ツラツラ小説。 恋人ごっこ。
「その顔は、好きな人ができたな」
やっぱり君にはバレるんだ。
「誰さ?誰にも言わないから言ってみ?」
でも、君はバカだ。
「言わないかーまぁそのうち、いつか何気なく聞いてやる」
君だよ。
「俺は好きな人はいないから、なんでも言えるもんねー」
その言葉は、私を少しだけ感傷的にする。私はこんなにも君が好きなのに。
だから、
「ねえ、今日もしていい?」
君は恥ずかしそうにうなずく。
私は君にキスをする。
私と君の恋人ごっこ。高校の時の1ページ。
私たちはずっとずっと一緒にいた。幼稚園の時の私の夢は君のお嫁さんになること。小学生の時はクラスが別々で、5年生で一緒になった時は、ほとんど会話はしなかった。男女で一緒にいるの恥ずかしかったもんね。中学も、あんま覚えてないなぁ。たまに会ったときは少しだけ話したね。テストの順位の話とかさ、何気ないこと。高校生になって、やっとまたたくさん話せるようになったね。
よく勉強会したね。結局、2人で映画観ながら寝てたね。でもあの時間は忘れられない時間だったよ。その頃かな?君と初めて恋人ごっこをしたの。お互い、彼氏彼女が出来なくて、その寂しさを紛らわすためって口実で、1番遠い君に私はキスをしたんだよ?
でも、君の頬も赤かったから期待してたのに。君は他に好きな人がいるって頑なだったね。私はこんなにも君が好きだけど、誰にもばれたくないから君の家に行った時だけこんな私になってたね。知ってた?その頃から私は君のことが大好きだったんだよ?
大学生になって。私はコンタクトを外したんだ。そしたら思いのほか、モテるようになっちゃって。君は嫉妬してたね。その頃から君が私に恋人ごっこしよう、って言い出したのを覚えている。私はとても嬉しくて、いつもより長いキスを何回もしたね。セックスはしてないけど、それよりも愛を感じたよ。
君は私のことを安眠グッズって言って抱き枕にしてたけど、ひょっとして君もあの時から私のこと好きだった?私はそうやって君に包まれるのがとてつもなく嬉しくて、照れてて、君の顔を見れなかったんだよ。君はぐっすり眠ってて、私はそんな君の頭を撫でて、君にそっとキスをしたんだ。気づいてなかったでしょう?朝起きて、お互い無意識にキスしてたこともあったよね。遅刻しそうになってあの時は焦った。
初めて君は私に告白した。大学を卒業してから。私はその時シチューを作っていた。告白の返事を先延ばしにするように、シチューの火を弱火にする。
フツフツとシチューが出来て、2人で食卓を囲む。シチューの鍋はテーブルの真ん中には置かなかった。というか、料理などをテーブルの左右に置き、中央を開けた。2人が手を繋ぐために。
長い時間をかけて作ったシチューはきっと成功している。長い時間をかけて恋人になった私たち。きっと、成功する。