マガジンのカバー画像

掌編というより小片と言いたい

12
運営しているクリエイター

#朗読作品

名付けることもないほどの些事

名付けることもないほどの些事

 この関係に、言葉なんていらなかった。

 夏休みの終わり、8月の第3日曜日。住宅街の大通りを塞き止めて、車の代わりに人を流す。歩道には似たような屋台が並び、小中学生が我が物顔で溢れ返る。所謂地域の、ありきたりな夏祭り。

 小さい頃は、それこそ道のあちこちに宝箱が並んでいる気分だった。例えばシロップかけ放題のかき氷。或いはじゃんけんに勝つと二つもらえる、つやつやのフルーツ飴。当たりはないと噂のく

もっとみる