雑文 #243 ショートトリップ
仕事で遠出。
県をまたぐのは、そういえば久しぶりかも。大きな川を渡った。日曜日、大きな川を電車で渡ることは好きだ。
小さな旅でも大旅行でも、とにかく私は旅が好きだった。いや過去形にせずとも、旅が好きだ。ただ今はできないだけ。
「三度の飯より旅が好き」と言っても大袈裟じゃないくらい好きだった頃もあった。今はどう?もっと穏やかに好きかも。
たとえば移動しているのが好き。電車好きや飛行機好きな人のように、乗り物自体に興味があるとかじゃなくて、「移動してる感覚」が好きなのだ。移ろっている自分が。なんか開放的な気分になるんだよね。そして見たことないものを見たい。行ったことのない場所で。知らない人と話してみたい。文化の違う土地で。
今日の移動は、小さな小さな旅だった。でも発見はあった。桜は東京よりまだ咲いていた。ちょっとだけ北だから、春がちょっとだけ遅れてた。菜の花がかわいくて、風に揺れるのを見とれてた。
雨が降った。降りそうで降らなかったが、私が帰るのを見計らったようにぽつぽつと降ってきた。私はよくあることだが、バスの時間を間違えた。そこで30分間次のバスを待つよりは、駅まで30分歩いたほうがいい。暗くなり、雨が降り、誰も歩いてない田舎の道を歩く私はついてない。そう思って折り畳み傘を出したとき、雨粒とともに桜の花びらが降ってきた。雨、花びら、雨、花びら。そこは桜並木だった。なんかこれ、いい感じ。そのイメージを何らかの形で保存したいと思った。ショートトリップ。旅のひとこま。
いつかもっと大きな旅行をしたいけれど、旅行の醍醐味って大なり小なり要は一緒なのだ。それは発見。移動して、新しい何かを自分の中に吸収すること。
明日も同じ場所へ仕事で行く。つまらないことも、楽しくしていきたいものだ。人生は旅なり。