イギリスの郷土菓子【ファトラスカル】
ファットラスカルは、英国の郷土菓子の中でとびきり愛らしいお菓子。
英国内でも、北イングランドに行かないと食べられない。
今回は、20年前に撮影した懐かしい写真を交えながら、ファットラスカルについて、このお菓子が食べられる老舗ティールーム&カフェ「べティーズ」をご紹介します。
ファット・ラスカルとは?
このお菓子は、在英でもなかなか目にしない、北ヨークシャーの郷土菓子。もともとは、ターフケーキ(Turf Cake)とも呼ばれていました。ターフとは、泥炭(でいたん)のことで、湿地でとれる草からできた泥のように見える石炭のこと。一日の終わりに、パン生地の残りにラードを加えて蜂蜜やドライフルーツを加えて作った生地を、グリドルの上にのせてターフと薪を燃やした残り火で焼いたのが、このお菓子と言われている。
長いこと一部の人たちに愛される郷土菓子として親しまれていたが、ヨークシャー地方にある大人気カフェ&ティールーム『べティーズ』が1983年から自社バージョンで作り始め、今ではお店の看板商品として大人気のお菓子。
ベティーズでファット・ラスカルを食べる
現地へ行って、ファット・ラスカルを食べてみました。
まず、第一印象は
思っていたよりも大きい!
手のひらぐらいで、厚みもある。
中にはドライフルーツいり。
スコーンとビスケットの中間みたいなお菓子だ。
ラスカルというのは、英語でいたずらっ子という意味。太ったいたずら坊主には、丸いビスケット生地の上に目に見立てたドレンチェリーが二つ置いてある。口には、いたずらっぽく笑っているようにアーモンドが3つ。
ファットラスカルは、べティーズの店内で注文するか、お持ち帰りもできる人気商品。
ファット・ラスカルのレシピ
【材料】6個分
セルフ・レイジング・フラワー(薄力粉180g+ベーキングパウダー小さじ2杯半)180g
バター 75g
カスターシュガーまたは、グラニュー糖 40g
カランツまたはレーズン 60g
サワークリームまたはグリークヨーグルト 75㏄
【飾り用】
ドレンチェリー 6個 半分に切っておく
スライスアーモンド 9枚 縦か横、二等分に切っておく。
【作り方】
1 ボールにセルフレイジングフラワーとベーキングパウダーを合わせて振るい入れ、角切りにしたバターを加えてラブイン。
2 残りの材料をすべて入れて、スプーンで軽くかき混ぜ合わせる。ベタベタにならない程度の硬さの生地になるはず。あまりにベタベタする場合は薄力粉を少しだけ加えて硬さを調節する。
3 生地をひとまとめにして6等分する。厚さ2.5cmに丸くしてから、ベーキングシートを敷いた天板に置く。
4 飾りつけをする。チェリーとアーモンドをのせ、イタズラ坊主の顔に見えるように、工夫しましょう!
刷毛で、溶き卵か水(分量外)を塗ってから、チェリーをふたつ置いて目に見立て、その下に3個並べるアーモンドは、口元に見えるように。
5 200度に予熱したオーブンで20分焼く。
焼きたてをいただくのがおいしい。スコーン風に、クロテッドクリームを添えても。顔に見立てなくても、好きなようにアレンジしましょう!
味にアクセントをつけたい場合は、薄力粉にシナモン、ナツメグを少々加えても良い。
【追記】2004年の時点ではお菓子の由来は上記の内容でしたが、更なるリサーチをした結果。
*シェイクスピアのリチャード4世 第2章にRascal(やせた動物という意)という言葉がでてくる。お菓子との関係性は不明。現在の英語Rascalには、わんぱく小僧、イタズラ者という意味がある。
*チャールズ・ディケンズのmagazine Household Words(1859年版)にファット・ラスカルは、ヨークシャー地方の海岸線の街Saltburnで人気のお菓子と言及している。
*ファット・ラスカルのファットは、材料に加えたラードを言い表したものではないか?という説もある。
*ベティーズがファット・ラスカルを作る前から、ヨークシャー地方ではファット・ラスカル、ターフケーキという名前の郷土菓子があった。
*1950年代のレシピの本に、ファット・ラスカルという名前のお菓子が紹介されている。この時代のレシピには、飾りにドレンチェリーやアーモンドは飾られていない。ごくシンプルなスコーンのようなお菓子である。
*ベティーズ&テイラーズ・オブ・ハロゲートは、Fat Rascal、Yorkshire Fat Rascal、Little Rascalの登録商標を所持している。
*現在、ファット・ラスカルという名前で売っているお菓子は、ベティーズで作られた物のみということになる。
参照:
べティーズ ハロゲート店
べティーズは、1919年にハロゲートのケンブリッジ通りで始まりました。1937年 ヨークの市街地セント・へレンズ・スクエアにヨーク店が開店。(今では、ヨークの観光名所とも言えるくらいの大人気店!)
1967年 ヨークシャーでカフェをチェーン展開し紅茶やコーヒーを販売していた『テイラーズ・オブ・ハロゲート』を買収。パーラメント通りのハロゲート店(1976年)、ノーサラントン(1971年)、イルクリーと、テイラーズのカフェだった店舗を活用して新店舗を増やしました。作り立てのお菓子を提供したいという理念から、北ヨークシャーのみで展開しています。
べティーズ100周年!
べティーズ創業者のフレデリック・ベルモントがスイス出身のお菓子職人だったことから、本場ヨーロッパのお菓子も多く提供。チョコレート細工が得意で、イギリスでは珍しく本格的なチョコレート細工のお菓子が並んでいます。
べティーズのコーヒーと紅茶
私がべティーズに行って買うのは、ティールーム・ブレンドです。
とにかく箱や缶のデザインがかわいい!
しかも、おいしい。
ティーバッグの80個入を買ってくることが多いです。
テイラーズ・オブ・ハロゲート
テイラーズ・オブ・ハロゲートは、1886年にチャールズ・テイラーによって創業。鉱泉地ハロゲートの水質を生かしたブレンドで人気のあるコーヒーと紅茶のメーカーです。1962年にべティーズと合併し、Bettys&Taylors of Harrogateとして現在に至ります。
ヨークシャーで愛される2つのメーカーは共存し、今でもテイラーズ・オブ・ハロゲートの名前を残したまま商品が販売されています。
テイラーズ・オブ・ハロゲート社の商品といえば、
イギリスの家庭用紅茶『ヨークシャーティー』
スーパーマーケットの棚に必ず並んでいる人気商品です。
赤ラベル(軟水用)、緑ラベル(硬水用)、ゴールド(ちょっと高級紅茶)、青ラベル(カフェインなし)の4種類があります。(私が住んでいる地域では硬水用はあまり見かけません。)ティーバッグが大きめ。マグカップに、ティーバッグひとつを入れて熱湯を注ぎ、濃いめのミルクティーにします。
ハロゲートは鉱泉の出る街だった
ハロゲートは、ジョージ王朝時代、硫黄の含まれる鉱泉が出るとして人気のあった保養地。ロシアの王族や作家、政治家も訪れました。ヴィクトリア時代には上流階級のための高級保養地となりました。
街の中にあるロイヤル・パンプルーム博物館では、鉱泉を試飲できます。
他にも、アガサ・クリスティーが失踪した時に、ハロゲートのオールド・スワンホテルに11日間滞在していたことでも知られています。
と、今回は、英国の郷土菓子ファットラスカルとべティーズについてお話ししました。北イングランドへ旅する時にはぜひ立ち寄ってほしいお勧めのスポットです。
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べティーズについてはこちらの記事でご紹介しています!
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