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桃谷蛙月
2019年8月5日 01:06
この世界は言葉であふれている。 人を認める言葉、人を否定する言葉、人を救う言葉、人を傷つける言葉、力強い言葉。 感情、空気。そういった言葉で柔らかくされているけれど、結局のところ、強者が弱者を縛り付けるものでしかない。「あ、また飲み込んだ」 アイスコーヒーをストローでかき混ぜながら、篤史が言った。「飲み込むって?」 先ほど食べたサンドイッチのことだろうか。そんなに、食べるのが早かっ
2019年8月25日 00:24
この関係に、言葉なんていらなかった。 夏休みの終わり、8月の第3日曜日。住宅街の大通りを塞き止めて、車の代わりに人を流す。歩道には似たような屋台が並び、小中学生が我が物顔で溢れ返る。所謂地域の、ありきたりな夏祭り。 小さい頃は、それこそ道のあちこちに宝箱が並んでいる気分だった。例えばシロップかけ放題のかき氷。或いはじゃんけんに勝つと二つもらえる、つやつやのフルーツ飴。当たりはないと噂のく