Drums散歩
マグリットの絵画の中のような風景を、私はしばらく歩いている。
のっぺりとしたエメラルドグリーンの空が、どこまでも続く。焦茶色の大地は、旱魃のためにひび割れている。しかし、旱魃には似合わない立派なバオバブの木が、ところどころに立っている。それが私の気をぞわぞわとさせるのだ。
私は列の後ろにいた。前の方にいるのは、派手な衣服、玉のりお嬢、ガネーシャきどりの半人半象。サーカス団だ。先頭の団長が叩く大太鼓の音と、副団長が叩く小太鼓の音が、ここまで聴こえてくる。
なぜみんな、そんなに陽気でいられるのだ?嫌な夢のような、初めて歩く土地なのに。
そうガネーシャきどりに尋ねると、彼は笑って答える。これはある青年の未来、でも僕や君にとっては過去だからさ、と。
意味が分からない。しかし、時折嬰ハの音程でビュンと吹く突風は、その言葉の意味を熟考する暇を与えてはくれない。
何せ、突風と共に、空から「ある青年」の首が逆さまに降りてくるからだ。それもいくつも。ある青年らはみんな目を閉じて、起きているのだか寝ているのだか分からない。
こっちの青年が「昼」と言えば昼になり、「夜」と言えば夜になる。あっちの青年が「上」と言えば天地はひっくり返り、「下」といえば元通り。
つくづく不思議な世界だ。
ここをずっと歩くのには、不安が常に付きまとう。
それでも、やはりなんだか楽しいのだ。未来であり、過去でもある、あの青年の頭の世界を、こうして歩いていけるのだから。
そしてその世界は、私の未来でもあるのだから。
サーカス団が、突然合唱を始める。
「道のひびから花が咲く
いざスープの
水面に帆立てて」
私もいつしか歌い出す。
合唱はボリュームを上げ、鳴り止むことがない。
P-MODELの楽曲「Drums」の中に入ったつもりで書きました。最後に出てくるのは、この曲の歌詞の一部です。
ちょっと不思議な音楽レビュー、いかがでしたか?