雑文 #188 街
昨日は久々に深夜まで残業していた。
家に帰って午前二時。街はひっそり。外の空気はぬるくて気怠い。猫はタオルケットに吐いていた。
写真撮影にExcel入力、文章を考え値段をつける。小さな会社は何でもやる。深夜残業もゆるっとやる。大手ならブラックと言われるのだろうか。
「これは宵のうちには終わらない」と気づいた時点でげんなりしたけど、それは久々の共同作業だった。もちろんずうっと集中し続けることもできないから、時々雑談をする。この感じ久しぶり。追い立てられながら、お互いのペースを測りながら。きらいなことをしている以外なら、私は集中力はあるほうだ。
2時に帰ってすぐ眠れるはずもない。とにかく暑い日だった。外での作業もあった。頭と体をゆるめなきゃ。眠る前の儀式に私は2時間はかかる。
翌日昼前に目が覚める。今日は病院のハシゴの日。おもしろくもなんともない休日。
久々に街に出た。電車に乗ったのは二週間ぶりかな。街は一見普通に動いてる。
繁華街近くのエリアにも行った。帰りは夜が近づく時間帯。やはり何となく元気ない。人は歩いているけれど、駅の地下街では誰かにぶつかりそうになるけれど、街全体が無口な感じ。マスク使用率はほぼ100%。飲食店は大抵扉を開けていて、見るとほんの数組のお客さんが笑い合っている程度。スタバ以外はね。
フランスパンが好きなので、伊勢丹の地下に買いに行く。ちょっと他より活気がある。何だかホッとしてしまう。私が目を止めた京都の大徳寺のお店のショーケースには、ハモや鯖寿司のお弁当。思わずつられて吸い寄されたのか、小柄なおばあさんがぶつかってくる。腕と腕がぶつかるということが、珍しいということに気づく。
通院先が引っ越した。前の場所が、好きだった。前の場所は、私が大学で上京したときに初めて住んだ界隈。そこにすごくいい思い出があるわけでもないけど、住んでた場所とか通ってた場所というのは気持ちが落ち着くものだ。もちろんいろいろ変わっているけど、ふっと落ち着く空気がある。過去の自分と会える気がするのかな。地のオーラというものがある。
今日も、よく行ってた場所をわざと通ってぐるりと廻ってみた。ああここだ、まだビルがある。向かいのお店はずいぶん変わってしまったな。きょろきょろしながら歩いていたら、前から来る男性と目が合った。強いまなざしに黒いマスク。
ああ知らぬ間にいわゆる「夜の街」に紛れ込んでしまってた。
腕時計を見ると、時間が止まっていた。