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中村桃子
2019年12月1日 23:58
子供たちに帰る時刻を知らせるメロディとともに落ちていく夕陽は、山の向こう側に隠れる前にいっそう眩しく光ってこの窓を照らした。それはフィナーレに相応しく、この空間に散らばった様々な記憶の欠片がきらきらと輝いていた。 それは新緑の季節。まだ梅雨は迎えていないはずなのに、陽射しだけは真夏のようだった。この部屋の壁には、この窓から見える港を描いた絵がかけられていて、室内には男が一人、本当の窓から、本