心だけが決まっている
仕事を辞める。その先のことは、後で考える。新卒から十数年間、転職はしながらもどこかしらの企業に所属して積んできたキャリアに初めて穴をあけるのだ。
会社に申し入れる時期が近づいてきていて、本当にいいのか逡巡はする。ネガティブな気持ちが戸惑わせて引き留めようとするけど、それでも旅立ちたい。
あまり人には話せない。具体的なキャリアプランもない。なんとなく辞めてみたいし、予定のない暮らしをしたいし、家族がみんな健康な今しか叶わない気がする、なんて自分以外に理解を得られる気がしない。
もちろんずっと無職でいたいわけではなくて。なんとなく始めたキャリアはなんとなく終わらせて、納得のいく続きを探したいのだ。そのための充電が必要なときがきただけ。
こんなことを考えてしまうのはわたしだけなのか。わたしがマイノリティなのか。社会不適合者なのでは。なんて素で考え込むくらいにはネガティブ志向だけど、「キャリアブレイク」という言葉を知ってから随分と気持ちが変わった。
次に進むための充電期間。成長するためのモラトリアム。弱者になるわけじゃない。ましてや挫折ではない。むしろ次に進む勇気を出しただけ。休みたいのではなくて、深い呼吸がしたいだけ。
いまは早くブレイクを過ごしたくなっている。いいね素敵だねって言ってくれる家族にも背中を押してもらいながら。あとは時期をみて退職を申し入れるだけ…頭の中では何十回もシミュレーションをしてしまうけれど。
なんとなく風に吹かれて生きることを肯定して欲しいと願っていた。ここまで真面目に生きてきた自分のことを、労ってあげたいと思うようになったのは大人になったからかもしれない。貧しさを恐れて生きていたけど、豊かさの基準値も随分変化したように思う。だから変わっていく勇気が湧いてきた。
変化はこわい。わたしは人一倍こわがりで、慎重で、最初の一歩がとことん苦手。でも、踏み出した後は意外と流れを見つけて進んでいけることも知っている。きっとなんとかなる。わたしが憧れる人たちもみんな「なんとかなるもんだよ」って言う。わたしも言えるようになりたい。
いまは心だけが決まっている。行動が追い付いていないけど。そのときはもうすぐくる。大丈夫。なんとかなる。なんとかできるわたしで生きたい。