ツラツラ小説。 似たもの同士。
「試しにいまハグしてみたらどうなるだろう。」
一緒に帰るようになって1か月。部活も引退して何もする事はない。君も暇でしょ?そう言って私は少し強引に君をひっぱる。
「何言ってるの、、やめてよ、恥ずかしいし」
君はとても普通で当たり前の反応をした。だからこんな調子なんだ。普通に流れる時間を過ごしてるから普通のことしか起きないんだ。
「えー」
そこから、してみたら面白いかもよ?とか、最近、暇でさぁ、とか他愛もない理由をつけて、ハグする流れにすれば良かった。私のえー、で会話は終わり、話題も変わった。そこからの話なんて覚えていない。ただ話を合わせて笑っていたんだと思う。
帰って布団に頭を埋める。今日君と話したことを反芻する。恥ずかしいし、って言った時の君のほんの少しの笑顔でさえ、可愛い。好き。好き好き好き。理性なんてない。もし向こうが抱いてくれるなら私は流れに身を任せるし、そこにお金が必要ならどんな金額でも。借金してでもきっと払うだろう。でもきっとこんなこと考えてるからダメなんだ。ダメ、ダメダメダメ。シーツがヨレヨレだ。
「ねえ、キスしようよ。」
私は相変わらず、君にとって冗談に聞こえるであろうことを言い続けた。その日はカラオケに行った。君が歌うラブソングが誰に歌っているのか。きっと隣のクラスの人なんだろうけど盛り上げていた。君がラブソングを歌い終わった後に言ったこの言葉は惨めだったかもしれない。だけど次の瞬間、
私は唇を奪われていた。
「これでいい?」
君は顔を見せない。そして、そのままその日は帰った。千円を置いて。ここのルーム料金は500円だ。私は持っていく必要のないフードメニューの紙も持って会計に向かった。
君がLINEを消したのはその日の夜だ。最近よくLINEしてたのだが真っ黒になっていた。君を想い眠る。
次の日の帰り。君が来た。
「一緒に帰ろう」
「ねえ、なんでLINE消したの?」
「これからは直接話せるから、もういいかなって、」
「ほかに友達もいるのに」
案外、互いに似たもの同士だったのかな。
私は強引に君を引っ張り、あとついでにキスをした。
おしまい。