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【掌編小説】彼氏のタマタマ♪
私は彼氏の『タマタマ』が好き♪
えっ? 何でかって? イヤン、もう~、そりゃ~、何て言うか~、好きなものは、好きだもの♪ 人間だもの、しょうがない!
彼氏の『タマタマ』はお上品♪
ムフッ♪
ときどき、彼氏のタマタマを、私の手のひらの上で、転がすように、弄ぶ♪
だって、可愛いんだもの、しょうがない♪ 好き者だもの、しょうがない♪
彼は、とっても謙虚で控え目。目立ちたがらず、でしゃばらず、サラッと素敵な佇まい。立ち居振舞い、さりげなく♪
電車に乗車中、急ブレーキで、おばあさんが倒れて来たとき、彼はサッと下敷きになり、おばあさんをナイスキャッチ!
おばあさんから、「ありがとうごぜえますだぁ~!」、とお礼を言われても、
「タマタマですから……」
と、超~控え目♪ 車内で拍手喝采が沸き起こり、私は、彼の彼女として、とてもうれしかった♪
一緒に街を歩いていて、「ドロボーッ!」、って声が聞こえて来たときも、そう。振り返ると、ドロボーらしき男とそれを追い掛ける店員さんが、こちらに向かって走って来た! 私は身体が固まったが、彼はビビることもなく、サラッと、ドロボーの腹に、えげつないハードタックル! ドロボーは失神!
店員さんやおまわりさんからお礼を言われても、
「タマタマですから……」
と、ヒーローぶらない♪ 私は、彼の彼女として、とても誇らしかった♪
ある日、そんな彼に、ちょっと意地悪な質問をしてみた。
「ねぇ」
「んっ?」
「私と付き合うことになったのも~、タマタマ?」
「そだね~」
ちょっとショックだった。
「じゃあ、タマタマ、違う女の子と出会っていたら、私とは付き合わなかったわけね?」
「そだね~」
またまた、ショック! 優しい彼のことだから、優しい言葉を期待していたのに……。私は、ちょっと、イラッとした。
「じゃあ、付き合うの、別に私じゃなくてもよかったんだね?」
「そんなことないよ」
「うそばっか!」
「何でだよ?」
「だって、タマタマ私と出会ったから私と付き合ってるだけで、タマタマ違う子と出会ってたら、違う子と付き合ってたわけでしょ?」
「まぁね」
「……ってことは、私のこと、そんなに好きじゃないってことだよね!」
「何言ってんの、タマタマって、スゴいことなんだよ♪」
「何がよ?」
彼が、私のご機嫌を伺い始めたようなので、私はちょっと拗ねてみた。
「タマタマ同じく地球に生まれ、それもタマタマ同じ時代に生まれてなけりゃ、タマタマ出会って付き合うタイミングもなかったんだよ」
「まぁ~、そうだけど」
「君のご両親がタマタマ出会わなかったら君は存在していないし、僕の両親が出会わなかったら僕は存在しなかった」
「確かに」
「でも、タマタマ、君のご両親や僕の両親は出会ったから、僕たちは生まれた」
「そだね」
「そして、タマタマ僕たちは出会えたんだよ」
「うん、まぁ……」
「君ん家も僕ん家も、おじいちゃん・おばあちゃんたち、ひいおじいちゃん・ひいおばあちゃんたち、ずっと、ずっと、ず~~~っと、その長い命のリレー、命の営みを遡ってみてよ」
「うん」
「両家のご先祖様たちが、タマタマ出会わなかったり、たった一人でも、タマタマそのペアが変わっていたら、君と僕とが、タマタマ存在し、タマタマ出会うことはなかったんだよ♪」
「うん、分かった♪」
私は彼氏の『タマタマ』が好き♪