ケチな本指名、三銃士

ええ、わたしも酷いタイトルだと思います。
でもそう言っても過言ではないほどだったので、どうかここでお話させてください。

風俗を始めて、本指名様もかなり増えてきた中で迎えた、とある年の誕生日の季節のことでした。沢山のお客さんの中でも特にケチさが光る本指名がその年は三人もいたんです。


それじゃおなかは膨れない

無難で買いやすいということもあり、誕生日の時期はとにかくハンドクリームをボディクリームを沢山いただいた。
なので、わざわざリクエストを聞いてくれた本指名のうち一人に、家用のスリッパをお願いした。
無印良品のスリッパを買ってきたのだが、まあそれは良しとしよう。わたしの家の雰囲気に合っていて使いやすいものだった。
それだけだと物足りないよねと言ってきたので、自炊にハマっていたわたしはお出汁や醤油が欲しいとリクエストした。同じく無印良品とか、その横とかにありがちな茅乃舎とか久世福商店とかで買ってくるもんだと想像していた。
すると
「食べ物って好みとかあるから違うやつ買ってきた!」
出てきたのは、ロクシタンのハンドクリームとボディクリームのセット。
もう、見飽きていた……
身体はひとつしかないんだよ。毎晩シアバターまみれになってもこんな量使いきれない。
ボディクリームで、腹は、膨れない。
これまでにわたしの好みでもない食べ物を幾度も差し入れしてきただろ、と毒づくこともせず、つい低めの声でありがとうとだけ言った。

本当に欲しいものは自分で手に入れよう

見た目が結構いかついのに、若い女の子向けのコスメブランドが好きな本指名がいた。まあ好みなんか人それぞれでいいのだが、ある日そのブランドの限定品を予約購入できたと自慢された。
いいなあ、予約争奪戦だったよね。間に合わなくて買えなかったなあと言うと、「これは別の嬢にあげる予定だから。」と言われてしまった。
今思うとこれはある種の試し行為だったのかもしれないが、他の嬢にも入るタイプだと知っていたのでそうなんだ~とその時はスルーした。
それから月日が経ち、わたしの誕生日にその限定品をくれたのだ。
まあ、嬉しかった…デザインはとても可愛く実用性もあったが、何せ自宅で長期間保存していたから箱も傷んでおり、開けたら得体の知れない、割とデカめの虫の死骸も同封されていた。
本当に欲しいものは、自分で買うべきだなと心底感じた瞬間だった。

ケチの真骨頂

特にロングコースに入ってくれるが、特にワキガがキツい本指名がいた。ワキガ持ちのお客さんなんて正直沢山いるのでその日もまあなんとか我慢していた。
わたしには目標があった。太客に貸し切りしてもらって日帰り温泉に連れて行ってもらうという目標。
その話を何度かしていたのだが、誕生日の近いある日、開けてみて、と封筒をひとつ渡された。
中身は、パセラ系列の伊豆旅行一泊二日ペアチケット。
「会社の飲み会を全部パセラでやってスタンプカード必死に集めたんだよ~大変だった!」と満足気な表情。
そう、スタンプカード特典のチケットだったのだ。つまり実質お金のかかっていないプレゼント。
もちろん一泊二日の時間はお店で呼んでくれるんだよね?と聞いたが
「そんなの無理だよ(笑)仕事じゃないんだからさ、一緒にリフレッシュしに行こう!」
と言われてしまったので、ごめん、一緒には行けない。と、断ってしまった。
その後の空気は地獄そのもの。退室もかなり迫っていたのに、あれほど時間がゆっくり流れていくのは初めてだった。

NGにするまでもなく、それを最後に、指名はぱたりと途切れた。

そんなこともあったので誕生日は割とトラウマだ。あまりアピールせずにいつも通り過ごすのがいいんだろうなあと思う。
中にはすごく素敵なプレゼントをくださったり、いい時間を過ごさせてもらったお客さんもいる。しかしそれらはわたしにとって大切な思い出なので、今は心にそっとしまっておこうと思う。

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