とある劇団の「陰陽師」~旅芝居の序列の話とこだわりの話とあの嬉しそうなお顔のことなど~
ある劇団で新しいラストショーで
(※舞踊ショーの最後にやる全員でのお芝居仕立ての創作ショーやみんなで踊るショーのこと)
『陰陽師』が演じられることになりました。
座長と花形さんが陰陽師姿で敵役の化け物的なのを倒すというショー。
別に特段凝った内容ではなかったのだけれど
ほら、あの衣装、あの陰陽師コスプレって、やってみたいやん? 映えるやん?
ということでお客さんもやんややんや拍手喝采だったのですが。
ひとり。あの映える陰陽師の恰好を出来なかったひとがいる。
敵役の副座長です。
動物の毛皮みたいな衣装で鬼っぽい化粧でした。
いつも敵役にまわるこの人はこういった役がとても似合う、
タッパもあるし、迫力が違う。やっぱ、ええなあ。
けど、着たかったんやないかな、あの衣装を。
と、思ったのは数か月前のことを思い出して、です。
開演前のお客さんお出迎えの時間、
劇団の役者たちが衣装のパンフレットを真剣に見ていた・・・という光景に出くわしたのです。
「どの衣装を買うか」と楽しそうに相談しておられた訳なんですが。
副座長も嬉しそうにみていました。嬉しそうに真剣に。
で、一緒に交じって世間話しているうちに
「お前、新感線(劇団☆新感線)追っかけてたんか。
ほなビデオとかパンフレットとかくれ。俺研究するわ」
うん、えーよー。と当時いっぱいあったものをあげることにもなって。
当時その劇団にゲスト出演していた私のお気に入りのフリー氏と一緒に
陰陽師の印の結び方などをわいわい話したりしていたのですが。
ふたを開けたら、敵役やった(笑)
あ、そっか。でも、そうよな。
旅芝居の芝居やこういった創作ショーでは
よくもわるくも序列順(座長など偉い人が主役や目立つ役)。
毎日絶対そうとは限りませんがだいたいそうなります。
創作ラストショー陰陽師の場合は
副座長は見た目的にもニンとしても敵役ぴったりやから
「作品」としてそれでええねんけど
たまにニンよりも序列が優先されることも多かったりして
元々「役を似合う役者にあてはめ稽古され完成された演劇」(商業演劇や小劇場など)
が好きな私はこの劇団に限らず旅芝居をみていて「ん?」「うーん」となることも少なくなかった。
でも、それが旅芝居だ、ということもある。よくもわるくも。
さて、しかし。
同じ月の別の日。
驚いた。と、同時に、「うわー」と嬉しくなった。
舞踊ショー。
創作ショーではなく個人舞踊と呼ばれる役者それぞれがひとりで
自分の好きな曲合う曲で踊る持ち時間の際に。
大川栄策の曲のイントロ・・・
とはいえコテコテ演歌じゃなくちょっとムーディーで色っぽい曲の
(※でも曲の内容は別に陰陽師っぽくもなんでもないねんけど)
イントロが流れてきて、出てきた彼は狩衣に立烏帽子に袴、扇。えー!
しずかに、しずかに、舞われました。
「びっくりした!」
「あ、そ」
「似合ってた!」
「(ニタリ)あ、さよかー」
「座長より似合ってたで」
「それはシーッや!」
そしてその後・・・
我がお気に入りのフリー氏も陰陽師なお姿で個人舞踊の作品を作られ。
そりゃもうまあ御顔的に似合うの似合わないのったらない話で。
選曲もそりゃあまあもう・・・で。
「ぎゃー」を通り越して絶句してしまうものが出来上がったのですが。
これ、また毎月ご披露しているようです。ああ、また観れたらいいな、あたったらいいないつか。
先週のテレビドラマ「陰陽師」は原作ファンからしたら「????!」やったけど。
ことあるごとに、ふ、と思い出す、旅芝居の陰陽師の思い出です。