イギリスのりんご事情 / ブラムリーズ・シードリングについて/ りんごのお菓子
今、人気のあるりんご
英国のスーパーマーケットに並ぶ品種は、顧客が気に入った味を繰り返し購入できるように、同じ商品が一年中流通している。生で食べる場合、丸かじり。皮をむく人はあまりいない。持ち運びが便利なので、お弁当のおやつとして食べることも多い。
イギリスで暮らしてみて思ったのは、丸かじりしやすく片手で持ちやすい大きさ、皮が薄めで食べやすい、甘みと酸味がバランスよくあるりんごが人気のようだ。
英国のりんごは、秋に収穫して6月ぐらいまで冷蔵できるが一年中流通させることは現代の技術でも難しい。
では、英国りんごの市場はどうなっているのか?
を、今回は紐解いていく。
Gala(ガーラ)
ニュージーランド原産。
小ぶりで甘さがあり、おやつにも向いてる赤りんご。
英国のスーパーマーケットで最も流通している品種だと思う。気軽に量り売りでも買える。カフェのカウンターにバラ売りで置いてあることも。
甘みが強く、酸味は少ない。子供でも食べやすい味。
Braeburn(ブレイバーン)
ニュージーランド原産。細長い形。酸味が強めでサクッとした食感。
水分量が多め。みずみずしい日本のりんごの食感によく似ている。
Pink Lady(ピンクレディー)
オーストラリア原産。赤りんご。少し大きめ。
商標登録されているりんごで、ハート形のロゴが目印。
他のりんごよりも少し割高だが、人気がある。
Granny Smith(グラニースミス)
黄緑色。酸味があり爽やかな味。スライスしてサラダにしても。
Golden Delicious(ゴールデンデリシャス)
黄色っぽい黄緑色。他のりんごに比べてかなり甘みがある。
日本でたべる上品な香りで甘いりんごに食感が似ている。洋ナシ風の香りがするようなしないような。
Bramley's Seedling(ブラムリーズ・シードリング)
黄緑色、大きなりんご。調理用。クッキング・アップルと呼ばれる。
店頭に並ぶ調理用のりんごといえば、ブラムリーが一般的。
ブラムリーズ・シードリングの始まり
イギリスの調理用りんごで流通しているのが、ブラムリーだ。
他のりんごよりも大きく、皮が緑色なのですぐに分る。
【発祥】
19世紀の初期に、ノッティンガムシャーのサウスウェルという町に住んでいたメアリー・アン・ブレイルズフォード(Mary Anne Brailsford)という少女が、自宅の庭にりんごの種を植えた。その種から偶然にも芽が出たことから、ブラムリーの物語が始まる。
1850年頃になると、その木に実るりんごが美味しいと評判になる。そして、町の苗木商ヘンリー・メリーウェザー氏によって「ブラムリーズ・シードリング」として市場に紹介される。彼によって、1876年にはRHS(英国王立園芸協会)の品評会に展示され、1883年からはファーストクラスのりんごとしてRHSから認証されている。
どうしてブラムリーなのか?
メアリー・アンが種を植えてから数十年後。その家に住んでいたのは、精肉店を営むマシュー・ブラムリー氏だった。その頃には、美味しいと評判のりんごが実っていた。
それに目をつけたのが、町の苗木商だったメリーウェザー氏(17歳)。
りんごの枝を分けて欲しいとブラムリー氏に交渉し、「自分の名前をりんごに名付けるなら良い。」という約束で、ブラムリーズ・シードリングと名付けられた。それから多くの品評会にも出展され、広く知られるようになった。
(以下、簡略してブラムリーで表記します。)
イギリス国産のりんごとして親しまれる。
ブラムリーは、酸味が強い、調理用りんご。加熱すると果肉がとろとろに煮崩れる。イングランドの気候に適した品種で、英国の味として愛されるりんごである。英国には、ヴィクトリア朝にデュメローズ・シードリングという調理用りんごが人気だったが、ブラムリーに置き換えられた。
その他にも、ブレンハイム・オレンジとデュメローズ・シードリングから生まれたニュートン・ワンダー(ブラムリーよりも少し甘い)も人気だった。
ブラムリーは、1880年代になるとイースト・アングリア地方のケンブリッジシャーにあるウィズビーチ Wisbech の一帯で、大々的に栽培され始め、1980年代頃まで育てられた。この辺りのりんご園は古くからの農法で、りんごの木の間にグーズベリーが植えられていたという。イギリスでは1920年代以降、りんご栽培の最新技術の研究からM9台木(だいぎ)が一般的となるが、この果樹園ではM12 かM13 台木で栽培されていた。
私と調理用りんごの関係
私が好きな英国菓子のひとつが、アップルパイ。渡英当初にティールームで食べた。サクッとしたタルト生地の中に、甘酸っぱいフィリングがたっぷり。泡立てたクリームやバニラアイスを添えると最高に美味しい。定番のお菓子である。
ここから、私の調理用りんご/ブラムリーへの愛が始まる!
お菓子、チャツネと、様々なレシピに挑戦した。
英国で暮らし始めると、生活のあちこちでブラムリーを含む調理用りんごを目にするようになる。特に田舎暮らしだったので、お庭に立派な調理用りんごの木があるご婦人もいて、毎年秋になると家主のご厚意で摘みに行けるようになり、りんごがさらに身近な存在になった。
りんごのイギリス菓子
スライスした調理用りんごに砂糖をふりかけて柔らかくなるまで加熱。甘酸っぱいフィリングをショートクラスト・ペイストリーで包んでパイ皿で焼く。
イーティング・アップルでもクッキング・アップルどちらでも作れるのが、アップルケーキ。秋にたくさんりんごが収穫できたときに作るお菓子。
旬の果物で作るお菓子
旬の果物、りんごとブラックベリーで作る。
国産ブラムリーは、冷蔵保存技術の発達で、りんごのシーズン以外でもスーパーマーケットやファームショップに行くと一年中並んでいる。
こちらの本で英国のりんごについて取り上げました。⇩
日本でも栽培が始まる。
そんなこんなで、日本の方に英国のアップルパイを紹介したいなーと思っていた頃、ブラムリーズ・シードリングが日本でも栽培されるように。長野県の小布施町で栽培が始まり、現在では飯綱町や他の県でも栽培が広がっている。オンラインで購入できるので、英国の味を楽しむ方が日本でも増えている。
英国のりんご
ブラムリーズ・シードリング、コックス・オレンジ・ピピン、(グラニースミス)⇩
英国のりんご
ブラムリーズ・シードリング、ローズマリー・ラセット、エグレモント・ラセット、ブレンハイム・オレンジ、(グラニースミス)⇩
英国で人気の海外産りんご
ピンクレディーとグラニースミス⇩
【まとめ】
現在のイギリスでは一年中海外産のりんごが流通している。スーパーマーケットで取り扱う品種は限られていて、ガーラ、ブレイバーン、ゴールデン・デリシャス、グラニー・スミス、ピンクレディーなど。最近では、Jazzなど新しい品種も人気。国産りんごは、シーズン中だけ店頭に並ぶ。調理用りんごは、国産のブラムリーだけだが、冷蔵技術の進歩により一年中買うことが出来る。(収穫時と比べると次第に酸味は減少する。)
ブラムリーは、英国の味と言えるだろう。アップルパイやクランブル。かつては、秋の収穫時にソースやチェツネの保存食に加工したが、最近では手作りする人は少ない。それでも、ブラムリーは店頭に一年中並んでいることからも、英国でのブラムリー人気がうかがえる。日本でも秋の収穫時にオンラインで購入できるようになったので、是非とも調理用りんご「ブラムリー」を味わって欲しい。
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