男性の性被害
病気になって久しいある日、今からずいぶん昔。
父と2人でケーブルテレビで「スリーパーズ」という映画を観た。
見終えた父が小さな声で、「いい映画だ。」と言った。
私はハッとした。
父は満州帰りの孤児だ。
中国では、弟と収容所に入れられていた。
そこで、中国の人ばかりの中、敵国の孤児として、父に何があったかを、私は想像した。
頭から何度も何度も追い払おうとしても、小柄で小さな父が、苦しむ姿が消えなかった。
女性の性被害ももちろん許されない。
でも、男性の性被害だって許されないはずだ。
マイノリティの中のマイノリティ。
私は、沈黙の中の涙の匂いに、決して、二度と、目を背けない。