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旅芝居のトンビたち レジェンドたちの『銀座のトンビ』

先日の『花道一人旅』話の続き。
86歳の旅芝居レジェンドオブレジェンドの話をしたい。
先日尊敬する女史から久しぶりに連絡が来た。
その中で、彼、86歳の彼の次回公演の話が出た。
数々のジイサン役者たち、準ジイサン役者たちに想いを馳せた。
そして思い出した。
この人も〝あの歌〟、カバーしていたんだよなあ、って。
 
『銀座のトンビ』
歌手で作曲家でもある杉本真人(すぎもとまさと)の曲だ。
最後の方のちあきなおみの作曲をしていた人。
だいぶ前のヒット曲、
歳をとってから墓の前で親不孝を詫びるという、
THE素敵にあざとい『吾亦紅』で紅白にも出場、
その後美輪明宏がヨイトマケで出場するまで最年長記録だった人。
THEグラサンちょいワルオヤジみたいな彼が歌う同曲は
ヤンチャしてきた男が残りの人生を想い、
「あと何年だとしても」「俺は俺としてお祭りやってやるぜ」っていう内容を軽快さと哀愁のTHE杉本メロディーで飾ったnumber。
リリースされるやいなや、まー! もー! ほんと!旅役者たちの間で広まった。
踊られるようになった歌われるようになった。
どこでも誰でも踊る。
たまに意味不明にめっちゃ若い兄ちゃんとかも踊る。なんでやねん。
 
件のジイサンver.は3年前にリリースされたらしい。
ってことは83歳くらいのとき?
聴いてみた。よれよれである、豪快である。
メロディーとかリズムとかもうそういうレベルの話じゃない。
チョイ悪とかすら通り越している。
トンビじゃない。ピーヒョロじゃない。鳥でもない。
敢えて例えるならやっぱり恵比寿様みたい(過去記事
恵比寿様? しっくりこない。〝えべっさん〟だ。
not 銀座のトンビ、but 九州のえべっさん。
【趣味・芝居、酒、女】
意味がわからないけれどワッショイ。
ワッショイでもない、「わぁぁっしょォい」だ。
めっちゃ笑って涙出た鼻水も出た。
 
同じ九州役者では5年前の夏に亡くなったベテラン(過去記事)も、
同曲を自身のテーマ曲のようにしていた。
「この劇場が入ってるビルの専用口から入ったらガードマンに止められました。
 ヤクザじゃないですよヤクシャですよ、けけけけけけ」
亡くなる前、ちょっとした御恩返し? 何年ぶりのご縁繋ぎ? が出来たこともあって、
忘れられない役者のひとりでもあるのだが、
この曲=この人という旅芝居ファンもきっと少なくないと思う。
 
なんだ私は。いつからオジサン好きを通り越してジイサン好きになったのだ。元々か。
 
86歳のえべっさんver.を聴いたあとに、原曲、杉本ver.を改めて聴いてみた
「ん?」
物足りない。
物足りないも何もこの人の曲だから!
この人がリリースした曲だってば!
てか、この人ももう70過ぎておられるし!
でも「わぁぁっしょォい」を聴いちまうと、
氏のそれはお洒落にすら聴こえてしまってまだまだ色々イケそう大丈夫。
オマケにちょいワルにーちゃん役者たちがよく踊る半田浩二もこの曲をカバーしていたと知り、聴いてみた。軽すぎて悪くもなんともなかった。全然無頼に生きてない。
 
なんだよ、【趣味・芝居、酒、女】って。
もう一個付くんちゃうかな。
【趣味・芝居、酒、金、女・男】?
悪い意味だけじゃない、いい意味だけでもないかもだけど。
違う、趣味じゃない、
【生業、芝居、酒、金、女・男】
職業としての旅役者。
何度も言う、もう一度言う。
私はそれやそれらをただ肯定だけはしない、
けれど、否定もしない。
変わらねばならぬこと、見直さねばならないこと、少なくない、めっちゃ少なくない。
許せないこと許してはならないことは公にも私的にも、めっちゃある。
でも、先の記事の『花道一人旅』を「これぞ旅芝居な1曲」と書いたように、
このピーヒョロなお祭りと哀愁の1曲もまた「THE 旅芝居」な曲だとずっと思っているし、やはり思う。
 
わぁぁっしょォい!


 
*
とあるレジェンドクラスのそんな素敵(?)エピソードを人からきき、本人に確認したら聞いた話以上だった、みたいなことがあった最近。
 

今日はまたのど自慢について書こうかとも思ったけれどつぶやきにしました。


文中、銀座のトンビについての過去記事などオマケ&整理。



以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
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ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。

大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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