マジックアワーだけが知る秘密

「マジックアワー、見に行こうよ」そう彼の腕を取って土手に向かう。時計はすでに午前5時を指していた。

「マジックアワー」とは、太陽が顔を出す前、または沈んだ後に残る、オレンジ色の景色のこと。晴れていないときれいにこの世界に映し出してくれないから、世界で一番美しい時間と言われているそうだ。

わたしが「マジックアワー」を知ったのは、三谷幸喜監督の作品『ザ・マジックアワー』。この作品は、おじいさんが主演の佐藤浩一に「マジックアワーは一日で一番美しい時間なんだ」と呟いて幕を閉じる。佐藤さんが目を潤ませながら、オレンジ色の光を眩しそうに見つめるのだけれど、いまだにそのシーンが忘れられない。美しかった。

フワッと包まれるような、自然が作り出す美しく柔らかい光。わたしにはピカッと当たる光よりも、あと少しで消えてしまうような、暗闇にのまれて消えてしまうような光の方が、なんだか合っている気がする。