『魔法使いになれなかった女の子の話』:総評(2024年秋アニメ)
オリジナルアニメに注目して視聴してきた今シーズン。各作品が最終話を迎えているので順次総合評価を投稿していきたい。
本企画の趣旨と評価方針は下記をご参照いただきたい。
(以下、本作のネタバレを含みます)
総合評価
物語の満足度
『魔法使いになれなかった女の子の話』(2024年秋アニメ)
不満:(満足 > 普通 > 不満)
物語全体の感想
今シーズン視聴してきたオリジナルアニメ3作品の中で、第1話時点での期待度が最も高かったのが本作。しかし、すぐに物語が迷走してしまった印象が強い。
引っかかった主な点は、
主人公の行動に一貫性が感じられない
マ組には入れなかったが、担任が「魔法使いになれる」というのだからそれを素直に信じて、一途に古代魔法習得を目指すキャラに設定する方がよかったのではないか重要な場面でのテンポが悪い
重大な事件が起こっている中で、行動にためらう主人公、それを励ます相棒が長々と会話するシーンが目についた。そんな悠長なことやってる場合か?
会話の一部は別の場面で済ませておくような工夫が必要だったと思うし、そもそも主人公と相棒の役割が逆ではないだろうか説明不足の人物が活動しすぎ
第1話から登場している犬に変身する謎の人物の存在と行動理由が不明な状態を解消しないまま、物語に影響を与え過ぎた
第1話でマ素の暴走を引き起こす一方で、終盤では拘束された担任の解放に協力している。意味わからん
などがあげられる。
中間レビューで書いたように、やはり投稿小説が原作だったことで、1クールの長さに当てはめるのに苦労したのだろうか。物語全体の設計が細部まで詰め切れてなかったと感じる。
その他
すっかり忘れていたが本作は、オリジナルアニメ制作プロジェクト「Project ANIMA」出身の作品だった。『サクガン』に続いて残念な結果という評価が定着してしまうのだろうか。それこそ残念だ。
下記の序盤レビューで取り上げたとおり、オリジナルアニメとして放映前の知名度が不利な状況で本作をどうマーケティングして誰に届けたいのかが分からなかったし、実際問題として苦戦していた雰囲気がある。
例えば、「女子の永遠の憧れ“サン宝石”とコラボレーション決定!」というマーケティングを早くから行っていたが、その後、応募締め切りを2ヶ月も延長している。
申込数が期待よりも少なかったのだろうが、そもそも「女子の永遠の憧れ」に魅かれる視聴者がどのくらいいるのだろう。そうしたターゲット層に本作は届いているのだろうか?
アニメは放映が終了しても事業自体は続いていく。このコンテンツで継続的にマネタイズするには何をすべきなのか。それには作品のターゲット層の見極めが第一歩目だと思う。
私の印象では本作は小学生の女子向けだ。そういう意味ではサン宝石とのコラボ自体は悪くないのだろうが、問題は深夜の放送枠では小学生女子に本作を届けるのが極めて難しいと予想されることだ。
そもそも当該市場が超レッドオーシャンということを考慮すると、特にオリジナルアニメである本作の場合は、アニメ製作全体のビジネスモデルを当初から入念に練り込んでおく必要があったように思う。
ともかく、今後はネット配信などを通じて本作に関わる事業は続いていくので、せっかくの貴重なオリジナルアニメだし、関係者にはこれからも頑張ってほしいと思う。
(終)