放課後パーソナリティー前編
ラジオを聴くうちにラジオをやりたくなり、ゲストに妹(二歳)を迎える形で番組を発足したものの、形になる前に終了してしまった。
やはり感覚でやると喋りがもたない。
何より自作自演は恥ずかしい。
そう思った私は365日中、330日を一緒に過ごしていた友人に「今日帰ったらラジオ作らへん?」と提案。
友人はラジオを聴いたことがない。
ゴム跳びやスーファミをする感覚で「ええよ!」と快諾してくれた。
家に帰り、約束の時間までに番組のコンセプトを決め、簡単に台本を書いた。
番組のテーマは友人と私が毎月、近所の酒屋さんで入荷するまで入り待ちしていた、月刊誌『りぼん』を選定。
(ちなみにこの酒屋さんは駄菓子や本、文具も扱う子供に優しいお店だった)
その『りぼん』に連載されている漫画について、感想を交えて紹介する『小学生の放課後』をコンセプトに掲げた。
約束の時間になり、友人がやってきた。
母が若い頃に購入した赤いVictorのラジカセをピアノの上に置き、私は友人に『ラジオとは』を説いた後、番組の趣旨を伝えた。
友人はローラーブレードやバドミントンをする感覚で「分かった!」と元気よく返事。
これでやっとラジオができる!
嬉々として番組のスタートを切った。
二人「(キーボードの自動演奏)チャララーチャララーチャララララー♪
〇〇と〇〇の〇〇ラジオ〜!!!
チャララーララーチャチャチャララララー♪」
私「はじめまして。〇〇です!」
友人「〇〇です!」
私「いきなりやけど、今月の『りぼん』面白かったよね〜!」
友人「うん!面白かったね!」
私「〇〇ちゃんはどの漫画が面白かった?」
友人「え〜私は『こどものおもちゃ』かな!」
私「今月の『こどちゃ』は凄かったよね!どこが良かった?」
友人「えーと、んー、……。」
私「(羽山と紗南ちゃんのアレコレあったやん!何か言わな!と小声で催促)」
友人「………(ゆっくり下を向く)」
え…緊張してんの?
始まったとこやで…
ラジオの大敵である沈黙が発生した為、中断、テープを巻き戻し、録音を確認。
二人「………。」
一人(プラス妹)の時よりラジオになってる!!
静かに感動していると沈黙を続けていた友人が重い口を開いた。
「凄い!ホンマのラジオみたい!
私ってこんな声やったんや!!
〇〇ちゃんはいつもの声やけど、不思議な感覚!!!」
お前も感動してたんかい!とは言わず、
「せやろ?これがラジオやねん。でもな、ターザンさんはもっともっと面白いねん!」
かなりの上から、ドヤ顔の私に友人は
「ラジオって楽しんやな!また今度やろ?次は私がカセットテープ持って来るから!」
かなり興奮した状態で、10分前の緊張が嘘みたいに、やる気で満ち溢れている。
この日はラジオの録音だけしたのか、その後別の遊びをしたのか全く覚えていない。
小学四年生クリスマス直前の夕暮れ時であった。
つづく