むきだしの「私」/これが旅芝居、という劇団に出会った 劇団あやめ
固定観念があった観る前から。
「合わないだろう私には」
勝手な思い込みからの決めつけだ。
≪衣裳が豪華、ド派手な舞台、女の子ばかり、写真撮影アウト≫
さらに「自称観る目ある系」「意識高い系ブロガー」みたいのが絶賛する。
その熱が高いほどこちらは冷める。
「「この劇団を観てる(褒めてる)自分が好き」なだけやん、自分に酔ってるだけやん」
でも。昨年末、私は出会った、笑った泣いた。
目の前で繰り広げられているのはまさに「熱と汗」の旅芝居だったから。
その日私はなんだか家に居たくない気分だった。
仕事がたまっていないと言うと嘘だ、年末進行、一番ヤバい。
でも夜突然出たくなり、ふらりと外へ。
興味はないけれどしばらくぶりの劇場にでも行こう。
しかし足を運ぶと休演、ありえない。
仕方なくそこから近い劇場へと足を運んだ。
乗っていたのが「かの劇団」だった。
劇場の戸をあけると、あれ、芝居終わりの休憩中みたい。
木戸でママがぽつりと言う、「夜はきついわ」勿論、集客のことである。
「そうなん? 2か月公演やからかなあ?」
「いやー、昨日は大入り3つやってんけどな、座長のお祭りやったし」
ふーん&うーん。「ところで2月は誰が乗るん?」
適当な会話をして入るとちょうど芝居終わりの休憩中で客は5人だった。お、おぉ……。
客席ではお客さんが違う劇団の話をしてた。お、おぉー……。
舞踊ショーが始まる。
前方客席のひとりが爆音手拍子&役者もそちらばかりに目線を送る。
あー、劇団付のファンなんやなー、熱心な応援さんなんやろうなー、なんて。
私にもそんな時代もあーったねと、なんて苦笑い。
舞踊ショーのトップは『河内おとこ節』。わはは。
ひとり、異様にうまい人が居て。私はそちらにばかり目が行った。けれど。けれど。
さらに続く舞踊ショーは、比較的、他の劇団と比べて、昭和歌謡のオンパレード。
うん、わしは好き、でも、これ、大丈夫かなあ、なんて。
出てくる座員は女の子ばっか、しかも皆座長と同じ顔(化粧)、おいおい、おいおい。
が、なぜだ、自然と、私の、いや、私も手拍子と拍手が大きくなった、
嘘、伝われ伝われ、って祈るように大きくなった。気付けば泣いていた。
そして終演後、私は(数少ない。笑)旅芝居絡みの友人らに連絡をしていたのだ。
劇場近くの公園から。「観て」「観よ」「すごいいい」
(ちなみにそうしてその後本当に関東大衆演劇仲間が遠征に来た!)
確かに派手だった。
噂の某●●歌舞伎のオマージュ?!?!マントも観られたし、
特別公演ではよりド派手にド派手に、が繰り広げられている&いたとも聞く。
でも私が感じたのは、そうだけど、そうじゃなくて……。
思った。
「この人たちのカラーや特色は〝それ〟だ。
けれど、でもこの人たちは、極論、ド派手を着たりド派手をやらなかったりしても、
充分十二分に通用し、魅せられる〝力〟を持つメンバーなんじゃないか」
なんでだろう。なんでそんな風に思ったのだろう。しかも、涙まで。
超下手な言い方をしてしまうと、「気持ち」を感じたからじゃないか。
座長と、見事に見事な女性の座員たち。皆、皆が、舞踊の出番で、「本気」を見せてくる。
うん、ううん、どの劇団も役者も勿論きっと本気だ、仕事だ。
でもこの劇団のメンバーたちの舞台からは過剰なまでにその「気持ち」と「本気」が見える。
滲み、漏れ、飛んでくる飛ばしてくる!
いつも連絡してくる「(自称)観る目がある」氏は言う。
「座長は力み過ぎなんだよ。女ばかりの劇団って言うのはエロオヤジな俺には嬉しいけれど」確かにそうかもしれない。
立ちの舞踊で出てきた座長。曲は中条きよしの『うそ』。
ああ私、彼を観るの、何年振りだ。あの頃からの「滲み」がくっきり、たっぷり!
そないグワアアアな顔で。そないぐわあああなきっぱりをせんでええがな。
「僕~は着物が好きだよと」で、着物を握り締める、グゥゥゥッ。
でもね、そのぐわああ、ぐぅぅ、が、「変」ではない。
曲の表現として正しいかはしらない。
でもそれが「彼」の「型」になっているようで、いや、もう彼自身なのだ、舞台が、舞踊が。
あの頃はもっと細くて尖っていた。体形も、きっと心も。
あの頃だから飛んできた、刺さるほど、痛いほど。
「俺はやりたいことがある、これじゃない、ここじゃない」。
ラストショーや組ショーでもちょっと浮いていた、見た目が、なにより「自意識」が。
そして今。正直観ていて何度か噴き出した。独特の「型」に。
バカにしての笑いじゃない。言葉にするなら、うれしさ、たのしさ、うん、嬉しさ。
「「あなた自身」という芸(舞台)が見られてうれしい」「今」。
そんな座長を筆頭に皆が「私!」という芸を舞台を矜持を持って見せてくれる、
彼のことを心から慕う様が舞台から滲み漏れまくる座員たちが、皆、皆がそれぞれの舞台から。
気持ち、仲良し感、結束力、と溢れる矜持。「これが私たちの劇団です、みて!」
楽しいひばりソングをひばりと同様くらい明るく歌ってくれる太陽みたいにぽかぽかムードの女優さん。
ややこしいことや能書きいうやつどっか行けくらいに素敵にジェンダーレスに男前でかわいくて美人さんで頑張り屋で真面目な女の子。
やさしさと愛嬌と素敵に「見世」る芸人感たっぷりのマスコットガール。
誰よりうまい、完璧な日舞技術基礎と俗にカブいてくれる素敵さの両方を兼ね備えた、
完全無欠のちゃきちゃき姐御舞踊家。
「俺は、私たちは、〝これ〟がしたい」、
小手先小細工じゃなく、むきだしで。むきだしの気持ちで、魂で。
派手なことをやったり派手な衣裳に身を包んでいても、「むきだし」で。
おおきな劇場に乗れなくても。
メジャー劇団(という言い方は嫌いだけれど)のようじゃなくても。
これが俺たち、いえ、私たち。私たちだからこんなに面白いんだよ!観て!楽しませてあげるよ!楽しもう!
泥臭いまでに、でも泥臭いまでなのにしこたま楽しそうな笑顔で。
だから、気付けば拍手拍手、手拍子、拍手、そしてなんだか泣いていた、笑いながらも、めちゃ、めっちゃ。
写真なんて撮れなくていい。むしろそれが元々自然な観劇スタイルのはずだ。
女の子ばかり? それが最高なんじゃないか。
ああ、心だ。魂だ。旅芝居って、大衆演劇の、魅力って。熱と、力!
終わって木戸でママにテンション高く伝えてしもた。
「めっちゃええですね」、即返ってきた「せやろ」。
いつもは避ける送り出し、思わず座長に伝えた。「最高でした。これが「大衆演劇(旅芝居)」です」
わははと大きな声で笑い返してくれた「なにをおっしゃいますか!(笑)」
でもね、その顔は間違いなく、自信と矜持に満ちていたと思った。気持ちがよかった。こちらまで。
なんか、皆が忘れている大事なことやものを思い出させてくれるような気がしたよ。
例えばみっともなくても不細工でもいろんな人がいていろんなものがあって皆生きている、生きていく。
多様性、ダイバーシティとしての旅芝居のよさ、それはつまり「人間」というもののおもろさ素敵さを浴びまくった気がしたよ。
なんだかね、いろんな「初心」を思い出させてくれた気がしたよ。
これが「旅芝居」です。なに言ってんだか。酔ってるんか。うん、私も酔ってるんやろな。でも、本当に思いました。うれしかった!
(劇団あやめ(姫猿之助座長)/2021・12.6@十三・木川劇場)
◆omake、ってか、続き、その②◆
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大阪の物書き、
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化も好きです。
現在、ウェブマガジンにて女2人の酒場巡りを連載中。
現在第10回(New!!)
そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章です。
ふだんはラジオ番組の構成などに関わっています。
現在の主なものは、AMの懐メロリクエスト番組。(昭和1桁〜50年代歌謡)
旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)。
担当していたDVD付マガジンは休刊中。
が、アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中(貴重映像ばかり)です。
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