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2024年秋アニメ:オリジナル作品を応援する(その2)

急にオリジナルアニメ作品の貴重さに気づき、微力ながら応援する企画を進行中。ただ、応援するにしても良いものは良い、イマイチなものはイマイチと主張するには評価基準を明確にする必要があると思う。それを事前に言語化しておきたい。


作品に望むもの

私にとってアニメ作品の視聴はストーリーテリングの勉強材料の側面が大きい。見る人を引きつけ、夢中にさせる物語はどんな内容なのか? そこに制作者はどんな技巧を凝らしているのか学ぶのが目的だ。

そのため、私が作品を評価するポイントは何よりも優れた物語になっているかどうかだ。
とは言っても優れた物語とはいったい何か? 固定的な定義は存在しないので、ここは業界の識者の知恵に従う。

まず、人間が本能的に好む物語には一定の典型的な型がある。例えば、

  • 物語の主人公は共感できる人物であること(共感が重要で、好感である必要はない)

  • 主人公は人間に普遍的な根源的欲求を持っていること

  • その主人公が葛藤の末に成長し、望みを叶えること

  • その過程で主人公に敵対する悪人は悪人なりの報いを受けること

などだ。こうしたストーリーテリングの原則を踏まえながら、他には見られない独創性を備えていることが作品にとって重要だと考えている。

あまり重視しないこと

一方で、以下の内容は私個人としては重視しない。もちろんこれらが優れていれば加点要素にはなるが、仮に平凡だったり、平均水準以下であっても減点要素にはしない。

  • キャラデザや声優が好みかどうか

    • 例えば『ガールズバンドクライ』のすばるの棒セリフには当初相当な違和感を覚えたが、それと優れた物語かどうかは無関係だ

  • 音楽や背景が美しいかどうか

    • 素人意見だが、これは時間と資金が豊富にあればどうにでもなる領域だと思っている

  • 作画レベルが安定しているか

    • 『Wake Up, Girls!』の作画に耐えられた私に敵はない

  • 動画がヌルヌル動くか

    • これも資金力次第だと思う。もちろん、この領域で勝負する作品があるのは構わないが、その出来ばえと物語の完成度は無関係だと私は考える

このような基準になるのは、私がこれまでの人生でアニメよりも小説をエンタメ対象として消費してきた期間が長いことが大きいかもしれない。

以上を踏まえた上で、今シーズンの(2024年秋アニメ)作品を応援目的に評価していきたい。現時点で私が視聴しているのは以下の3作品だ。

正直なところ、私はターゲット層から外れていると思うものもあるが、先入観抜きでそれぞれの物語を見ていくつもりだ。

「1話切り」を乗り越えろ

前回、激しい業界競争の中でオリジナル作品が不利な状況にあること、まず越えるべき壁は視聴者の「0話切り」であることを取り上げた。

オリジナル作品が直面する次の壁は「1話切り」だ。2話切り、3話切りでも同じことだが、競合作品が多く、気まぐれな視聴者の関心をつかむためには何と言っても第1話が重要だ。

例によって『SAVE THE CATの法則』によると2時間の映画の場合、以下の内容の内、「セットアップ」までを物語の開始10分で説明し尽くす必要があると主張している。(「きっかけ」を含めると約12分)

  • オープニングイメージ
    作品のスタイル、雰囲気、ジャンル、スケールを表現する箇所。
    ここで視聴者に対して「これはどんな作品なのか」を示し、視聴者の期待感と作品の実態のズレをなくす必要がある。

  • テーマの提示
    この物語は何をテーマに展開していくのかを表現する箇所。
    物語のテーマを念頭に置いて視聴者はこの先の物語を追いかけていく。ここも視聴者の期待感と作品実態がズレてしまうことのない表現が求められる。

  • セットアップ
    物語の主人公やテーマ、目的を示し、主要な登場人物をできれば漏れなく紹介する箇所。(直接紹介できない場合でも、存在を暗示するのが望ましいとされる)
    ここで主人公に欠けているものや、抱えている課題を示し、特に主人公が最終的に成長する前の状態を示しておくことが重要になる。

  • きっかけ
    物語が動き出す特徴的な瞬間のこと。
    物語はこれを境に大きな展開を始める。何らかの出来事が起こり、主人公が行動を始める(始めるしかなくなる)。ここで視聴者の関心をつかむことが必須で、視聴者に「この先どうなるのか知りたい」と思わせることが重要になる。

「2時間映画の冒頭10分~12分」は1クールのアニメ作品に置き換えるとほぼ第1話で使える時間に相当する。
この持ち時間で上記の内容を説明し、視聴者の関心をつかむ(逆にターゲット外の視聴者にはそれを理解してもらい、穏やかな離脱を促し、アンチ化を防止する)必要がある。

参考に以前紹介した『リコリス・リコイル』のケースを参照いただきたい。『リコリコ』は上記の要求を満たしながら物語開始直後のストーリーを展開しているが、セットアップの完了まで約4分という驚異的な密度になっている!(時間が短ければよいわけではないが)

さて、ここから現在視聴中の作品の第1話評価を行っていこうと思うが、まず本エントリーは評価基準の明示に留めて、各作品の個別評価は別エントリーとしたい。
(少々お待ちいただき、引き続きお付き合いくだされば幸いです)

※追記:ということで、各作品の第1話評価を書き終えました。


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