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舞台に雲ひとつ 『はぐれ雲どこへ』

話題のドラマ『極悪女王』のセリフに、
うん&うーむ と、ニヤリ&ぐっと、そんな顔になった。
「プロレスってのは残酷なもんでさ、
どんなに実力があっても結局はスター性のあるやつがみんな持っていってしまう」
「何言ってんだよ、残酷だから面白いんだろ。
綺麗事ばかり見せても客はなにも興奮しねぇよ」
何日か後、芝居小屋でなつかしい歌を観て笑った。
笑う歌でも笑う舞踊でもない。なんてことのない演歌だった。思い入れのある役者でも、ない。
 
たぶん当月で一番(というのは失礼だが)注目を浴びてはいなかった人が踊った。
劇団ではなく期間限定の「チーム」として組まれた座組のメンバーのひとりだ。
その中でも一番キャリアがある?
普段は「長」として活動している人でもある。
だが当月は座組のリーダーというか長を筆頭としたチームの「一員」。
笑みをたたえながら出ていた。
若いメンバーと共に総舞踊などにも出ていた。
笑みをたたえながらもどこか無表情で。
 
個人舞踊で刀を背負って踊ったのが件の歌だった。
 
笑ってしまった。
 
ばかにしているんじゃない。
わぁっとニヤリとなった。
 
ああ、雲だ。
 
誰でも踊るその牧歌的でおおきくでも「男の道」みたいな演歌は、なんだかなぜかとても「旅芝居」な歌だと感じもする。
歌い手の声と雰囲気もあって、芝居小屋という空間でみると悪くない。ぱぁっと晴れる。
 
なつかしく、あたまの中にいろんな顔も浮かんだりした。
そんなことを思わされるのは、過去じゃなく、まさにまさしく「今」の舞台だからである。
まだこの曲で踊るんかい踊ってる人が居るんかい。生きてるねなあ生きてるねんなあ皆皆が。
芝居小屋って生きるって、面倒臭くてややこしくて、だからいいな、いいのかもな。よくないけど。よくないけど、いいな。ああ、なんだかな、なんなんだろうな。

何日か後に知った。
この歌は、演歌歌手・三山ひろしの思い入れの深いものでもあるらしい。
「売れない時に一番支えとなった歌です。コンサートでずっと歌わせてもらっていて、今も歌っています」
へええ。
さらにそれを知った原曲の歌手本人がポストしていた。
「感謝感謝。ちなみに私今毎日歌ってます」
また笑った。
 
『はぐれ雲どこへ』(和田青児)
 
あれはジョージ秋山の浮浪雲だったのかしら。古いな。人は皆雲なのかな。かもね。

なんてね。

(TEAM JUNYA 9月 篠原演芸場
    三峰達 (下町かぶき組 劇団三峰組 座長))


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構成作家/ライター/エッセイスト、
momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。
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