2024年秋アニメ:中間レビュー発表
3つのオリジナルアニメ作品を特に注目して視聴中の今シーズン。前回説明した「ミッドポイント」に3作品とも到達してちょうどよい区切りのようなので、中間レビューといきたい。
(各作品のネタバレを含みます)
※前回の内容はこちら
レビュー方法について
これを書くと、ここで離脱してしまう人が多そうだが、今回のレビュー対象は次の3作品だ。どれもこれも世間的にはあまり話題になってなさそうで、オリジナルアニメ製作のビジネスモデルは瀕死の状態ではないかと思う。
『魔法使いになれなかった女の子の話』(まほなれ)
『メカウデ』
『ネガポジアングラー』(ネガグラ)
評価項目は前回も少し触れたように、
共感できる主人公か、欲求は人間に普遍的な内容か
主人公を含むチームは魅力的か
この先の主人公たちの物語を見届けたいか
の3点としたい。特に「3.この先の物語を見届けたいか」が各作品の総合評価に相当する。
各項目の具体的な評価方法は悩ましいが、結局は私個人の主観であり、仮に5段階/10段階などでランク付けしても、そのランクには何の根拠もないので、今回は対象3作品の相対評価にした。
中間レビューの詳細
これまた前回のエントリーで述べた通り、物語の良し悪しを評価するためには適当に「第X話時点」とするのではなく、ストーリー展開の大きな節目に合わせる必要があると思う。
ここでは物語中盤の「ミッドポイント」と呼ばれる箇所を見極めた上で、その時点での各作品の完成度を評価していく。
共感できる主人公か、欲求は人間に普遍的な内容か
『まほなれ』
マ組には入学できなかった主人公だが、魔法使いになる夢が完全に絶たれたわけではない。にも関わらず「魔法使いは諦めた」となぜか理解不能の決断力がある。
担任に教わった古代魔法が少し使えるのに、いざというときに躊躇してしまう謎の行動を見せる主人公。子供の頃に抱いていた純粋な夢が、成長と共に現実にぶつかる中で色あせて見えることはあると思うが、それでも主人公の考え方やその背景などがうまく伝わらない感じが強い。『メカウデ』
「メカウデ」争奪戦に巻き込まれた形の主人公。何かに対する強い願望を持たない人物像としてスタートしたが、現状では相棒への友情の念はそれなりに強い。
組織同士の抗争の中にあって、子供でもある主人公の個人的行動に限界があるのは仕方ないが、この物語で主人公は何がしたいのか、成し遂げたいことは何かがイマイチ見えてこない。『ネガグラ』
すっかり釣りにハマった主人公。良い道具が欲しいとか、女の子にいいとこ見せたいとか、どこにでもいそうなごく普通の大学生。
余命2年の大問題から目を背けるのも人として「あるある」だが、だからといって、それで視聴者の共感が簡単に得られると思ったら大間違いだ。評価
主人公については低レベルの争いで甲乙付けがたい。評価は私の年齢、性別が影響してしまっていると思う(左ほど高評価)
『ネガグラ』 > 『メカウデ』 > 『まほなれ』
主人公を含むチームは魅力的か
『まほなれ』
冬休みに帰省せず寮に残った1年生メンバーをコアとして、マジ研の先輩2人を含めてチームと見ることができる。
相棒が急に主人公に心を開いたきっかけが思い出せないし、他のメンバーも外見上の特徴以外の内面が見えてこない。『メカウデ』
主人公と同じ学校に転校してきた2人とそのメカウデを含めてチームと見ることができるだろう。バトル中心のストーリーだけに、人間関係の描き方が弱い印象だ。そのため、登場人物同士が助け合う理由に共感しにくい。『ネガグラ』
釣り仲間がチームで、その多くが主人公と同じコンビニで働いている。3作品の中では主人公以外のキャラの描き方が一番丁寧だし、設定も深く検討されている雰囲気がある。
何より、純粋に釣りを楽しみ、その楽しみをチームで分かち合える点は見ていて微笑ましい。評価
物語のテーマやモチーフで有利不利はあるが、チームの魅力度は3作品で大きく差が開いている印象。ここでも悪い意味で下位2作品は甲乙つけがたい。
『ネガグラ』 >> 『まほなれ』 > 『メカウデ』
ミッドポイントで何が起きたか
評価項目の3点目「この先の物語を見届けたいか」を考えるにあたり、各作品のミッドポイントでどんな展開があったか振り返ると、
『まほなれ』:第8話
冬休みの学校で起きたマ素の暴走を主人公と相棒の二人が古代魔法を発動して防ぐ。
一方で、以前から怪しい動きを見せていたマ組担任が主人公たちの担任を拉致監禁する。 これからどうなる?
『メカウデ』:第9話
覚醒暴走した巨大エネルギー源を主人公と仲間たちの協力で再度封印し、敵組織もほぼ壊滅状態で、めでたし、めでたし。
と思ったら、実は影の敵が別にいる!それは味方組織のリーダーだと判明!! これからどうなる?
『ネガグラ』:第9話
コンビニに籠ってみんなで楽しく鍋を囲む日常回。そんな中、釣りにすっかりハマった主人公が「大物を釣りたい」と当面の目標を表明する。絶望からのスタートだった主人公が少しだけ生きる意味を見出せた。
しかし、余命2年の問題は放置したままだ。 これからどうなる?
この先の物語を見届けたいか
『まほなれ』
第1話を見終えた時点で予想していた展開の内、一部の内容は予想通りだったので残りがどうなるかは気になる。
ただし、全体的に物語の設計が甘い印象があるのが難だと思う。あげ足取りになるので一例に留めるが、例えば第1話から登場し、主人公をトラブルに陥れる人物(実は主人公と同姓で因縁ありそう)の行動が中途半端な点などだ。
ここまで見たのだから最後まで見届けるつもりだか、作品の魅力は高くない。
制作陣の主張を汲んで本作をオリジナルアニメとして取り扱ったが、元は小説投稿サイトで連載していた作品だそうなので、そもそも作品に高い完成度を求めるのは酷だったのかもしれない。
『メカウデ』
おそらく、作品のターゲット層と私がかけ離れているため、今回取り上げている3作品の中では見続けるのが一番苦しい。ミッドポイントであるにも関わらず第9話で挫折しそうになった。
物語の行く末をED映像から想像すると、人類とメカウデの共存は難しく、メカウデ達は故郷の世界へ帰還して終わるのかなと思う。そこで描かれる人間とメカウデの友情が演出的には重要点になるだろう。
あと本来の趣旨から脱線してしまうが、物語そのものよりも本作を制作しているのが九州に拠点を置く小規模なアニメスタジオだという点の方が興味ある。
リスクをとってオリジナルアニメを製作したこの事業をどうマネタイズするのか、それは成功するのか動向を注視したい。
『ネガグラ』
ダメ人間だった主人公が思わぬ偶然で良き仲間と出会い、一緒に行動する中で釣りの楽しさに目覚め、ちょっとだけ毎日を楽しく感じ、生きる意味を見出すことができるようになった。
しかし、物語冒頭で語られた「余命2年」は放置したまま。第9話で久しぶりに登場した例の3人組との会話で「困ったこと」としてこの問題が暗示され、いよいよ物語の中で主人公が対峙することになりそうだ。
以前にも述べた通り、主人公は余命2年にしては妙に元気なので、この問題には何か誤解があるか、それほど深刻ではない解決策がありそうに思える。
それを納得する形で視聴者に示した上で、釣りの楽しさを味わう中で前向きに人生を送り始める主人公と仲間たちの行く先を見届けたいと思う。
中間レビューでの総合評価
オリジナル作品に注目し、意気込んで視聴してきた反動か、どうにも辛口の評価が多くなってしまった。
ここであらためて表明しておきたいのは、このご時世でリスクを取ってオリジナルアニメ作品を製作した関係者の心意気に私は敬意を表している。その上で、勝負するなら是非ともよい物語を作ってほしいと願っている。
総合評価
『ネガグラ』 > 『まほなれ』 > 『メカウデ』