雑文 #208 ぶらぶら
普通の休日を過ごしたかった。
一週間のうち二日間が休みで、一日は溜まった家事とゴロゴロ。もう一日は街でぶらぶら。
そういうごく日常的な一週間ってそういえばずっと過ごしてなかったのかな。
ゴロゴロの日はひたすら外に出ず、ぶらぶらの日は無計画に街を歩く。
興が乗ったら映画を観たり、早めの時間からビールを飲んじゃったりして。
コロナで外出が少なくなってたとき、ゴロゴロの日は過ごしたけど、ぶらぶらはできなかった。
ゴロゴロを週二回、無為に過ごしただけだった。
みんなと違って掃除に精を出したり新しい趣味を見つけたりなどしてなくて、むしろ仕事してたかった。
やがて梅雨が明け暑くなり、淀んだ夏を過ごしたけど、9月になるといつの間にか忙しくて、淀みは少しずつ消えていっているようだ。
あちこちといろんなところに行くようになり、流れが生まれたのかもしれない。
やはり同じ場所にずっと居ずに、動くと、私の体内の素粒子も流れるようになる。
風も吹くようになる。
今日のぶらぶらはもっぱら普通で、それがうれしい。
まず予約してた美容院へ行く。美容師さんはここ数年担当してもらってる人で、今日はよくしゃべる。お客さんの話を美容師さんが聞いてあげる構図が多いと思うのだが、逆だ。それもまた心が緩む。
それから空いたお腹を抱えて映画館の前へ。予めスマホで調べとけばいいのに、行き当たりばったり。タイムスケジュールのたくさんのタイトルを眺める。残念だがピンとくる映画がない。そばにある次の映画館へ行き、二舘目でもピンとこない。映画は諦める。
デパートに入る。インテリアのフロアを流し見する。この頃、日本の各地方のセンスの良いものを集めたショップがよくあるね。
それよりこのペコペコのお腹だ。前に何度か入っていつも3組くらいしかお客さんのいない、フロアの隅っこの目立たないレストランに入った。京風ラーメンと小籠包を食べる。サラダにザーサイにもなか付き。特別な味ではないけどなんか美味しい。まるでふらりと立ち寄った地方の食堂のようだ。
それからエレベーターで一気に下に降り、電気店へ向かう。Bluetoothスピーカーを買おうと思って1ヶ月。もう買おう。2万円台のものを狙って来たが、変な色しか残ってなくて、取り寄せもできないらしい。店員さんに話を聞いたら1万円切るものでも狭い家で一人で聴くには遜色ないと言われた。そんなわけないよなと思いつつ、お財布事情もあり、結局安いほうを買った。色は白。
帰り際、別の電気店を通ったのでついでにまたBluetoothのコーナーに寄り、今度はイヤホンを狙ってみる。
店員さんが話しかけてきて、初めてならこれがいいと勧めてくれるが、私の好きなメーカーのものを見つけてそちらをチェックする。スピーカーの予算のお釣りで買えるなと思ったけど、時間切れ。
バスに乗りたかったのだ。帰宅で混み合う時間前に。
そうして暗くなる前に家に着いた。
長くもなく短くもない休日の外出。
平日の街は気怠い感じで、私はゆるい流れの水の中で泳いでたみたいな気分だった。