松岡茉優主演映画「勝手にふるえてろ」がものすごく好きな作品になった

松岡茉優主演の「勝手にふるえてろ」を観た。結論、すごくすごくものすごく好きな作品の一つになった。

松岡茉優演じる主人公ヨシカは、中学時代に片思いしていた理想の王子こと「一（いち）」が10年好き。そこに空気が読めないまっすぐすぎる同期の「二（に）」が現れる。

この名前のセンスも最高。一は苗字からとったちゃんとしたあだ名なんだけど、二（に）というあだ名は、会社の請求書に書いた数字が読めなくてどうにか読んだのが数字の二（に）だったというだけだ。

一はずっと好きな王子様で、二はこの10年間ただひたすらにまっすぐ恋していたヨシカの心を掻き乱す。

一はヨシカの理想の王子様で、頭の中で何度も妄想を続ける。まっすぐに誰かを好きでいられるって、きっとこういうこと。だけど、恋愛っていいところばかり見えてしまって、相手の本心や黒い部分は覆ってしまったり、見て見ぬふりをしてしまうことがある。

実際に、同窓会で一と再開したヨシカだけれど、一はヨシカの名前を忘れていてショックを受ける。私の十年間なんだったのって。ずっと好きだった綺麗な思い出はどこにいったのって。

そうして、泡の中に包まれていた優しく淡く脆い想いは、簡単に水に流れていく。そんなときに、二とも喧嘩して感情がプツンと途切れ、友達にニコニコするのも、地味な会社生活もやめてしまう。

すごく、生々しい。きっと誰にだってこういうことはある。まっすぐに誰かを想い続けていたのに、相手は全然振り向いてくれない。

私のこれまでの想いはなんだったのって。可愛く着飾ったりフワフワの妄想をしていたのはなんのためだったのって。

もちろん、相手が悪いわけじゃない。恋愛は一人ではできないし、片一方の想いだけでは成り立たない。幸せになんかなれない。そんなことは最初からわかっているけれど。どこか、もしかしたら、と期待をしてしまうのが恋心ではないか。

その分、二はまっすぐに自分の気持ちを伝える。最後の最後まで、優しく相手を傷つけない二は良い人が過ぎる。ヨシカ、二がヨシカのこと好きでよかったね、って。

でも、ヨシカは一が好きだった。ずっと好きだった。二の優しさに気付かぬまま、好きだった。

片想いは楽しい。いつ会えるかな、なんて約束もしていないのに毎日毎日丁寧にメイクしたり、次会うときのために、と服を新調してみたり。たった1行の返信でも舞い上がって喜んで、今すぐ世界に叫びたくなる。「ねえ聞いて！彼から連絡が来たのよ！！」って。

だけど、それと同じくらい悩むし落ち込むしどうしたら良いかわからなくなる。そして、二のようにまっすぐ自分のことを好きでいてくれる人を大切にするのが、安心で安泰で高波に飲まれることなく人生を過ごせる。

憧れに甘い期待をするな。本能のままに誰かを好きで、そして、生々しい感情の揺れが心をギュッと掴んでくる「勝手にふるえてろ」、好きです。