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『魔法使いになれなかった女の子の話』2024年秋・オリジナルアニメ:序盤レビュー

今シーズン(2024年秋アニメ)の貴重なオリジナル作品の1つ『まほなれ』、静かなスタートだが個人的にはまずまずという感じ。その概況と共に、今回はこの作品が一体どんな視聴者層をターゲットにしているのか?を軽く取り上げたい。
(これを書いている時点で第4話まで視聴済で、この範囲のネタバレを含みます)


これまでの振り返り

シーズン物のアニメと2時間の映画は本質的に異なる作品体系だと理解しつつも、1つの軸として『SAVE THE CATの法則』が主張する物語構成を参考に、各アニメの構成を確認しながら完成度の評価を試みている。
詳細は下記に書いた通りだ。

独自解釈になるが、本作『まほなれ』は第2話以降、おおよそ次のような展開をたどってきた。

悩みのとき

主人公は前段の「きっかけ」で物語中のアクションを起こす地点まで到達しているが、そこから一歩を踏み出すことに躊躇する箇所。
本作では、

  • マ組ではなく普通科に入ったのに担任から「あなたたちには魔法使いになってもらいます」と宣言されて以降のクラス内での各種エピソード

  • また、マ組しか入れないはずの部活動「マ研」に入る入らないというエピソード

が該当する。

第1ターニングポイント

三幕構成の映画では一幕と二幕の境目となる箇所。ここで物語は古い世界から新しい世界へと移行し、今後の展開に影響を与える事件が起こる。
本作では、

  • 普通科の担任・ミナミの狙いが魔法手帳を使わない「古代魔法」を生徒に習得させることだと明確になるエピソード

  • また、課外授業で生徒に古代魔法の使用を促し、実際に主人公・クルミが古代魔法の発動に成功するエピソード

  • 担任のミナミが学園を離れてしまうエピソード

までが該当するとみている。

サブプロット(Bストーリー)

メインプロット(Aストーリー)と並行するもう1つのエピソード群。ラブストーリーであることが多いとされる。
本作では第5話以降で描かれると予想されるが、主人公・クルミとメインキャラの1人ユズの友情がテーマになるのだろう。

そもそも公式サイトで、

「ふたりなら、きっとできる」

夢に破れた正反対なふたりの少女の
青春*魔法学園ファンタジー!

と明示されているのに、これまでそれらしい展開がなかったので、ここに入れてくるのはほぼ間違いないと思う。

クルミとユズ(公式サイトより)

以上だが、毎期競合するアニメ作品が多い中、1話切りを乗り越えて視聴し続けてくれる人をがっちりつかむためには、もっと劇的な展開があってもよさそうにも思う。
しかし、過去に見てきた諸作品を振り返ると、物語序盤から中盤の第7話あたりまでは、こうした静かな展開が多かったようにも思うので、もう少し見守っておこう。

ターゲットユーザは誰か?

さて、本作について少し気になったのは「関係者はこの作品を誰に見てもらいたいと考えているのだろう?」という点だ。

そもそも、アニメ製作を事業として考えた場合、シーズン物のアニメを製作する時点でターゲティングは済んでいる。つまり下記のユーザ群がターゲットだ。

https://www.dti.co.jp/release/231221.htmlより

膨大な競合作品が存在する状況で、オリジナル作品が知名度の面で非常に不利なことを考えると、例えば最新クールのアニメ作品を「1~2本」しか見ない人に本作を届けるのはほぼ不可能だ。おそらく「3~4本」の候補に入るのも相当困難だろう。
となると、毎期5本以上は最新作品を見る人にしか本作を視聴してもらえる可能性はない。

上記グラフは少し見にくいが、赤色と黄色部分を除いた残りがターゲット層となる。最も多いのが30代男性で、以降僅差だが、20代男性、40代男性、20代女性の順になっている(ちなみに私はこの中には入っていない)

『まほなれ』は外見だけの印象では10代女性にこそ見てほしい作品とも思うが、上記グラフを見る感じではそうしたターゲットに届く可能性は極めて低そうだ。

マーケティング施策は適切か

以上の事実を踏まえた上で、本作のマーケティングでどんな施策が行われているのか、その一端を公式サイトの情報から列挙すると、

「女子の永遠の憧れ“サン宝石”とコラボレーション決定!」だそうだ。ということは、狙いは当然女子? ふーむ

立命館大学の食堂とコラボだそうだ。なぜ立命館?ここだけ? ふーむ

これは面白い。同じ魔法少女物で同シーズンに放映中の作品とのコラボだ。顧客の相互送客というスンポーだな。ふーむ

小説投稿サイトとのコラボ。どれだけのアクティブユーザいるのだろう? ふーむ

女性声優のサイン色紙プレゼント!これはターゲット層とマッチしてそうでわかりやすい。

という感じ。
あらためて見ると色々と頑張ってる。が、できる範囲で、できることをやりました!頑張りました!感が強いと思う。
ともかく貴重なオリジナル作品なので、この先よい物語に仕上がっていくことを期待している。

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