Mr.Children/SOUND TRACKS 考
あまりにもアルバムが神がかり過ぎていて書くのが怖い。
日本語にこだわり続けた桜井が、英語を素直に楽曲に取り込み始めた前作の神アルバム「重力と呼吸」に続き、サビが英語の「DANCING SHOES」で本作は幕をあける。
ほんの少しのひねくれ具合が過去の楽曲を彷彿とさせ、長年のファンはニヤリとするはずだ。
2曲目。「Brand New Planet」。
一聴して驚いた。
他曲と揃えられていない、抑えられた録音レベル、音質。
一瞬、思い出したのは、何十年も前にCDを買えなくて、友人から借りてダビングしたカセットテープを聴いていた幼少期。その、テープの音だった。
涙があふれた。
意図している。
誰かの背中をそっと押すような歌詞。
愛の質量が違う。
また次の「turn over?」への流れと決意が素晴らしい。
ここまで聴くだけで「あぁここまで来たか」と思ってしまう。
「君と重ねたモノローグ」も素晴らしい。
ドラえもんとのタイアップだったっけ?
子供達へ、その親達へ。
その桜井の歌詞の愚直さにただただ感動する。
ミスチル、桜井特有の、過去のエキセントリックな転調や歌詞は、前作同様見られない。
曲作りにおいて、限りなく才能とエゴの抑制を自分に強いている。
それもまた、桜井の才能である。
ただ、シンプルに。
ほとんどの楽曲がタイアップされている。
取れる所からは取り、寄付に費やしたやなせたかしの人生がふと頭をよぎる。
千疋屋のメロン。ミスチル御殿。
笑ってしまう。
桜井らしい。
「玉虫色の衣装」をまとって、陰でこそこそ莫大な寄付をしている姿が容易に想像できる。
誰の目にもふれない場所で。
桜井に会ったことはない。
「Cross Over」からもう四半世紀追い続けているが、ライブに行ったこともない。
そういえば、小沢健二の素晴らしさや曽我部恵一の存在を教えてくれたのも、桜井のフェスだった。それもNHKのBSでタダで見た。
アルバムは「memories」で幕を閉じる。
なんの驚きも、新しさもない、ありきたりの優しいラブソング。
もうひねくれた、エゴ全開のかつての桜井はいない。
ただ、穏やかに、笑顔で、歌っている。
愛し愛される喜びだけ。
全10曲である。
手離しで賞賛するしかない。
追伸
もう一回聴き直して、やはり素晴らしすぎてレビューを消したくなった。
そのかわりに、謝意を述べたい。
有難うミスチル。30年間そばにいてくれて。