桃野 六花

ある女性から「貴方」の元に届く手紙

桃野 六花

ある女性から「貴方」の元に届く手紙

最近の記事

逆位置の月(23)

しかしカードの説明には夢中になりながらもどうしても最終結果が気になります やはりこれも態度に出ていたのでしょうか お兄さんは 「あ、最終結果気になります?」とニカッと笑って聞いてくれたので思わず私も「はいっ」と笑って答えてしまいました 「…すみません、お話はとても楽しいんですが…」 「あ、ダイジョブダイジョブみんなそんな説明どうでもええから早よ最終結果教えろやー言うて机叩いてくるもん」 「気持ちわかります」フフと笑って答えてしまいました 「裏向けて伏せたあるからね、よけい気に

    • 逆位置の月(22)

      お兄さんは現状のカードや周囲の状況とか色んなカードをめくりながら、カードの絵柄には一つ一つ意味があることを説明してくれました 例えばこの人が赤い服を着てるのは自分の意思で新しい場所へ行こうという決意を表してるとか大アルカナというのは人生の転機を表すぐらい大きな意味を持っているとか カードは正位置と逆位置があり全く意味が変わるとか 私は面白くて夢中でお兄さんの話を聞き入っていました

      • 逆位置の月(21)

        そういえば昔措置入院になった時の主治医が「福本さんはさ、優し過ぎて悩んじゃうんだよねッ」と引きつった笑顔で言ってきたことがあったなあと思い出しました あの時私は自分て優しいのかなと思いながら無表情で固まっていることしかできず何か嫌な感じがしたのに、なぜ今は同じことを言われてこうも落ち着いていられるのだろう、まあいいか と思っているとお兄さんが「では現在のお姉さんの状況からね~」とカードをめくり始めました

        • 逆位置の月(20)

          顔に出たのでしょうか、その瞬間お兄さんが 「あっもしかして怖い?大丈夫大丈夫、占いってアドバイスやから。もし嫌なカードが出てもちゃあんとこうしたら大丈夫やで~ってアドバイスもくれるから。それがタロットのええとこやねん、気ィ楽にして聞いてね~当たるも八卦当たらぬも八卦っていうやん?こんなこと占いやってるボクが言うたらアカンねんけどな、ハハッ」 と軽快に言ってくださったので 「あっはい、すみませんすぐ気にしちゃって…」 と言いました お兄さんは「イヤイヤ、ここに来てくれはる人はみ

        逆位置の月(23)

          逆位置の月(19)

          そして「お姉さんの今後を教えてください、過去…現状…障害となるもの…顕在意識…潜在意識…」 と不思議な形にカードを並べていきました 潜在意識という言葉を聞いた時、病院みたいと思いましたがお兄さんの口調や手さばきが軽やかなので嫌な気分にはなりませんでした 「そして最終結果」 一気にドクンとしました いえ、占いなんだしと思いつつでも、嫌な結果はやっぱり嫌だなと思ったのです

          逆位置の月(19)

          逆位置の月(18)

          「では、お姉さんのこれからを占わせて頂きます、レイちゃんと申します~」 「あ…お金です…」500円を出しました 「あ、ありがとうございます、先に払てもうて助かりますわ、 確かに!」と言ってお兄さんは硬貨を色々飾り付けてある貯金箱みたいな箱に「チャリン♪」と言いながら入れました。そして 「ではね、まずはタロットカードをしっかり混ぜんとね」 と言ってタロットカードを机の上で混ぜていきさらにトランプのようにきり、三等分して戻したり上から6枚は横に置いたりしました 私はどんな結果にな

          逆位置の月(18)

          逆位置の月(17)

          占いでレイちゃんなんてセーラームーンの巫女さんみたいと思いお財布には500円硬貨があったので、どんどんお金が出ていくけどもういいや、一度こういう所入ってみたかったんだとおそるおそる中を覗くと 「あ、お客さん!?どうぞどうぞ~!」 と奥から出てきたお兄さんの流れに乗るように椅子に座っていました 「こんにちは~ご相談はどんなことでしょー、か!?」 「あ、はい、えっとあの、今退院してきたばかりで…何もかもがわからなくて、あの、不安っていうか、こう…これからどうなるかって全体的に占っ

          逆位置の月(17)

          逆位置の月(16)

          じゃあこれからどうするかというと嫌がられても何でもとにかく一度貴方の家に行って追い返されたら暴行されて死んでもいいから野宿しようと思いました もうどうでもよかったのです でもまだやりたいことがある、それはさっきのタワーレコードにもう一度だけ行きたい、あのお店の雰囲気を最後にもう一度だけ味わっておきたい、と思いながらトレーを戻しカップやスプーンを捨て丸ビルの階段を降りていくと タロット占い☆レイちゃん☆ワンコイン500円やで~( ^ω^ ) という手作りの看板が見えました

          逆位置の月(16)

          逆位置の月(15)

          フーッと一気にかきこんだ苺フラペチーノ 病院みたいにぐちゃぐちゃの食事を看護師に上げ膳据え膳だの優雅だの嫌味を言われて薬の時間があるから早く食べろと急かされながらの食事とは違い久しぶりに自分のペースで楽しんで食べられてとても美味しかった この時一瞬看護師や病棟の雰囲気を思い出しましたがすぐに消えました、いえ消しました せっかく(勝手に)退院してきたのにこの至福の時をアイツらに邪魔されたくなかった

          逆位置の月(15)

          逆位置の月(14)

          子どもみたいに夢中で苺フラペチーノを食べました いえ、子どもの時でもこんなに夢中で何かを食べたことなんてなかった クリームに苺ソースのかかったところとフラペチーノを混ぜたりクリームだけ食べたり苺ソースの多いとこだけ食べたり… こんなに急いで食べたらすぐなくなってしまう、と思いながらも体が生き返るのを感じてスプーンを止められませんでした 苺フラペチーノはあっさりとなくなってしまいましたが美味しくて美味しくて早く食べきってしまったことに後悔はありませんでした

          逆位置の月(14)

          逆位置の月(13)

          人の視線はともかくせっかくの苺フラペチーノが溶けてきてるのを見て私は慌てて席につきました 日差しに慣れていないので紫外線が…と一瞬思いましたがあまりにも春の晴天が美しかったので、もうシミもシワもできていいや、それよりも淡い春の陽を浴びたいと数年ぶりの外の空気を楽しみました そして苺のフラペチーノ 甘くて、ひんやりとしてなめらかで少し甘酸っぱくて…美味しかったです。また涙が出そうになったくらい美味しかったです 体中が苺フラペチーノを全力で吸収していくのを感じました

          逆位置の月(13)

          逆位置の月(12)

          テラス席に座ろうと外に出た途端なんて青空が美しいのだろうと眩しさも相まって少し涙が出ました 確かあの時は4月初旬でしたから春の晴天でした そして今までこんなに綺麗な青空を見られない状態にあった自分を思うとさらに涙が出ました 服と髪はともかく化粧もせず苺のフラペチーノをトレーにのせて突っ立ったままじんわり泣いている三十余りの女はさぞかし滑稽だったのでしょう、スーツ姿の人が数名チラチラ見ていきました ですが私はそんなことはどうでもよかったのです

          逆位置の月(12)

          逆位置の月(11)

          スターバックスでの注文は何年ぶりかだったので少しおろおろしてしまいましたが周りの人に怒鳴られたりはしませんでした 期間限定という苺のフラペチーノを注文し、違う場所で少し待つと店員さんが作って渡してくれました 見た目にも可愛らしい鮮やかな濃いピンクの苺のフラペチーノ しかしお店の中には空席が見当たりませんでした 外の…テラス席っていうんでしょうか、そこは空席がありました 私は苺のフラペチーノをトレーにのせて外に出ました

          逆位置の月(11)

          逆位置の月(10)

          美容師さんにお礼を言ってお金を払い、外へ出たら自分がものすごく喉が渇いてお腹も減っていることに気づきました 今思うとあれはJR大阪駅の丸ビルだったのでしょう スターバックスがさっきのタワーレコードのすぐ近くにありました お金は…うん、何か飲み物一杯ぐらいならまだ大丈夫 まっすぐスターバックスに向かいました

          逆位置の月(10)

          逆位置の月(9)

          「できましたよ」 何年も手入れしてなかった私の髪は結べる長さは残しつつ、軽く動きも艶もあるサラサラした手触りになりました 美容師さんがシュシュという可愛らしいヘアゴムとピンで私にすぐできるアレンジというのを教えてくれました そして「そのシュシュとピン、サンプルなんでよかったらどうぞ」と言ってくれました おまけにご新規さんだからと眉カットというのをしてくれました

          逆位置の月(9)

          逆位置の月(8)

          そのまま目の前の美容室に入り正直に「長い間入院してたのでどうしていいかわからないけど明るくしたいです」と伝えると美容師さんは笑顔で了承してくれました そして結べる長さは残すとかボブはどうとか楽しかったです ボサボサだった髪の毛をもこもこの泡の優しい香りのシャンプーで洗ってもらい、整えてもらっていくうちに自分の心まで軽くなっていきました

          逆位置の月(8)