『全修。』:第1話レビュー(2025年冬アニメ)
オリジナル作品に注目して視聴中の2025年冬アニメ。繰り返し述べているとおり、今後の成否を分ける第1話の完成度で視聴継続か、それとも1話切りか判断したい。今回は今シーズン一番の期待作『全修。』だ。
(本作第1話のネタバレを含みます)
※私の個人的な判断基準として、オリジナルアニメに与えられたチャンスは第1話のみ。こう考えるに至った経緯は下記をご参照ください。
『全修。』の「創作の地図」
既にレビュー済の2作品(『もめんたりー・リリィ』『空色ユーティリティ』)と同様に、第1話全体の紹介は省略して要点部分のみ記載していく。結論だけ述べると『全修。』は問答無用で見た方がよい。
さて、『全修。』第1話をシナリオ・センター式「創作の地図」に当てはめると、
テーマ
???(後述)
モチーフ
・若手アニメーターが物語世界に入り込む話
・その世界での様々な人との交流
天地人
天:現代(2019年)
地:日本・アニメ制作会社の職場+『滅びゆく物語』の世界
人:
・初監督作品が大ヒットし、天才ともてはやされるアニメーター:主人公
・物語世界の登場人物(主に「ナインソルジャー」の面々)
ルーク:主人公と恋仲になる(?)
ユニオ、メメルン、QJなど
・現実世界での職場の同僚(今後の展開にどこまで関わるか不明)
物語のテーマは?
『全修。』第1話は様々な伏線満載だったと思う。考察厨ではないので細部への深入りはほどほどにするが、物語構成の原則に照らし合わせて考えると、物語序盤で示される内容は、物語終盤の展開と対になっているケースが多い。
それを前提に『全修。』第1話で示されたポイントは、
主人公のセリフ
「全修!」「じゃあ、自分で描く」職場の同僚のセリフ
「お前一人で作ってる気になってんじゃねえよ!」
などだ。これは本作の視聴前予習として下記エントリーにも書いたが、主人公・ナツ子は自分の才能に自信があり、ヒット作を生み出した実績もある。その反動で周囲の人を信頼しておらず、業務を適切に分担することができない。
新作映画のコンテは進んでいないが、主人公・ナツ子は上記欠点のためにコンテを他人に任せることもできない。そして追いつめられた挙句、傷んだ弁当を食べて倒れる。
また、詳細は後述するが、ナツ子は物語世界でも自分の能力を過信し、仲間と協力せずに行動した結果、大きな失敗をすると予想される。
そうした展開予想も踏まえて、本作のテーマは以下の内容になりそうだ。
大きな目的を達成するためには、仲間との協力が大切だ
この裏返しとして「独りよがりの行動は自分も仲間も傷つけてしまう」といった内容が第2話以降(といっても、そんなにすぐではなく物語中盤あたりから)で描かれると予想される。
そして、主人公・ナツ子が失敗に苦悩しながらも、それを乗り越えて成長する姿を描く物語になると思われる。
魅力的な物語になりそうか
第1話は事前に公式が発表していた予告PVや諸情報から予想された通りの内容だった。それでも、ユニークな設定の世界観で展開されたストーリーはとても面白かったし、続きの展開も気になる。
上述の通り、主人公・ナツ子が抱える欠点、克服すべき課題はわかりやす過ぎるかもしれない。
しかし、『全修。』がオリジナルアニメであることを考慮すると、多くの視聴者にとって本作は他に5,6作品は視聴している複数作品の内の1つなので、あまり手の込んだ設定は視聴者のスムーズな理解を妨げる懸念がある。それを考えると、このくらい明確な課題設定が適切だと私は思う。
その上で主人公が成長していく様子を制作陣はどう描いていくのか。ナツ子にどんな障害が立ちはだかり、彼女はそれらをどう乗り越えるのか。かなり練り込まれたストーリー展開が期待されるので、とても楽しみだ。
今後の展開予想
ポイントその1
これも事前予習で書いたように、物語世界に干渉するナツ子の能力は当面は彼女の期待通りの効果を発揮する展開になるだろう。
しかし、それが徐々に期待とのズレが大きくなったり、予想しなかった副作用を生じたりと、新たな課題や障害につながっていく。そうした事態にナツ子はどう対応するのか、様々な展開が考えられそうだ。
ポイントその2
本作の時代設定は2019年の日本のようだ。これは、
ナツ子が食べた弁当(ハマグリが2つ傷んでいた)の日付が「2019年9月13日」
ナツ子の机のメモ「9/23 13:00~ インタビュー」
から間違いないと思うが、なぜ2019年なのか。
第1話の時点で既に過去回想なのか、それとも2019年という年に特別な意味があるのか。2019年と言えば京アニの事件があった年だが、何か関係があるのか。
現時点では全く予想できないが、わざわざこの年と分かるように表現した制作陣の意図が気になる。
ポイントその3
これは大胆な展開予想になるが、主人公・ナツ子が今後直面する物語中最大の障害に関わるキーワードが「全修!」だと思う。
第1話でのナツ子のセリフが自分自身に跳ね返ってくる展開だ。予想としては上記その1で書いたように、ナツ子の物語世界に干渉する能力が想定外の副作用を生じ、街や仲間たちに大きなダメージを与えてしまう。
その結果に絶望するナツ子に追い打ちをかけるように、しゃべるタップがナツ子に「全修!」と言うのだ。
それをきっかけにナツ子は現実世界に引き戻されるか、物語世界でタイムリープする。これがナツ子が対峙する最大の障壁になり、それを乗り越えることが本作のクライマックスになるだろう。
第1話の総合評価
結論:視聴継続
『全修。』第1話は期待通りだった。構成は基本にきわめて忠実で、主人公の明示、主人公が抱える欠点や課題の暗示、世界観の提示、主要な登場人物の紹介ともれなくカバーされている。
その上で内容はとても面白いし、続きも気になる。個人的には今後の展開予想がどこまで当たるかも1つの楽しみだ。
今後は様々な波乱が起きる物語になるだろうが、それでもハッピーエンドになるだろう。それはED映像に示されている通りだ。
そして、ナツ子は物語世界のキャラたちと別れのときがくる。それも劇的に描かれると期待される。重ね重ね、今後が楽しみだ。
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参考:『全修。』公式サイト