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アダルトビデオとの出会い
アダルト業界に勤めて今年で14年目だが、今までに「なんでこの会社入ったの?」という質問はたぶん何百回とされている。
これは普通なのだろうか?たとえば、食品メーカーに勤めてる人も同じように何百回も聞かれているのか?システムエンジニアも聞かれているのか?私はこの仕事しかしてないのでわからないが、逆の立場で考えたら、聞いたかもしれないし聞いていないかもしれないから、普通なのかもしれない。
個人的にはこの質問は結構煩わしい。というのも、おそらく聞いた人が期待しているような答えは「昔からエッチなことに興味津々だったんです!」とか逆に「性の解放をしたいと思っていて」というような、強い意志があって、話が盛り上がるようなものだろうから。残念ながら、そういう楽しませるような答えはできません。
なんでこの会社に入ったかと聞かれたら、就活中に募集が出てたから応募したのがきっかけだし、なぜ応募したかというとそもそも大学で映像の勉強をしていたので、映像系の会社を探していたからだ。なぜアダルトか?という問いには、アダルトかどうかは大した問題ではなかったから、というのが正直なところだろう。説明会での印象がよかったため、選んだ。
思い返せば、アダルトビデオを見たのも、SODの説明会でもらったDVDが初めてだったかもしれない。当時の携帯はまだガラケーだし、今みたいに配信で動画を見るという文化はなく、レンタルビデオ店に借りにいくのはさすがに勇気がいった。説明会のときに、自社の作品の総集編DVDを頂いたので、それで初めて見た。
初めてAVを見た感想は、「すっげー」。画面いっぱいに、セクシーなお姉さんの裸体が映し出される、なんと刺激的な映像。ただご存知の通り、SODは企画作品が多く、当時の自分には理解できない(感情移入できない)作品も多くあったので、あまりそのDVDは見ていない。それがきっかけとなりAVをたくさん見た、ということもない。
今は担当している部署の作品は見るし、流行っている作品や他メーカーの作品を知りたくてFANZAで作品を買うこともあるが、AVマニアには遠く及ばない。(もちろん嫌いでもない)
実家にいた頃は、深夜テレビで「トゥナイト2」が放送されていて、そのコーナーとしてAV紹介を見たり、家族が寝静まったあとにケーブルテレビでセクシーなVシネを見たりしてドキドキしていた。なので、エッチな映像作品があるぞというのは、なんとなく高校生くらいには理解していたのだと思う。
性の目覚めと言えばそれより少し前の中学生くらいに、少コミとの出会いが大きかったような気がする。それまでは、りぼん、なかよし、ちゃお、さらに弟がいたのでコロコロコミックを読んでいたが、友達が貸してくれた少コミは私が知っていた漫画とは違っていた。これまでの少女漫画は、片思いをして思いを伝えるか伝えないかで悩んだり、気持ちが伝わらなくてもどかしい思いをするものだった。しかし少コミで描かれる少女漫画は、その先に行っていた。すぐキスしちゃうし、いきなり押し倒す。同じ男女なのにそんな世界が存在するのかというところに衝撃を受けた。
ただ、そこで「自分もやってみたいから彼氏を作ろう」という気持ちは特に起きなかった。それよりもむしろ、「みんなはこんなことをしてるの?私だけ置いてけぼりでつらい!」という焦りや恐怖のほうが強かったと思う。多分もうその頃から、セックスや異性への興味よりも、他の人が性についてどう考えているのかのほうに、物凄く興味があった。
思えばそれは結局今の仕事につながっているような気がする。今は女性向けのAVを販売しているので、女性がどんな風に性やアダルトビデオという存在をとらえているか、どういうところに抵抗を感じているか、どういうときに解放的になるのか、ということを常に情報収集している。商品の売上を通して、またはTwitter等での反響から”その時”の女性の感覚を探り、次の施策の提案を行っている。
私は監督でもないし、ADとしての下積み経験はない。制作やキャスティングにも関わったことはないし、編集もデザインもできない。営業部にいたときもあるが本当に一時期だし、営業のスキルも身についていないと思う。マーケターというにもおこがましい。
残念ながら私は、アダルト業界に14年もいながら、いたって普通の人間である。強い個性や、光る才能があるわけでもない。
だから、なぜこの会社に入ったのかという答えも、アダルトに対する強い思いがあったわけではない。他人が性に関してどう考えているか気になって気になって仕方がないから、自分が遅れてるんじゃないかと不安で不安で仕方がないから、性の最先端にいたいという理由からです。