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『メカウデ』2024年秋・オリジナルアニメ:序盤レビュー
今シーズン(2024年秋アニメ)は特にオリジナル作品に注目して3つの作品を取り上げてきたが、物語の完成度について徐々に明暗が分かれつつあると感じている。その中でもこのままでは先行き心配なのが『メカウデ』だと思う。この先どうすればよいのだろうか?
(これを書いている時点で第4話まで視聴済)
「クリシェ」との戦い
前回も触れたように、『メカウデ』では意思を持つ機械と人間との友情がテーマの1つに位置付けられていると見込まれる。これは過去に様々な作品で描かれてきた内容でもある。
例えば、『ターミネーター2』『トランスフォーマー』など(本気で探せば膨大な作品リストになりそう)で、こうした有名作と「似ているけど違う」表現をどこまで追求できるのかが作品の評価を分けると思う。
ここで独創性を発揮できず、単に「似ている」だけになってしまうのが「クリシェ」だ。もともとクリシェは音楽用語らしいが、映画の脚本術の本を読んでいると頻繁に目にする用語でもある。
『メカウデ』では「ロボットと人間の友情」以外にも、
主要キャラが記憶を失っている
主要キャラが転校してきて同じクラスになる
封印された「大いなる力」の争奪
家族の仇を探す
死んだはずの家族が生きている
信頼していた人物が敵側になる
などなど、「前にもどっかで見たことがあるぞ、、、」という設定が多い印象だ。
おそらく、こうした表面上の設定はあらゆるパターンが過去の作品群に出尽くしているとも思われ、個々の設定の多様さや奇抜さではなく、それらを詳細なストーリーとして物語にどう組み込んでいくかで差異化するしかないのだと思う(素人意見ですが)
オリジナル作品創作の難しさ
ここから少し微妙な内容になりそうで「最初に言っておく!」なのだが、本作に関わるスタッフ(特に特定の個人)を批判するつもりは全くない。私は優れた物語の創作がいかに難しいかという話をしたいだけだ。
で、参考図書によると、例えばここにクラッシック音楽が大好きな人がいて、
「これまでに多数の交響曲を繰り返し聴いてきたし、俺はピアノの演奏もできる。よし、いっちょ作曲でもしてみるか」
とはならないし、「そんなことで名曲を作り上げることなどできない」と述べた後で、「でも、これと同じことが(映画の)脚本では多い」と指摘して次のようなことを書いている。
技術的なことについて言わせてもらうと、未熟な脚本家が技巧だと思いこんでいるものは、それまでに出会った小説や映画や演劇から知らず識らず吸収したストーリーの諸要素にすぎない。そして、それまでの読書や鑑賞から作りあげたモデルに照らし合わせて、試行錯誤しながら書いているわけだ。訓練を受けていない書き手はそれを「直感」と呼ぶが、実は単なる癖でしかなく、むしろ大きな妨げになっている。彼らは頭のなかの手本を真似るか、自分が前衛作家だと思いこんで、それに抗う。けれども、無意識のうちに繰り返して根づいたものに、気まぐれに頼ったり刃向かったりしても、そんなものはとうてい技術とは言えず、さまざまな商業映画や芸術映画に見られるクリシェが詰まった脚本ができあがるだけだ。
いや~、実に手厳しい。
ではどうすればよいのか? 上記の参考図書では技術を専門的に学べる施設を米国も欧州も充実させる必要があるという趣旨のことを書いている。
それにしても、優れた脚本=物語を書くための簡単な答えはないわけで、専門技術を学びつつ、実際に創作し、失敗し、改善していく地道な努力しかないのだろう。
一方で個人的に少し疑問に思うのは、
でも、『なろう』とか、素人が適当に書いてんじゃん!
それで人気になる作品あるじゃん!
という点だ。あえて極端な表現をしているが「なろう系」特有の世界というのはありそうで、既にどこかで語られているとも思うが、ちょっと考えて別のエントリーを上げるかもしれないし、あげないかもしれない(適当)
『メカウデ』はどうすればいい?
こんなところで素人1人が書いていてもどうにもならないし、現時点(2024年10月末)で既に最終話までの展開も決まっているだろうから手遅れなのだが、個人的にこの感想を後から振り返るために書いてみる。
少し伝わりにくい例になると思うが、物語の主要人物(特に主人公)はとても緻密に設計されている例が目につく。
個人的には上記にあげた『ガルパン』が一例だが、他にも『鬼滅の刃』の煉獄さん(これは新エントリーを現在下書き中)もそうで、キャラクターは物語に登場する以前のバックストーリーを持っており、ここを詳細に設定しておくのがかなり重要らしい。
そして、そのバックストーリーを発端とするキャラクターの「ゴースト」があり、登場人物はゴーストに基づいて形成された価値観・世界観にそって物語で行動していく(興味がある方は上記エントリーをご参照いただきたい)
本作でも主人公・ヒカルは「踏み出すなら今!」という広告への反応だったり、妊婦さんに素直に席を譲れなかったりと、何か事情がありそうなのだが、それがここまでのストーリーでは十分に描かれてない。
これはメインキャラのアキも同じで、家族の写真を見て深刻な顔をするだけでは不足で、もっと色々と見せるべきことがあると思う。
まぁ、素人の戯言なのでこの程度にして、ともかくも今季の貴重なオリジナル作品なので、ここから巻き返す展開を期待したい。
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