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花と花瓶 ある2人の歌手の顔

「人生はその日その日の積み重ね」
近所のお年寄りが口にしたのを聞いて肚の中でツッコんで笑った。
「何? みつを的な?」
でもその夜寝る前になって「うーむ」「ほんまやなあ」なんて。
ということを、思い出したのは、テレビに出ていた2人のおじさん歌手を見てのことかもしれない。
 
森進一。
「こわ!」
なんなんや、あの顔。今の顔。
人の容姿をどうこういうことはいいことではない。とはわかっている上で。
わたしはこのひとの歌とこのひとにずっと興味がある。
五木ひろしより森進一派。歌に物語を感じるから。
泣き節。怨み節。おどろおどろしい。夜の色。さびしさ。かっこつけ。
人間味。
どろんどろんのごぉっとした枯れと泥臭さと色が、
声、歌い方、風貌のすべてから漏れ、それらにピタッと来る歌が彼に提供される。
あの感じは、エグい。
とは、こりゃまた興味を持っている作詞家、故山口洋子も何度もエッセイに書いていた。
両者が若い頃に「森は花、五木は花瓶」みたいなことを本人(五木)に言った、
みたいなの、どの本だったか忘れたが、いろんな意味で強烈だった。
 
そんな「歌手ばなし」などをしだしたら止まらないのでやめますが。
 
「今」の森進一を見て、思わず声に出てしまった。
「このひとは、なんでこうなったんやろ」
歌にひっぱられたんやろうか。
皆が彼に託すものや、「彼と云えば」「彼の色」みたいのを彼が歌い、聞く人が聞き、
というのが重なって重なって重なって……?
なんなんやろなあ、あの顔。今の顔。
 
とか、思ったりしていたら、数日後、もうひとり、歌う姿をじっと見てしまった。
郷ひろみ。
歌い、踊っている。「格好いい」をやっている。やっている?「やろうとしている」?
笑顔を貼り付けているのだが、わたしは彼の目元ばかりにいき仕方がなかった。
なんだか森進一と同じような顔に見えて。
あの顔。今の顔。なんなんや、あの顔。今の顔。
 
五木ひろしはいつも歌がどや顔しているような気がする。歌も顔も。
 
いや、ただそれだけなんだけれど(笑)
 
 
 
 

森進一の歌、どれも、「おもしろいなー」と思うんだけれど、
『襟裳岬』ってほんとうにすごい歌ですよね。
しずかなところからあがっていってあがっていってあがっていって
「えりぃ、ものぉ~」のサビでは何度聞いても爆笑してしまうのだけれど、
あの声、あの曲、流れ、だから見える、景色が、温度が、春が。
いろんな人と、(もしかしたら)本人とか、歌わせた人たちの気持ちまでもが見えるような気がします。
すごい。

いや、これも拓郎か。拓郎の力のすごさもあるのかもやが(笑)


何故か語りだす森進一話。
この人はカバーもすごい。平井堅の『瞳を閉じて』のカバーとか。
言葉が立ち上がってきて気持ちが盛り上がって、まさにあの歌の「ほんとう」になるの。某動画サイトに公式のものあります。

あと、ジャズの『サマータイム』。これがジャズだ、みたいな。震える。
これも公式にあり。

ひたっすらに明るい五木ひろしの『ダイアナ』(ロカビリー)もいいんだけどね。けどね。


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【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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