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この世界で一番怖いのは、愛する人が愛してくれなかったことを知ったとき。「ラブ・イズ・ブラインド」より

「一番怖いものはなんですか」幼稚園の頃、大人の人に聞かれた気がする。おばけとか、包丁とか、お母さんとか、そんなものを挙げていたのを、うっすらと覚えている。今、わたしに聞かれたら、迷わず「全力で愛していた人に、愛されなかったこと」と答えるだろう。


人の気持ちはコントロールできない。どんなにまっすぐ目を見て「好きだ」とか「愛してる」とか言っても、心の中は見えない。もしかしたら、心の中では全然反対のことを思っていたり、別の人のことを考えているかもしれない。

だけれどわたしたちは、愛する人を目の前にしたとき、その人が紡ぐすべての言葉を信じたくなる。この人は嘘をついていないと、自分を裏切ることはないと、そう信じて疑わないのだ。

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ただ、人の気持ちに100%はあり得ない。昨日まで黒が好きだと思っていたのに、朝起きたら何にも染められない、美しい白が好きになっていることだってある。もちろん、非常に極端な例ではあるが、あり得なくはないだろう。

そうして、人の気持ちはどんどん変わる。例え、一生一緒にいようと約束をしたって、いとも簡単に破られてしまうことだってある。

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 Netflixの「ラブ・イズ・ブラインド」を見た。「恋愛において重要なのは、外見か中身か?」がテーマとなっている、リアリティ番組だ。

集められた男女はポッドと呼ばれる壁一枚隔てた個室の中で、いろんな相手と10日間の間にデートをする。と言っても、相手の顔が見られるのは、どちらかが結婚を申し込み、OKしてから。相手の肌の色も、顔も、スタイルも見えない。声と会話だけで結婚相手を決めるのが目的だ。

顔が見えない二人は、これまでの恋愛やこれからのこと、家族に対してどう思っているか、自分の性格など、見えない相手に感情をぶつけていく。

そうして、いくつかのカップルは本当に声と会話だけで結婚を決め、婚約者として初めて出会う。そのあとはハネムーンへ行き、同棲をはじめ、式をあげて結婚をする。その期間はたったの約6週間。

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第一話〜第三話くらいでもうポッドからは出て、現実世界の障害(スマホとかお金とか)と戦ったり、家族や友人に止められながらも、本当に相手を愛して結婚するのかを考えたり。そして、最後の結婚式で、本当に相手と結婚するかどうかの決断を下すのだ。

どのカップルも、ポッドの中で自分と向き合い、相手の話に耳を傾けて、恋に落ちちゃってるわけで。ポッドから出てスマホや家族と触れ合うことで、現実世界に引き戻されてしまう。そこで、新たな本性が出てきて、さあどうしよう、と。

本来なら何度かデートをして、2〜3年付き合って、結婚っていう流れを全部吹っ飛ばしてきてるから、自分も周りも不安なことはたくさんあるのだけれど、何より相手を愛しちゃってる。一度愛しちゃったものって、なかなか引き返したり、心が元に戻るのって、本当に時間がかかるもの。

なのに、最後の最後、結婚式で「あなたとは結婚できません」と言われたときの衝撃って、とんでもないものだと思う。

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たった6週間かもしれない。だけど、ポッドの中で一生懸命声を聞いて、会話をして、心を開いて信用して。番組だとはわかっていても、本気で相手を探しに奮闘した人の方が多かったはずなのに、「結婚できません」ですべて終わり。

自分が勇気を持って心を開いて愛した人が、相手も同じくらい愛してなかったと思う瞬間って、どんなものなんだろう。いつもなら、ただのリアリティ番組だから、で済むはずだったのに、今回ばかりはとても感情移入してしまった。

わたしも、愛した人に愛されなかったことがある。だからこそ愛した人に愛されなかった彼らの気持ちが、痛いほどわかるのだ。