『空色ユーティリティ』：第1話レビュー(2025年冬アニメ)
2025年冬アニメもオリジナル作品に注目して視聴中。以前のエントリーで述べたように、オリジナル作品の成否を分ける第1話の完成度で視聴継続か1話切りかを判断したい。
今回の対象は『空色ユーティリティ』だ。（本作第1話のネタバレを含みます）
※厳しいようだが、オリジナルアニメに与えられたチャンスは第1話のみだ。なぜこう考えるに至ったかの詳細は下記をご参照ください。
『空色ユーティリティ』の「創作の地図」
前回の『もめんたりー・リリィ』と同様に、多くの人に第1話は視聴してほしいと思うので、作品の流れの紹介は省略して要点に切り込んだ部分のみ記載していく。
『空色ユーティリティ』の第1話をシナリオ・センター式「創作の地図」に当てはめると、
テーマ
？？？（後述）
モチーフ
女子高生がゴルフを始める話、ゴルフを通じた様々な人との出会い
天地人
天：現代
地：日本・東京都西部地域
人：
・ゴルフを始めたばかりの女子高生：主人公
・主人公のメンター的な女子高生ゴルフプレイヤー
・その他の女子高生ゴルフプレイヤー(第1話では詳細不明)
物語のテーマは？
物語はテーマに沿って最終話まで展開していくが、途中でそのテーマを声高に主張することはない。シナリオ・センター式の考え方では「起承転結」の「転」の部分でテーマが明示されるそうなので、第1話時点では本作の明確なテーマは不明だが、暗示された情報から読み解くと、
主人公のセリフ
「自分だけの特別を見つけたい」主人公の友人のセリフ
「何か新しいことを始める時期」
「高校3年間は短い」
などが該当するだろうか（記憶に頼っているため、正確な書き起こしではない点はご容赦いただきたい）
モチーフのゴルフと、ゴルフを通じた出会いが今後予想されることを加味すると、本作のテーマは以下の内容が予想される。
仲間との絆は大切だ
成長のためには自分自身と向き合う必要がある
率直な印象として、本作第1話は主人公がゴルフを始めるという以上の展開がなく、そこに特別なメッセージ性は感じられなかった。
魅力的な物語になりそうか
主人公の女子高生が何かのきっかけで新しいことに取り組み始めるのはごくありふれた展開だ。主人公・美波が「村人Aで終わりたくない」という気持ちはわかるが、見つけた目標がなぜゴルフなのかが分かりにくかった。
例えば、メンター的な立ち位置の先輩・遥のスイングやショットへの憧れをもっと劇的に描くなどの工夫がほしかった気がする。その点が曖昧なため、なぜゴルフを選んだのか、ゴルフでどこまで目指したいのかなどが視聴者として理解できず、主人公への共感を強く引き出せてない印象だ。
（『空色ユーティリティ』公式サイトより）
また、第1話全体として、物語の最初期から丁寧に順を追いすぎているようにも感じる。極端に言えば「主人公に起きたことを順番に描きました」というだけ。
今後登場してくる新たな仲間(彩花)や、ゴルフ練習場のベテランゴルファーの役割なども第1話時点では不明で、今後それぞれの特徴が描かれるのだろうが、見ている側とすれば正直それらを待っていられない。
繰り返し述べているように新作アニメの競争環境は厳しく、今シーズンは約70作品もが放映される大激戦だ。
その中で知名度に劣るオリジナル作品であるからには第1話で視聴者の関心を強固につかむことが必須だ。その実現にはもっとストーリー展開の工夫が必要だったと思う。
今後の展開予想
ポイントその１
主人公は運動神経イマイチで、校内のスポーツ系部活動はどれも合わなかったことが第1話で描かれた。それがゴルフだとどうなるのか？
ゴルフ向きの特別な才能があるのか、それとも良い指導者に出会うのか。とにかく、初心者が徐々に成長していくにしても、下手なゴルフを見せる展開が長ければ長いほど視聴者の関心は離れてしまう懸念がある。
第1話では主人公とゴルフとの出会いを順を追って丁寧に描き過ぎだったと感じるが、今後の展開も同じノリだと作品としては苦戦すると思う。
ポイントその２
本作は公式サイトで「スポーツコメディ」と謳われている。また、女子高生モノに似つかわしくないベテランゴルファーを3人も配役していることから、単純にゴルフをプレーするだけの展開ではない可能性がありそうだ。
上記その１で書いたパターンに陥らないよう、日常風景を中心に登場人物たちの世代を超えた会話の妙を描けると面白い作品になるかもしれない。
第1話の総合評価
結論：1話切り
私はゴルフをやったことがないし、興味もない。そもそも本作のモチーフが私には合わないし、第1話を見た限りでは今後の展開にも興味をひかれない。よって、制作関係者には申し訳ないが、本作は1話切りとする。
「ゴルフに関心ないなら、何でわざわざこの作品を取り上げたのか？」と突っ込まれそうなので一応補足すると、本作が貴重なオリジナルアニメだからだ。
アニメファンなら認識していると思うが、毎期大量に放映される諸作品の中でオリジナルアニメは貴重な存在だ。オリジナル作品を生み出す関係者の努力には敬意を持っているし、できることなら成功して欲しいと願っている。
そして、オリジナル作品が成功するには第1話で視聴者の関心をつかむことが絶対条件だと私は考えているため本作を取り上げた。これは繰り返し説明してきたとおりだ。
さて、今後本作の放映が進むにつれて好評を得て、最終的に名作だとなった場合には、この投稿を振り返って私が第1話で見落としていた点、見抜けなかった点は何か、第2話以降でどんな展開を辿ったのかなどを検証してみたい。
以上、『空色ユーティリティ』の第1話をレビューした。私の好みには合いそうにないが、貴重なオリジナル作品だし、特にゴルフ経験者には強く共感できる部分があるはずだ。そうした視聴者を獲得して、本作がコンテンツとして成功することを願っている。
※参考：『空色ユーティリティ』公式サイト