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『魔法使いになれなかった女の子の話』オリジナルアニメ(2024年秋)応援企画(その3)

今シーズン(2024年秋アニメ)のオリジナル作品の応援企画として本作を取り上げる。評価基準は「その2」で説明の通りで、良いものは良い、イマイチなものはイマイチと主張していくスタンスで進めたい。
(本作第1話の詳細なネタバレを含みます)


物語のオープニングを振り返る

物語の構成についてはこれまで述べた通り、第1話で「オーニングイメージ」~「きっかけ」までが表現されている前提で読み解いていく。

オーニングイメージ

作品のスタイル、雰囲気、ジャンル、スケールを表現する箇所。
本作では、

  • シャボン玉のような丸い泡状のものが地面から大量に湧き上がる景色

  • それを見た少女が歓声を上げる

  • 「今夜は100年に一度の彗星が見られるはず、ぜひ見たい」と少女が希望を口にする

  • 少女が「今晩がよい天気であるようにおまじないをする」と言う

といったあたりが該当する。
語彙力に乏しくて恐縮だが、子供向けの絵本のような絵柄と色使いで、この作品がファンタジーに属することがわかる。そして当然ながら、この少女が物語の主人公だ。

『まほなれ』シーズン1・第1話より

テーマの提示

この物語は何をテーマに展開していくのかを表現する箇所。

  • 少女のおまじないは効果なく、夜は雨になり彗星が見えない

  • 落ち込む少女

  • 急に窓の外が光り輝き、気づいた少女が外へ飛び出す

  • そこには女性の魔法使いがいて、魔法で雨を晴に変える

  • 彗星がきれいに見える。感激する少女

  • 魔法使いが少女に話かける

    • 「本当は誰だって魔法使い それを忘れてしまっているだけ」

    • 「魔法は好き? あなたもきっと魔法使いになれる」

  • 魔法使いは少女に手帳を渡す

少女は魔法使いにあこがれを抱き、魔法使いは少女に「あなたもなれる」と伝える。これが物語のテーマだ。少女は魔法使いになることを目標にする。魔法で人を幸せにすること、人を助けられる魔法使いになることが少女の大きな目標だ。
また、魔法は人の内に秘められた力の解放であり、誰かに与えられるものではないことも暗示されている。

少女が書いたおまじない:これメチャ重要!
(『まほなれ』シーズン1・第1話より)

セットアップ

物語の主人公やテーマ、目的を示し、主要な登場人物をできれば漏れなく紹介する箇所。

主人公・クルミ(公式サイトより)
  • 模試では優秀な成績(全体1位)だったのに、魔法学校の「マ組」には不合格だった主人公の少女(当然、成長している)

  • (ここでOPが挿入される。主要キャラの紹介を兼ねている)

  • 回想シーン:魔法使いになるため、マ組に合格するために、これまで必死で勉強してきた主人公

  • 普通科に入学することになり落ち込み、嘆き泣く主人公

  • 寮で同室となる同級生に慰められ、気持ちを切り替える

  • 入学式があり、マ組と普通科は別カリキュラムであることが説明される

  • 上級生による新入生歓迎の魔法デモンストレーショが開催される

以上の通り、模試では好成績だったにも関わらず、これまでの努力むなしく希望のマ組には入れなかったことが描かれる。
マ組と普通科は別カリキュラムで、魔法使いになりたいという主人公の願いが大きく遠ざかる。
ここで挫けてしまうのか、それとも夢を追い続けるのか、主人公の今後の態度と行動が問われている。

きっかけ

物語が動き出す特徴的な瞬間のこと。

  • 怪しげなイヌが地面を掘ると黒い煙状のものが立ち上る

  • 上級生がデモンストレーション中の魔法が暴走し、ドラゴン化

  • 逃げ惑う生徒たち

  • 一人の女性の魔法使いが魔法の力でドラゴンを消去する

  • その女性魔法使いが主人公のクラス担任だった

  • 担任は「普通科でもあなたたちには魔法使いになってもらいます」と宣言する

主人公の魔法使いになる夢は破れたかに思われたが、意外な担任の登場でその夢がつながり、次回へと物語は続く。

魅力的な物語になっているか

主人公について

主人公・クルミは「かわいい隣の女の子」タイプ。努力家でもあり、好感度は高い。
新入生歓迎会で魔法が暴走したときには「何とかしなくちゃ」と即座に行動を起こそうとする(しかし、同級生に止められる) 責任感が強く、行動的だ。

「魔法使いになりたい」という幼い頃からの夢を一途に持ち続ける姿勢は、夢を忘れた視聴者の大人たちには少しまぶしすぎる感じだろうか。若い視聴者は強く共感できる主人公かもしれない。

テーマについて

主人公の表面上の目標は魔法使いになること。その夢をかなえるために努力することが物語のテーマで、分類上は「金の羊毛」ジャンルになりそうだ。

その夢のためにマ組に合格することが当面の目標(主人公の"WANT")だったが、真の魔法使いになるためには自身の内面と向き合い、秘められた力を解放する術を学ぶ必要がある(主人公の"NEED")

第1話ではここまで明示されておらず私の推測にはなるが、主人公の人間的な成長をどう描いていくかが、この物語の成否を分けるだろう。

今後の物語の展開予想

ここがポイント:その1

主人公・クルミもだが、模試では上位だったユズ、アスカもマ組ではなく普通科1組に入学している。これは入試本番が不出来だったのではなく、裏に何か隠された事情があると推測される。第1話時点では全くの謎だが、今後のストーリー展開に大きくかかわってくるだろう。

ここがポイント:その2

新入生歓迎イベントでのトラブルを抑えたのは普通科1組の担任・ミナミだったが、その際、手書きで魔法陣を描いて魔法を発動した。
マ組の生徒にとってこれは常識外れの魔法使用だったようで、この世界でいわゆる「ロスト・テクノロジー」的な位置づけにあたるのがこの手書き魔法陣だ。

手書きの魔法陣(『まほなれ』シーズン1・第1話より)

物語の冒頭に登場した魔法使いもそうだったし、幼い頃の主人公・クルミもおそらく手書き魔法陣で魔法を発動させたと思われる(その結果、雨がふった)
魔法手帳を使うか手書きするか、この違いが今後の物語に影響して、おそらく魔法手帳に頼る魔法では対処できない難題が登場すると予想される。

ここがポイント:その3

新入生歓迎イベントでのトラブルの原因を作ったのはイヌに変身していた謎の人物だ。
(公式サイトに行くと因縁ありげなキャラクター名が公表されているが、物語中で直接の言及がないので、ここには挙げない)
この人物が主人公・クルミを名指した上で、今度のトラブル発生の可能性を示唆していた。当面の敵役に相当すると思われるので今後の動向に要注意だ。

以上、『魔法使いになれなかった女の子の話』第1話の内容を詳しく取り上げた。長々と書いてきたが、これで物語の魅力が伝わるのか少し疑問を感じてきた。

さしあたり、この内容に興味を持ち、本作がみなさんの視聴候補にあがれば幸いである。

※公式サイトはこちら


参考情報

本ブログで使用している物語のジャンル名(「金の羊毛」「バディとの友情」など)は下記エントリーで紹介しているので、興味があればご参照ください。

https://note.com/momokaramomota/n/n59516100fd93


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