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続「グロースマインドセット」に気をつけろ:予譲編
キャロル・ドゥエックが「グロースマインドセット」を提唱している著書の原題は"MINDSET The New Psychology of Success"である。"Success"とあるように、人生で成功するための1つの方法論だが、これは本当に人を幸せにするのであろうか?
「グロースマインドセット」の持ち主を歴史上の人物から探す
キャロル・ドゥエックらが提唱した「グロースマインドセット」について簡単にまとめると「目標達成のために努力して能力を伸ばし、例え失敗してもそれを糧に努力を続け、あきらめずに目標達成を目指す思考パターン」と私は理解している。
そう考えたとき、私には一人の歴史上の人物が浮かんできた。司馬遷の『史記』に登場する予譲(よじょう)だ。
中学高校の漢文の授業で『史記』に触れたことがある人は多いと思うが、予譲は史記の「刺客列伝」に登場する。伝わっている予譲の逸話を簡単にまとめると次のとおりだ。(詳しくは上記Wikipediaなどを参照いただきたい)
仕えていた君主が殺され、そのかたき討ちを決意した。相手は大国の君主だった
罪人を装い、敵の住む宮殿の壁塗り役として紛れ込んで機会を伺ったが、見つかって失敗した。このときは許され、逃亡した
次は体に漆を塗って皮膚病患者を装い、炭を飲んで声をつぶし、容貌を変えたため、妻でさえ本人と気づかないまでになった
あるとき友人に「君ほどの人物なら、その敵の家来になることもできる。それから機会を狙えばよいではないか」と助言されたが、「最初から二心をもって仕えることはできない」と答え、あくまで決心を変えなかった
敵の外出を知り、橋の下に潜んで機会を狙ったが、敵の乗った馬が騒いだために発見された。今回は許されず、予譲は自害した
人生の幸せとは
予譲は約2500年前の人物といわれているが、今に伝わる話だけでも固い意思と不屈の精神力、目標達成に向けた努力がよくわかる。これはグロースマインドセットに通じる(もしくは、グロースマインドセットそのもの)と言えるだろう。
しかし、予譲の人生は幸せだったろうか?友人のすすめに従って妥協する生き方もあったのではないか。そうすれば新しい君主の良さに気づき、その能力をもっと生産的な活動に活かせたかもしれない。
一方で、予譲が復讐にこだわり、その決意を変えなかったからこそ、こうした逸話が生まれて現代まで伝わり、予譲の名前は不朽のものとなったとも言える。
どちらが予譲本人にとって良かったか、人によってさまざまな意見があるだろう。結論は読者にまかせたいと思う。