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『ガールズバンドクライ』上京する女の子のバンドの話

本作を未視聴の人に作品への関心を喚起し、視聴してもらうためにはこの作品をどのように説明すればよいだろうか。今回は、いわゆる「ログライン」を『ガルクラ』に当てはめるとどうなるかという、ちょっとした言葉のお遊びについて。


「ログライン」とは

私が「ログライン」を知ったのは例によって『SAVE THE CATの法則』だ。主に映画の脚本家がオリジナル作品を売り込むときに「この作品はどんな内容なのか?」を端的に説明する文章をログラインと呼ぶそうだ。

脚本を売り込む相手は映画会社の重役だったり、著名なプロデューサーだったりで、多忙な人ばかりだ。そんな相手に興味を持ってもらうためには、売り込もうとする作品がどんな内容か手短にで、できれば一言で説明する必要がある。なにせ相手は忙しいのだから。
そのためにはログラインを上手く作るのが重要で、これができていれば多忙な相手でもワクワクさせて、脚本を読もうという気にさせることができる、というのが『SAVE THE CATの法則』の著者の主張だ。なるほどね。

で、そのログラインだが、具体例としては、

警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる。『ダイ・ハード』

週末の楽しみに雇ったコールガールに、ビジネスマンは本気で恋をしてしまう。『プリティ・ウーマン』

ブレイク・スナイダー『SAVE THE CATの法則』株式会社フィルムアート社より

という感じ。
良いログラインは次の条件を備えているそうで、

  • 皮肉を含んでいること(これはわかりにくいので、あとで補足する)

  • イメージの広がりを伝えているか、作品の全体像が見えるか、いろいろな可能性を想像させることができるか。

  • どんな客層をターゲットにしているか

  • どのくらいの製作費になりそうか

1番目の「皮肉」が意味曖昧で、上記に引用した著書では「この皮肉がつかみというやつだ」とも書かれている。独自解釈が含まれるが、紹介した先の例では、

  • 妻に会いに来たはずが、テロリストに出くわす

  • 遊びのはずが、本気になる

というのが皮肉にあたる。アクションとリアクションのギャップと表現してもよいだろう。これがあることで人の関心をつかむということらしい。

作品コンセプトの再確認

さて、『ガールズバンドクライ』に話を戻すと、以前のエントリーで紹介した通り、これは下記の骨子で製作する方針が先にあって、物語のコンセプトは後から考案されたものだった。

  • 作品製作の骨子
     音楽アニメであること
     今の時代を反映した物語にすること
     地に足のついたお話にすること

  • 物語のコンセプト
     上京する女の子がバンドをする話

よって、オリジナル作品の脚本を書き、それを売り込むためにログラインを考える状況とは異なる。しかし、最初に述べた通り「どんな作品なのか?」を端的に説明することは作品のアピール手法として有効と思われる。
作品のファンを増やしたいと考えるコアなファンであれば、いつでもおすすめ作品をログラインで説明できるように準備しておくのは必須の心がけともいえるので、ちょっと挑戦してみたい。

『ガルクラ』のログラインを考えてみる

『ガルクラ』のログラインは、まずコンセプトの「上京する女の子がバンドをする話」がベースになるだろう。
ここに皮肉を加え、イメージの広がりを与え、作品の全体像を示し、どんな客層が対象なのか、また製作費はどの程度になりそうなのかを暗示する情報を付加していけばよいわけだ。(最後の製作費は未視聴者へのアピールとは無関係だが)

まず皮肉から考えてみよう。これは主人公(女の子)の当初の上京目的と、その後の行動のギャップから案出できそうだ。

  • 案1:大学受験のために上京した女の子がバンド活動にハマっていく話

ここにイメージの広がりを与えてみよう。登場人物や物語の状況をより具体化する情報を付加してみるのはどうだろうか。

  • 案2:イジメを受けて高校を中退した女の子が、予備校に通うために一人で上京するが、押しメンに出会って、バンド活動にハマっていく話

さらに、主人公の存在感をもう少し肉付けしてみると、

  • 案3:イジメを受けて高校を中退した女の子が、予備校に通うために一人で上京するが、押しメンに出会ってから急に中指を立て始め、バンド活動にハマっていく話

こんな感じだろうか。

『ガールズバンドクライ』(アニメ・シーズン1より)

客層については、アニメだし「年齢を問わず、男性に幅広く」となるだろうから、「バンド」→「ガールズバンド」と明示するのはありそうだ。そしてこれは作品タイトル『ガールズバンドクライ』に入っている。

ということで、ちょっとしたお遊びでログラインを考えてみたのだが、どうしても物語のあらすじっぽい内容になってしまう。そして、これって、いわゆる「なろう系」作品のタイトルと同質なものだなと思う。
なろう系の場合は一人称で書くとそれっぽくなる。次のような感じだ。

『高校を中退して予備校に通うために上京したら、推しメンと運命的に出会ったのでロックバンド(女子)をやることにした』

むーん、何となく面白そうかな? みなさんも興味をひくログラインを考えてみてほしい。では。

おまけ

トゲナシトゲアリの新譜を発売日から早速聞き込んでますが、いいですね。新曲の「闇に溶けてく」「蝶に結いた赤い糸」よき!です。

参考情報

本ブログで使用している物語のジャンル名(「金の羊毛」「バディとの友情」など)は下記エントリーで紹介しているので、興味があればご参照ください。

https://note.com/momokaramomota/n/n59516100fd93


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