花魁の目~旅芝居の舞台には全部出る、という話~
旅芝居・大衆演劇は役者の人生が舞台から透けて見えてしまいます。
例え見たくなくても、透けて、滲んで、漏れて、見えてしまう。
ずっとずっと追ってきて、観て来て、本当に本当に思うことです。
だから面倒くさくて、だから気持ち悪くて、でもだから面白い。え、面白い? うーん、でも、きっと面白い。
だから、本当に嫌でたまらないけれど、足が向かないけれど、まだ離れていないんだなあ私は、と思ったりします。
で、だから、「人間」がこんなにうざいけどきもいけど面白く愛しいと思うようになったんだ、と。
私は、人間が、面白い…うーん、面白いことないけど、興味が尽きなくて仕方がないんだな、と。
で、観ている人たちがハマってしまうのめり込んでしまう距離感わかんなくなってしまうのだろうな、と。
…ってのはずっとずっとずっと言うてきていることなので
そして、カシコな人たちに嫌われたり遠ざかられたりしてしまうのですが。
(たぶんそういう人たちもこの「透け」「滲み」が(見たくないけど)見えてしまっているのだろうな。
だから私にキレたり私を否定したりすることで自分を守ろうとしているんだろうな、とも)
さて、そんな長い前置きをまたして、今日は「花魁」の話をしようかな。
旅芝居観劇初心者の頃観た「彼」。
全然うまくない人でした(すみません)
けれど関西だったり地方だったりで人気がある座長さんでした。
「あの人は人柄がいいのよー」と関西のおばさまたちに人気でした。
そう、口癖のように言う。「僕は、うちの劇団は、がんばることしか出来ません」「がんばるぞー!おー!」
自分自身にも若い座員にもはっぱをかける。
そして頭をこすりつけるようにお辞儀をしたり客席を巻き込む舞台(客席におりたり)をする。
いっとき、女形のすそ引きを一番前のお客さんの顔にかけて隠す…みたいな笑いの取り方もしていた。
その数日後「お客様の方からあれは下品だとお叱りを受けました。本当に申し訳ありません!!僕の未熟さから!!!!」
でも私は観るうちに気付くようになりました、嫌でも見えてきたのです、
彼が「一生懸命!!!いいひと!!!」を作っていることが。
全員での挨拶の際の兄弟座長のいじり方、若手のいじり方、
人気が出た子をことさらいじる、芸のあるフリーの役者のファンにわざとらしく嫌味を言う。
そして、ふとしたときの、はっとするような冷たいいやな目(笑)
そんな彼が座員と共にラストショー(全員でやる創作舞踊みたいの)の際に花魁道中をした。
客席後ろから道中をする。高下駄で。若い者に手をひかせて。しずしずと。その際。
若い子がちょっとつんのめりそうになった。瞬間!の目!
その後その目は変わらず。恰好は花魁なのに、
ふとした瞬間、「ちっ」「そっち」「お前俺ケガさせたらどうなると思ってる?!」という目!
見えてしまったのですよねえ。。。
もちろん、花魁道中はすごくすごく大変なショーです。頭が下がります。
私も旅芝居観劇初心者の頃こういったものが観られて嬉しかった。ああ、杉浦日向子の世界や(そんなええもんちゃう?笑)
でもね。でもね。このとき、そこにいたのは花魁じゃなかったんだよね。花魁の姿をしたおじさんだったのだよね。
ああ、残念。そして怖い。
なにが? うん、目が怖かった。
でもそれ以上に「すべて出る」舞台の怖さ、そして面白さ(ああ、私も性格悪いなあ)が怖かったんだ。
先日、ラストショーで花魁道中をやっている劇団の舞台(※写真はそれ)を観て、ふと思い出した昔の話。