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円錐型人間

「T型人間」という言葉をよく聞く。「特定の分野の専門家であり(縦の棒)、その専門性を軸に他の幅広いジャンルに対しても知見を持っている(横の棒)人」のことらしい。スペシャリストとジェネラリストのどちらの顔も持っているということだと思う。確かにそんな人は活躍できる気がするし、実際に専門家は自分の専門外のこともたくさん知っている。

また、「π型人間」という言葉もあるという。「異なる分野2つ以上の専門的な知識を持つ人」のことらしい。「T型人間」がもう一つ専門性を持つとこうなれるのだと思う。専門性を2つ持っていれば、自分だけでもユニークな発想ができるのだろうと思った。こちらもなるほどと思った。

ただ、「T型人間」も「π型人間」も就活で使われる言葉であるせいか、どちらかというとスキルや業務によった話であるように感じる。就活だけでなく、日常にも応用できる言葉があればいいなと思った。

そこで今回は、「円錐型人間」を提案したい。スキルや専門性ではなく、より人間的な部分に注目した考え方である。スキルだけに重点を置いていないので、日常のようにより広い文脈で使えると思う。

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円錐には主に2つの要素がある。入り口と深さである。円錐型人間の特徴を端的に表すと、「入り口が広く、奥が深い人」のことである。入り口の広さと奥の深さに分けて書いていこうと思う。

入り口の広さ

「入り口が広い」とはどういうことだろうか。「たくさんの多様な人とすぐに仲良くなれること」だと考えている。皆さんの周りにも、「この人の周りにはたくさん人がいるな」と思う人はいないだろうか。入り口が広い人には共通した特徴があるように思われる。

まず、入り口が広い人はいつもニコニコしている。いつも機嫌が良さそうである。たったそれだけで、たくさんの人が集まってくる。ニコニコ笑っている人を見ると、ほとんどの場合気分が落ち着いたり、こちらも嬉しくなったりする。つい挨拶をしたくなったり、声をかけたくなったりしてしまう。

また、入り口が広い人は挨拶をしてくれる。「おはようございます!」「やっほー!」「元気にしてる?」といつでも気持ちよく挨拶をしてくれる。初対面であっても笑顔で声をかけてくれる。今まで関わりがなかったのに挨拶をしてくれるものだから、嬉しくなってしまう。自分から挨拶する勇気がないときにも、向こうから声をかけてくれるのでホッとする。また、一度しか会ったことがないのに覚えていてくれる。すれ違ったときに気づいていないふりをするのではなく、必ず声をかけてくれる。入り口が広い人は、本人が意識しているかしていないかに関わらず、会う人を笑顔と挨拶だけで喜ばせる。

笑顔と挨拶だけでたくさんの人が集まってくるが、入り口の広い人は自分の入口をさらに広げにいく。つまり、自分から積極的に新しい出会いを求めて行動する。例えば、知らない人に話を聞きに行くことを習慣としている。全然面識がなかったとしても、仲良くなりたいと思ったらすぐに連絡を取る。外から見ていると「行動力すごいな」と思うけれど、本人はとてもワクワクしている。実際、話を聞かれる人も、笑顔で挨拶されたら気分がいい。つまり、入り口に広い人は行動範囲が広い。様々な分野に興味を持ち、それを知っている人を探して話を聞きに行く。

以上を総合すると、入り口が広い人は、人との出会いを大切にしている。多くの人と気持ちよく出会い、一人ひとりを受け入れて、さらに自分から入口を広くしようとしている。こうして多くの人と仲良くなり、緩くつながっている。

奥の深さ

友人と話していて、「この人はなんて奥が深いのだろう」と思うときがある。それまで軽い話しかしてこなかったが、じっくりと話してみて、その人の奥深さを知ったときの感動はなかなか忘れられない。また話したくなる。

「奥が深い」とはどういうことだろうか。それは、「日々思考し続け、自分の意見を持っていること」だと思う。「T型人間」のように単に高度な専門性を持っているだけではない。

まず、奥が深い人はいつでも思考する習慣がある。情報を鵜呑みにするのではなく、自分で咀嚼することを忘れない。物事に対して「それって本当にそうなんだっけ?」「どうしてそうなんだっけ?」と問うことができる。その質問が思考のトリガーとなって、疑問を明らかにしようとしたり、本質を見極めようとしたりする。

それに伴って、奥が深い人は物事に対して自分の意見を持っている。自分なりの哲学や行動指針を持っていると言ってもいい。人から聞いた話や本で読んだ情報をそのまま自分の考えにしているのではない。もちろんそれらも参考にするが、実際に自分でアクションを起こし、自らの実体験をも踏まえて自分なりの考え方を形成している。こうした話には説得力があるし、尊敬できる。私自身、「出る杭は打たれる」と思って物事に意見を持つことを恐れてしまうことがある。そんなとき、奥が深い人の話を聞くと、自分の意見を持つ勇気ときっかけをもらえる。

以上のように、人間的に奥深い人は日々たくさん思考し、自分の意見を形成している。

円錐の魅力

入り口の広さと奥の深さを兼ね備えた人は、円錐型人間となる。円錐型人間と会ったときの流れは以下のようである。

出会った瞬間からニコニコしていて、挨拶をしてくれるので、いつの間にか知り合いになっている。「よっ」と挨拶を繰り返すうちに、少しずつ会話をするようになる。何回か立ち話をしていると、今度食事をすることになる。食事のタイミングで初めてじっくりと話してみる。すると、ニコニコしているだけでなく、奥が深いことに気づく。日々思考した痕跡がよく見えるようになり、自分なりの考え方を持って行動しているのがわかる。こうして、入り口の広さと奥の深さにギャップを感じる。そしてそのギャップに魅力を感じる。

以上のようなギャップの使い方を覚えると、円錐は蟻地獄のように機能し始める。書き方は物騒だが、言いたいことは単純である。新たな知り合いをどんどん作り、たくさんの人と繋がり、その一人ひとりを人間的な奥深さで魅了して離さない。

円錐は、入り口の広さと奥の深さのどちらか一方でも欠けてはうまく機能しない。入り口だけ広くても、結局広く浅い関係にとどまってしまう。自分の中に奥深さを持っていなければならない。それは日常において思考し続け、自分の意見を持つことでしか得られない。

また、人間的な奥深さを持っていても、入り口を狭めているのではもったいない。少しだけニコニコして生活することから始めたい。挨拶を自分からするのも勇気がいるが、案外気持ちがいいかもしれない。せっかく自分なりの考え方を持っているのに、元気のない顔をしているのは損な気がする。そして、徐々に行動範囲を広げていく。自分のコミュニティでぬくぬくするだけでなく、新たな出会いを意識的に求める。

最後に

今回は、スキルや専門性ではない人間的な側面から、魅力的な人のあり方を考えてみた。それが「円錐型人間」である。入り口の広さと人間的な奥深さ。どちらも兼ね備えている人になりたいと思う。

一方で、こうした「入り口が広い人」には否定的な意見がありそうである。一応断っておくと、人のパーソナルスペースにズカズカと入っていくようなこととは異なる。円錐型人間はそうした配慮も忘れない。たくさんの人と会っているからこそ、何事も相性があることを知っている。知り合っていくスピード感を調整できる。

ここまで読んでいただきありがとうございました。感想をお待ちしております。

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