみだった。よっしゃ!(ガッツポーズ)

しかも選考は成績や試験ではなく、作文。Wよっしゃああ!!
どんな素材をどう訴求するかを一緒に練りに練って、本人が書き上げた。

んなわけで学力関係なく特別推薦に入り、すんなり留学生に決定された。


まったく、ラッキーにも程があるよ。

留学先のケアンズから興奮のスカイプ

オーストラリアに到着し、娘が割りふられた高校はケアンズ。
何もない片田舎だ。(ケアンズお好きな方、ごめんなさい。海が綺麗で日本人に人気ですけど、泳げない娘はかたくなに海に行かなかったそうで、まさに猫に小判!豚に真珠)

学校近くまで行くバスは朝に1本、夕方に1本のみ。
どんだけ田舎なの!?
そんな生活からファッションて?

そうこうするうち、次世代道場のプログラムの1つでブリスベンの大学見学があった。
「すごいんだよ!大学の中に美容院とかカフェとかあって、まるで一つの街みたいなの!すごいステキなんだよ!」
スカイプ画面の向こう側で、コミケ並に興奮している娘。

そしてめずらしくちょっと遠慮がちに切り出した。
「オーストラリアでこんな大学行けたらいいな~って。あ、夢みたいだけどね(テレッ)」

「いいよ」
夕食はカレーでいいよ、みたいにするっと即答した。

目を丸くして一瞬静止した娘は

「えっ!え~~~~~!!いいの? 
 本当にいいの?大学だよ!?大学!?」

パニクってる。

後に聞いた話では、まさかOKしてもらえるとは思わなかったらしい。
めちゃくちゃ驚いた!と。

この母をナメるなよ。

「ただし、お金が足りるかどうかはわからない。それは調べて計算させて」

うんうんと激しく首を振る娘。

調べてみると、4年間の学費は500-600万円くらい。
東京で大学に行くのと、さほど変わらない。
同じ値段なら、海外の方がなんかいいじゃん?
偏差値とかランクで判断されずに済むし。

まぁ反面、海外の学校は入ってからの課題が厳しくて、卒業が難しいというハードな現実を知るんだけどね。くっくっくっがんばれ~。

私はシングルマザーだけれど、本業に加え細々と自営で民泊したりとなんとかお金の算段もついた。
そんなわけで、ケアンズに高校留学中の夏休みを利用してシドニーへ行き、10校近い大学や専門学校を訪問。規模や校風や費用(←ここ大事)を実際に現地でまのあたりにした。

いよいよシドニーの大学へ出発

その後大学を決め、ドキドキしながら多額の学費を振込み、高校を卒業した娘はシドニーに旅立った。

最初は大学の授業についていける英語力をつける現地の準備コースに通う。
規定のコースをクリアして、大学入学。
初日に緊張しすぎて道で吐いたほどの娘が入学したのは、90%以上が現地オーストラリア人で占められるファッション科。

小〜高校生までろくに宿題すら提出しなかった娘が、必死に膨大な課題をこなし、バチェラーつまり日本でいう4年制大学に通い続けた。

ここで頑張れたのは、「自分で決めた進路」という覚悟がものをいったようだった。ファッションなんて就職難しいよ、とか、本気?とか、思うことは色々ある。
だが、彼女の希望に私は一切口を出さなかった。

もしも親が勧めて子どもが従った進路だと、やる気が続かないものだ。
私自身、親に押しつけられて卒業した有名お嬢さん短大は、どれだけ世間で名が通っていようとも、今もプロフィールに書いていない。
有名かどうか、学力ランクが高いかどうか、世間体とか、そんなのどうでもいい。

学生ビザの期限が迫る中、就職先が決まらない!?

さて。卒業が近づくと、もちろん就活だ。
最終学年でいくつかのアパレルでインターンをしたものの、どこも辞めることになり玉砕。さすがコミュ障娘!
日本を出る前は、長時間ブラックな働かせ放題・日本より、ホワイトでお給料も高いオーストラリアで就職を希望していた。
だけど、応募は惨敗に次ぐ惨敗。

その上、ろくに応募もしないし、バチェラー卒業生の特典である2年間ビザに必要な英語検定も落ちる。まともに英検の勉強すらしない始末。

そうこうするうち、学生ビザ終了のタイムリミットはじりじりと近づいてくる。滞在猶予はあと1-2ヶ月に迫った。

さあ、どうする?娘よ。

ギリギリになって、やっと出てきた娘の本音は・・・


「おもしろい(オタク)イベントは東京ばっかりなんだよね。シドニーは年1回だけで規模も小さいし、東京がうらやましい。東京に戻りたい」

なぬ?
自分が来たいと言ってオーストラリアに来たのに?

まぁ、実際に体験して変わることは色々あるよね。
てか、オーストラリアに残る気がないなら、早く言ってよ。

「だって、怒られると思って」

ふ~ん。母をなめるなよ。

キミの人生なんだから、キミが選んで決めればいいの。

そんなわけで娘は帰国した。
ファッションの仕事にはつかなかった。
では、役に立たなかった学費はドブに捨てたようなものなのだろうか?

いや、そうではない。ファッションの仕事は実はチーム運営で、自分には向いてない、と4年間かけてリアルにわかったのだ。収穫じゃないか。

ただデザインは好きで、ブローシャー(要はパンフレットね)を作ったり、得意のIT力を駆使して、工程やアイコンのデザインなどはクラスメートに妬まれるほど上手かったらしい。

コロナ1年前に帰国。それからどうなった?

そんなわけで帰国して数年を経た今、娘はゲームの攻略サイトの制作にデザイン力やオタク力を発揮し、通訳やイラストもと、なんやかんや自宅で引きこもりつつ収入を得ている。
形は違っても、経験したことはどこかでしっかり役に立つものなのね。

就職は一度してみたけれど、数ヶ月で辞めてしまった。
やはり集団には向かないようだ。母も同じだよ。

もちろんスムーズにうまく行ったわけではない。生まれて初めて自分でお金を稼いで自活するのは、暗中模索だった様子。

不登校だったり引きこもりだったり、お子さんの将来や進路がどうなるんだろうと思いがよぎるのが親という生き物。

こんなケースもあるんだなって、
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ええ、きっと増えますとも。


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Momo@不登校・引きこもりっ子が幸せになる生き方
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