お金と距離感と魅力 旅芝居・大衆演劇、お金と愛と「気をつけようね」の話をすこし
今日はちょっと怖いお金のおはなし。
怖い、もとい、切ないかもしれません。
距離の近さが魅力の旅芝居・大衆演劇は
気付けばアッという間にハマっていたという人も多く
ある意味危険な芸能・・・かもしれません。
入場料が映画よりも安い(もしくは映画と同じくらい)のに
一か月毎日日替わりプログラムで公演をしているから
通ったり役者さんや常連さんとの距離がすぐに近くなる!
そんな嬉しさもあって足しげく通ったりするうちに・・・・?!
お花やレイ、それらをしなくとも、通ったりするうちに・・・?!ということで決して他人事ではないおはなし。
客席でお客さんから「お金貸して」と言われたことが数回あります。
(役者さんからも数回ありましたが。まあ〜あ喧嘩しましたわ!このこともまたいつか!怒&爆笑)
忘れられないのは「大入り詐欺」をしていた女の子のことです。
明るくて一生懸命で「旅芝居が大好き」でほぼ毎日通っていました。
劇団とも役者ともお客さんとも追っかけさんとも劇団ファンとも皆仲良くしてました。
ある日開演前に劇団の常連さんからお金を集めていました。
「今いるお客さんが1000円ずつ出したら大入りになるらしいねん」
この劇団の応援さんは皆ほんまに仲良かったからでしょうか。
ほとんどの人が協力をしていました。
私?私は嫌な奴でした。言いました。
「私はそういうの好きじゃないねん。大入りってそういう風に出すもんじゃないやん」
「そうやね。さすがmomoちゃんやね」
彼女は引き下がりそれ以上食いついてくることはありませんでした。
そんな彼女がお客さんに「●●円でいいから貸して」と言っていたことを
ある日応援さんのひとりに聞きました。
「言われたことない? ほとんどのお客さんに言うてるで」
「寸借詐欺やんあれ」
「大入りにしたいから、ってあのお金も自分の懐に入れていたらしい」
ばかすぎる私はわざわざ仲のいい役者に伝えました。
「知ってる?お客さん困ってるらしいねん」「大入り出す、とか今日言われて」
怒られました。「知らんやつおる訳ないやろ!」え?えー?!
そんなとき新たな「お金貸して」さんが登場しました(!)
地方から追っかけにきたという子でした。
父親だったか親戚だったかが今はもういない役者だと。
けれど追っかけてこの劇場に観に来たのは初めて!だなんて。
役者さんから言われました。「仲良くしてあげて」
そんな彼女と連絡先を交換したら(ばか)翌朝「3000円でいいから貸して」と来ました。
「ごめん。本当に申し訳ないけど3000円ないねん」
「じゃあ1000円でもいい」
「ごめん。今ほんとにないねん。銀行いかなあかん」(そんな財布の中だった私もどやねん)
「じゃあどっかで待ってる、近くまで行くから貸してくれないかなお願い」
「ごめん今日劇場も銀行も行く予定ないねん」
「もういい」
数日後劇場に行くと声をかけてきたのは大入りにするお金を集めたがるコでした。
「大丈夫やった?!」
ほんまに心配している感じでした(え?私お人よし?)
さらに私はこの件でまた役者さんから怒られました。
「しょうもないことに巻き込まれるな!」
全く意味がわかりませんでした。
人をだますのはいけないことです。悪いことです。
気付けばお金がしんどくなるまで来るのも勿論いけないことです。どんな事情や気持ちがあろうとも。
でもね、実際にことは起こさなくても。
そうなりかけている人や、ならなくてもなりかねない人は、多いんじゃないかなあ。
ダメなことだしいけないこと、でも、それだけ好きなんだよね、好きだったんだよね。
距離感を見失ってしまったんだよね。
そしてその時劇団や役者はどんな態度対応?(※それぞれによりますが)
きっと決してきれいごとだけではない。他人事ではない。
距離の近さは怖い。夢中になりすぎるって怖い。
魅力を知ってしまった私たち客席は気をつけないといけない、懸命に、必死に、ちゃんと。
新しくハマられた方、興味を持って観にきたい!と思う方は
どうぞ〝沼〟にずぶずぶとハマらないように。気をつけて。
それくらい魅力的で夢中になってしまうなにかがある世界なのかもしれません。
役者さんもだけれど、お客さんも、生きること・・・
お金とはきっても切り離せない世界であり
そんなゲンジツと、うたかたのうつくしさと、両方が両方だから、
あんなにもギラギラときらきらときれい(?!)なのかもしれないのだから。
※個人的には・・・※
思い出してちょっと考えてしまいます。
こうなってしまった子が身近にいたなら
こうなる前に気付いたりもっと話を聞くべきだったのではないか。なにもできなくとも。
聞けないかもしれない。が、そもそも聞かなかった。
舞台だけが好きで客席のしんどそうな人に気付けなかった。他人事だった。
助けるなんて傲慢だし、そもそもお金は貸さない。あげない。ごめん。
でも。でもでも。
なかなか、いや、めちゃくちゃむずかしいことかもしれないけれど考えたい。
今日も彼女や彼女たちも私も私たちも胸をはって観劇が出来、
ひとときでもほんまに楽しく劇場に行くことが出来ますように。
ケチで嫌な奴なくせにお人よしの綺麗事ですが本音です。
■omake■
そんな観方で、ずっと旅芝居や旅役者をみてきております。
以前はblogに、近年はnoteのマガジンにまとめているので、よろしければ。
と、わたくしめのプロフィールなどもすこし。